記憶にない話#金とカネ
近所の橋の上から二人の男の話し声がする。
a「へぇーどうするの、それで」
b「そりゃ決まってるでしょカネズルだから」
a「そりゃあ、いっちゃあ、おしめぇよ」
b「なんで、急に江戸っ子みたいな話し方」
a「ファンタジーは大事にしなくちゃ夢を買いに来るわけでしょ。単にお茶のみにきてるわけではないから。金を払って、夢を見てるわけだから。それなりに、夢を見せて、帰さなきゃ。現実に。」
b「そうねぇ。帰り際は、大事よね。」
a「プロペラみたいに振り回して、空飛べるレベルなんだけど。まだ、欲しいね。あったらあっただけ。カネは大事。欲しいね。」
b「墓場に行く前に、いい思いをして、何も残さず、去っていただく。きれいな終わりだよ。首がないことにもきづかないほど、綺麗に終わる。」
a「それ、なんだっけ。あれ、落語の。」
b「ああ……全く反対のこと信じてんだよ。」
a「反対って何?」
b「別の世界に生きてる。」
a「それ、反対じゃなくない?」
b「信じてないんだよ。何にも。」
a「あー、無心。」
b「違うね。とりあえず、合わないってこと。」
a「守れない。」
b「守るべきもの?」
a「うーん、守られるもの。守りたいもの。」
b「人だろ?」
a「肉体なくして、何を得る?」
b「とりあえずー、現実を見ろと、あんなとんでもない過去、背負えないね。人生ともにしないでしょ。負の遺産。引き継ぐ?さっさと、息の根とめてやれば?」
a「オレといっしょだと、幸せになれないよ。」
b「ああ、いいね。その別れ際。静かに去っていくよね。」
a「 うん」
b「怨念は残りそう」
a「いやー成仏してほしいね」
静かに窓を開けて見れば、橋の上に顔のない人間が2人が立ち話をしていた。生ぬるい風が吹きぬけた。
※ちょっと、ぞわっとする話を書いてみたくなり、書いてみました。
※実際は、遊歩道を歩いている方の話が聴こえて、世知辛いものを感じ、フィクションとして、描いてみました。
※怖い話を書く方とよく呑んでいたのですが、その方がお亡くなりになり、なんとも、昨日は、どうしようもなく、しばらく一人で呑みたくなり、生ぬるい話を書いてみたくなりました。書いているものより、飲んでる時の話が憶えてるなあ。おもろかったよ。先生。ありがとう。