守り木 精霊の記憶 弐
いつであったか。
酷い大雨でこの下を流れる菅野川と呼ばれている大きな川が、氾濫しそうになっておったな。
我のいるこの台地もかなり削られてしまった。
昔はこんなに酷いことはなかったのだが…。
雪も昔に比べてみればそんなに多く降らず。
寒さに堪えなければ生き残れなかったのは遠い昔の話。
たまに大雪になれば人間は大騒ぎするが、我から見れば滑稽でしかない。
ここ近年は冬が昔ほど寒くはないため、我らの体調も狂ってしまっておる。
夏などは最悪である。
体が焼けてしまうほどに熱くなり、葉も弱ってしまい成長を止めなくてはならないほどだ。
そういえばいつの頃からか、川の中にあの石がある。
どこから流されてきたのかわからぬ。
この国の人間たちが殺しあっていた遠い昔、あれはまばゆい輝きを放っておった。
それが300年、400年と年月を経るごとに輝きは無くなり、疲れ切ったサラリーマンのように永の眠りについている。
もう一度あの輝きを見てみたいものだ。
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