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夫の機嫌をとる

この間の嫌われる老人の考察の続き。

お友だちのお連れ合いがインフルになった時の話。
彼女は仕事が目一杯で倒れられない状況だったのだけれど、
お連れ合いは家の中でマスクをせずに過ごしている。
咳が止まらず、彼女は移されてはとヒヤヒヤ。
ところが、咳をするときも、口を手のひらで覆って、
その後洗わずに、あちこち触る…。
友人は、全く移さないようにという気遣いの見えないお連れ合いに、
少なからずめげていた。

言えばいいのに。
マスクして頂戴って。
私がそういうと、
でも、そうすると、ものすごく機嫌が悪くなるのよ。
だから、とりあえず、彼女がマスクしてみたりしている……らしい。

出た〜。
と思った。
気に入らないことがあると、機嫌が悪くなる夫。
これは、50代以上の夫婦の特徴だろうか?
こちらが何か言うと、夫の機嫌が悪くなる。
機嫌が悪くなると、本当に面倒だから、
機嫌を損ねないように、こっちが折れる、
という話。

以前、知り合いが、夕飯に丼物はあり得ない
というので、どうして?と聞いた時も、
丼物出すと夫の機嫌が悪くなるから、という答えが
返ってきたことがあった。
ご飯作ってもらって、それにケチつけるって
あり得なくない?
という私に、
機嫌損ねちゃうと本当に面倒なことになるから、
しょうがないのよ、と知り合いは言った。
ひどいと、1ヶ月くらい、ブンむくれて口を効かない、と。

でも、その間、ご飯は出してもらって、食べているわけでしょう?
というと、仕方がないのよ、だって、それ以上機嫌損ねたらもっと
大変だもの……という。
もっと大変は、恐らく手が出るとかそういうことなんだろうと
思ったけれど、それ以上は立ち入らなかった。

でも、それは失礼だと思う。
と言ったら、そうだけど、実際の生活はあなたのいうようには
いかないのよ、と、一蹴されてしまった。

英語ではHappy wife, happy lifeといって、
妻のご機嫌がよければ、人生OK
みたいな言い方があるけれど、日本では
どうやってもHappy hubby, happy life.
だんなの機嫌を損ねると、大変なことになる。
という人は多い。
実際どんな大変なことが待っているかというと、
恐らくは暴力を恐れているんだろうけれど、
怒鳴ったり、ものを壊したりということもあるのかもしれない。
逆に言うと、予想がつかないから、機嫌を損ねないように
している……というのが実際のところなのかもしれない。

こうした傾向は、息子時代に始まるんではなかろうか。
思春期の荒れる時期の息子に対応しあぐねる母親もまた、
機嫌が悪くならないように……暴れられても困るから……
という対応に陥ることがある。
この傾向は、子育て、特に思春期男子の子育てへの父親の関与が低いと
顕著な気がするのだが、どうだろう。
母に恐れられ、機嫌が悪い様子を見せれば母が言うことを
息子達は思春期に学ぶ。言ってみれば甘えだ。
そんなこと、部活ですればハブかれるし、先生にすれば
注意もされるし、呼び出されもするだろう。
でも、ママはそんなことはしない。
機嫌が悪ければ、そっとしておいてくれる。
だから、ますます、機嫌の悪いそぶりを見せる。
そして、それが、結婚すると、今度は
妻に対して同じことをする。
同じ甘えの構造がここにある。

言ってみれば、公の立場にいるときは、機嫌が損なわれても
それを表に出すことはない。
少なくとも、出さない努力はするだろう。
でも、家というプライベートな空間では、機嫌が悪くなってもOKだと
10代の頃からすり込まれてきた人は、
そう簡単には治らない。
そして、介護の現場は、下の世話までしていただく、
完全のプライベート空間なのだろう、彼らにとっては。
だから、わがままもOK。
機嫌が悪くてもOK。

だから、ケアしてくれるヘルパーさんに感謝もないんだろうなぁ。
と思う。
難しいのはわかるけど、
機嫌が悪くなるからと恐れず、
戦ってみるのはどうなんだろうね、と思ったりもする。
丼ものなんか赦せん!
と怒鳴る夫に、じゃぁ、お好きなものを買っていらしたらどうですか?
くらいのことを言ってもいいのでは。
私達は、丼ものがいいので、本日は丼を食べます。
お嫌だったら、無理に食べていただかなくてもよいです。
でも、その際な、ご自分でご用意ください。
そう、言えるご家庭が増えてほしい、
それは明るい老後、施設生活にもつながるような。
家族や同居人に気を使って、お互い楽しく暮らすって
結構大事だと思うんだけどなぁ。




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佐光紀子
得意技は家事の手抜きと手抜きのためのへりくつ。重曹や酢を使った掃除やエコな生活術のブログやコラムを書いたり、翻訳をしたりの日々です。近刊は長年愛用している椿油の本「椿油のすごい力」(PHP)、「家事のしすぎが日本を滅ぼす」(光文社新書)