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重曹が癌に効く?

民間療法だけで癌と闘った友人が亡くなったばかりのところに、
昔の上司(となりの課だったけど)が、癌の診断を受け、
1ヶ月民間療法をやってみることにしたという話が入ってきた。
試すのは重曹水、クエン酸水。名付けてアルカリ化計画。

重曹が癌に効くかどうかについては、2020年にアメリカでこんな
研究が発表されている。

なので、一応と思って元上司に送ったら、
概要だけ訳せというので、DeepL利用の上でサックリ訳して送った。
それをここに転載。

概要
重曹として知られる炭酸水素ナトリウムは、胃酸過多症などの治療に制酸剤として広く臨床で使用されている。本稿では腫瘍内乳酸アシドーシスを標的とした経動脈的化学塞栓療法に関する臨床試験を報告する。従来の経動脈的化学塞栓療法に基づき、細胞毒性薬剤に5%炭酸水素ナトリウム溶液を加えた結果、高い局所制御率を得た。炭酸水素ナトリウムの抗腫瘍効果の説明は、腫瘍微小環境におけるアシドーシスに関連している。本総説では、がん治療として炭酸水素ナトリウムを単独または他の抗がん剤と組み合わせて投与した研究から得られた知見をまとめ、臨床において炭酸水素ナトリウムを安全かつ効果的に使用するための方法について考察する。

この実験の基本的な考え方は、本文にもあるけれど、

酸性の腫瘍微小環境は癌の発生と密接に関係しており、この腫瘍の特徴を標的とする戦略は実用的な治療法となりうる。炭酸水素ナトリウムを利用して酸性度を中和し、腫瘍のpHeを上昇させれば、がん細胞の進行を抑制できるかもしれない。

というところにある。で、実際に、癌治療と併用して5%の重曹を投与することによってある程度の結果が出たとしている。

結論
固形腫瘍の特徴的な代謝が腫瘍微小環境の酸性化をもたらし、その結果、腫瘍の発生に寄与する複数の因子が活性化される。酸性を克服する最も直接的な方法は中和である。いくつかのin vivo実験により、炭酸水素ナトリウム単独または他の治療法との併用による抗がん作用の可能性が明らかにされている。TILA-TACEの使用により、局所投与が理想的な投与方法である可能性が確認され、炭酸水素ナトリウムと他の抗がん剤との併用がより効果的である可能性がある。しかし、この仮説を検証するためには大規模臨床試験が必要であり、私たちはこの仮説が確認されることを望んでいる。

ほら、癌に効くじゃん、重曹!
とは言えない。今の段階では、
少数の臨床である程度の効果があったという話、だと思う。

もう一つ、気をつけなければいけないのは、この論文で、
重曹を患者に飲ませたとは書いていないこと。
重曹水を飲んだら体がアルカリ化するかというと、
重曹水が最初に届いて中和するのは、
胃液なのだということは忘れてはいけないんじゃないかと思う。

私は医療の専門家ではないから、安易なことはいえない。
ただ、20年以上重曹と付き合ってきて、中和のパワーもある程度実感しているし、それが人体に応用されていることもある程度納得はしている。
その中で思うのは、重曹には確かに中和の作用があって、だから制酸剤として胃腸薬などに使われてるのだ、ということ。
でも、だったら、重曹を人体アルカリ化計画、癌撲滅計画のために飲み続けたら、胃酸の酸をある程度押さえつけることにはならないんだろうか?
胃酸が酸性なのは、基本的にはそれが消化に必要だからだろう。
となると、大して胃酸過多でもない人が、制酸剤を人体アルカリ化計画と称して毎日飲むことは、消化機能に影響しないんだろうか?
少しでも食べて、栄養をしっかりとってほしいと思うと、個人的には
癌の患者さんに、必要以上の制酸剤はどうなんだろうか、
と思わずにはいられない。

だから、元上司にも
それを長期服用することで、消化機能が多少でも低下するとすれば、癌患者始め、体力が必要な状況の方々にとってそれがどれほどプラスに働くかは甚だ疑問だと個人的には思います。あくまで、個人的には、ですが。
と、書いた。
もちろん、そこから先は私の出る幕ではないけれど。

ついでにいうと、元上司は、クエン酸水も勧められて飲んでいる、らしい。
でもさ、クエン酸は酸性じゃない?
どういうロジックなのか、理解に苦しむ、両方飲むって。
体のアルカリ化を考えのであれば、それを中和するものを飲むことになる。
その効果はどこにあるんだろう?

もう一つ、クエン酸と重曹あわせると、
化学反応としては二酸化炭素の泡がでる。
体内で、それを胃酸の中でやるとどうなるんだろう?
万が一胃の中で二酸化炭素が発生すると、それは、癌に効くんだろうか?
体のアルカリ化に寄与するんだろうか?

もう一つ、重曹とクエン酸を反応させると、
手の辺りの温度は若干下がるように思う。
計測したことがあるわけではなく、あくまで体感レベルだけれど。
でも、毎回そう感じるので、恐らく多少温度は下がっているのだと思う。
もし、反応で多少でも温度が下がるとすると、
それも、プラスなのかマイナスなのか。
果たして、そんなこたぁ関係ねぇ……なのか。

エビデンスがないのが民間療法
と元上司はいっていたけれど
でも、重曹水飲むってきいただけでも、疑問がたくさん出てくる。
それを全部解消してくれて、その上に、
効いた、という人にお話を聞けないと、
猜疑心の深い私は、「やってみよう」という気持ちにはなれない。
まして、それを人様に勧めるなんて……と思ってしまうのだ。



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佐光紀子
得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)