お墓は一体なんのため?
キョーコさんと一緒に御世話しているおじいちゃんには、
お墓がない。
長らく、おじいちゃんは、
「死んだら、長年住んだ彼のアパートの近くにある
青山墓地に遺骨をまいてほしい」と言っていた。
いや、墓地に勝手に散骨するわけにいかないでしょう……。
話はそこで止まっていた。
どうしたもんだか。
みんなそう思ってはいるものの、あまりにも現実的な問題すぎて、
意志を確認するのがはばかられるような感じになってしまって、
考えなくちゃね、といいながら先送りになっていたのが
おじいちゃんのお墓問題。
おじいちゃんには家族がいないので、墓守問題もある。
誰が亡くなった後のお墓の世話をするのか。
もう一つ、おじいちゃんはクリスチャンだから、
永代供養つき・・・みたいなお寺さんのお墓に入りたいと思っている
とは思えないという、宗教問題もある。
そして、もちろん、お墓を買うという、金銭的な問題もある。
墓守がいないお墓を大枚はたいて買うくらいなら、
お墓いらないのでは?
とも思う。
でも、じゃぁ、亡くなったら遺骨どうするのよ?
と言われると、親戚でもないキョーコさんの家や私の家に
おいておくというのも、またちょっと妙な話で……。
一方で、私の両親は、公営の墓地を購入していた。
父方のお墓は秋田の片隅にあるのだけれど、
そもそも私も子どもの時行って以来。
あそこに入っても絶対にうちの子たち(私達だ)は墓守なんかしない
と踏んだ母は、父を説得して公営の墓地を大分前に買っていた。
けど……これが遠い。かなり運賃の高い新しくできたナンチャラ線の駅から
タクシーでないと行けない。
しかも、タクシーが帰ってしまうと、再度来てもらうのは大変なので、
待っててもらってお参りをする。
待っててもらう間もメーターは上がっていくから、
一お参り万単位。
お彼岸には自治体が送迎バスを出すので、
それに乗っていけば、節約になるとはいえ……時間も決まっているから、
早朝に起きて、バスの時間にローカル線で駅までいかなければならない。
新盆でお墓に行ったとき、なんで母はこんなへんぴな所にお墓を買ったのか
と甚だ疑問に思った。
そして、私が死んだら、子ども達がここに来て墓守をするのかと思ったら、
なんだか申し訳ないような気持ちになった。
いや、来たいと思ってきてくれるなら有り難いけれど、
とても、お墓の面倒見てね、よろしくね、とは言いがたい。
まわりに、墓じまいに忙しい友人が何人かいる理由が、
お参りしなくちゃならないお墓ができて、よくわかった。
……と思うと、ますます、おじいちゃんのお墓問題は深刻だ。
買う必要があるのか?
一体なんのために?
遺骨を納めるため。
そう。そうなんだけど。
それだけだったら、どこでもいいんだろうか。
宗教も何も無視して、一番安いところに遺骨を入れる場所さえ
確保できれば?
母が亡くなった直後、息子は何度か母のお墓に足を運んだらしい。
ちょっとしんどい時に、ばあちゃんどうしてるかなと思って行った
と息子が行っていた。
お墓に母がいると全く思えない私は、息子の一言で初めて、
そうかお墓って、生きている人の心のよりどころになるんだということに
気がついた。
だったら、シンボル的に、行く場所として、どこかあった方がいいのかな。
おじいちゃんが亡くなったら、元学生さん達はそのお墓に集まるだろうか。
ふらりと立ち寄ったりする場所はあった方がいいんだろうか。
だとしたら、やっぱり、行きやすくて、
一お参り1万も2万もかかるところじゃない方がいいよね。
そんな折、もしかしたら……レベルだけれど、キリスト教の共同墓地を
入手できそうな話が出てきた。
もともとは私が自分のお墓にと思っていたのだけれど、
おじいちゃんも興味があるかな、と思いつき、
いい機会だから連絡をしてみた。
キリスト教式のお墓、買う?
返事は、青山墓地にある、
おじいちゃんが教えていた大学の宣教師達が眠る共同墓地に
入れてもらいたい、そこに名前かいてももらえれば十分。
でも、僕が死んじゃったら、ノリコが何しても、まぁ、文句は言えない。
というものだった。
そうなのか、青山に共同墓地があるなら、そこに入れませんかって
聞いてみればいいんだ。
青山なら、元学生さん達も集まりやすい。
ちょっと墓地でお花見して、お墓によって、その後、
懇親会っていう手もあるよね。
そう思って問い合わせて見たら、入れるかどうか要件がある(そうだ、
そもそもおじいちゃんは宣教師じゃ無いし)そうで、
確認してくださると言う。
大学が運営している墓地だとお金はそんなにかからないのかな?
遺骨収める場所としては、少額の投資ですめば大助かり。
墓守も必要なし。宣教師と一緒っていうことは
キリスト教系だから、宗教問題も解決!
ありがたや!
と思ったけれど、一つ落ちがあった。
青山ではなくて、小平の墓地だそうな。
となると、残る問題は、小平のアクセス具合?
おじいちゃんがどれくらい、「青山」にこだわっているか
元学生さん達のアクセスの良さをどれほど重視するか……。
おじいちゃんに、青山じゃなかったけどいいって確認した方がいいかな?
私がキョーコさんに言うと、キョーコさんは、
でも、ほぼ全部の条件をクリアしているから、
いやだとはいわないんじゃないかなぁと言う。
本人の意向。
残る人達のための利便性。
お金……
ほんとに、お墓って、一体なんのためにあるんだろうと
思い続けるここ数日。
得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)