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映画『お引越し』に思うこと

お正月には、だいたい映画館で映画を観ることにしている。映画はなるべく喜劇を選ぶことにしている。昨年は『枯葉』を観ていて、今年は、相米慎ニ監督の『夏の庭』か『お引越し』のどちらにするか、迷ったあげく『お引越し』を観ていた。(映画表記は『moving』)

相米監督の映画で好きな映画は、『夏の庭』をはじめにあげたいのですが、それは、こどもと初めて観た映画だったから、という理由もあるけれど、後半になればなるほど、どんどんたたみかけて、最後に突き放される。京都の人は、いじわるどすな。(距離感が絶妙だなってことです。)

のち、映画を観ていた子は、ひょんなことで『ションベン・ライダー』の主演の方と映画にちょい役で共演をはたし、現場で楽しそうに遊んでいたのは、うれしかった。映画俳優かぁ……。それが、どんなに貴重な経験だったか、と、思いたいのですが、本人は、なんか、こどもどうしでわちゃわちゃして、楽しかったな、と、いう夏の思い出の一つになっていた。

『夏の庭』も『お引越し』も、こどもが全力で自己主張し合う姿がおもしろい。相米監督の映画の中のこどもたちは、はっちゃけ、走っていたりして、元気過ぎていいなぁと思う。疾走感のあるこどもたち。大人は、いつも、後をおいかける。

女性は、後ろ姿が印象に残る。ああ、なるほど、と、監督は何フェチか、観るとはっきりとわかります。

歩く姿や走り方、自転車に乗りこむ、全てにおいて、人間って、どこか、懸命になってしまう時って、滑稽だなと思う。かっこいいんですけれどね。何かそこは、愛らしく、ふっと、笑いたくなる。

映画『お引越し』はデジタルリマスターで上映されていると聞きつけ、これは、観に行かなくちゃ!!と、駆け足は危ないので、少し早歩きで、かけつけました。

たぶん、お客さん少ないんだろうなぁ、と平日に行って、上映終わりに振り返ったら、会場の半分は入っていた。しかも、年齢層は幅広く、20代とおぼしき方から、人生の大先輩だろうなあと思える方がたも多くいらっしゃっていた。うれしい光景だった。

映画館では、静かに……という鑑賞方法を促されるのですが、会場では、笑い声や啜り泣きが聞こえた。

大文字が燃えるところのスクリーンのぼやけ具合は、母の前では男性であり、こどもでありたいと思い、娘の前では父親像に揺れ、泣いているようだった。

ふぅー、どうなるの?と、せつなくなり、
どんどんスクリーンに近づいてしまう。
(席は移動していないのだけれど)
スクリーンが迫ってきて、映画の中にいるような気分になり、

「おめでとうございます!」

!!!

何ですって!!この展開!!
わけがわからないんだけれど、相米監督、すごいよ、がんばれ、と、思う。
切り込んでこられ、えぐられ、くっ、と、息をのみ、脇腹が痛くなりつつ、観ていました。

はらはらしながら夜が明けてくれと願い、走り、歩きまわる、田畑智子さんを観てしまう。

そして、鶴瓶師匠が、担任役なんですけれど、黒板近くに座っているだけで、面白いのはなんでだろう。偶然、最近、空港でお見かけした時も、なんとも言えない雰囲気を醸し出していて、おだやかな気持ちになった。芸人さんって、登場するだけで、もう、おもしろい。

相米監督の映画を観ると、ぐぐっと、何かを掴まれる。少しエロティックでポップで、人間ってアホだなぁと、泣いてしまう。一回観たら、忘れない。強烈な何かを体の中に残していくのでした。

今年は、相米監督に始まり。幸先よいのか、悪いのか。

相米監督の映画を観て育ったこどもは、おかげさまでそれなりに大人になりました。相米監督ありがとう。と、言ったところで、まるでご本人には、伝わりようにないのですが……。(涙)

おめでとうございます!
おめでとうございます!!
おめでとうございます!!!






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