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心に響く音

銀座の時計塔が新しくなったと、聞きつけ、行ってみた。

セイコーハウスは、時計塔のあるビル6階にある。

銀座駅9番出口の階段を20段ほど登れば、その入り口は、近い。

時計塔のもとに、誰かを待つ人が溢れ出した。

初めて手にした時計は、高校の入学祝いに頂いたSEIKOの金時計でした。ネジを手で巻くもので、お気に入りでした。今も大事にしています。当時、陸上競技部と美術部を兼部していた私にとって、その時計は、タイムスケジュールを組むために必要な指標でした。自宅の置き時計は、今も時を刻み続けています。

ずいぶん、遠くまで来てしまったようだ、と、時間の流れと距離を測るが、それは、この街の人にとって、誰かにとって、興味のないことなんだろう。

道ゆく人や時計の周りを歩く人を見ては、この時代では、運命共同体と想像しつつメタバースの街を歩くことと、この世界は、何が違うのか、考えていた。

エレベーター前に、rondoと名のついた置き時計があり、90年の時を刻み続けるって、物を作り続けるって、何だろうか、と、その時代について、思いを馳せた。

ギャラリーに入ると、

1〜12まで、いろいろな音が聴けました。

時計周りにぐるりと歩くと90年と今をつなぐように、歩いたサークルの真ん中に、ヤマハのアップライトのピアノと椅子がありました。あれは、銀座のソニーパークミニにあったピアノのようです。

鼓動、自然、冒険、涼やかさ、優美、水、限界への挑戦、幸せなひととき、心を包む、江戸のものづくり、まばゆい輝き、そして、銀座の街を見守りつづけた音。

今も時は流れて、刻むのは、誰か。そんなことを考えられる余白ができると、雑音が気にならなくなる。

07の音は、陸上部のトラックを走る、なんだか懐かしい響きでした。

山縣亮太選手は、時の記念日、きのうが誕生日だったんですね。おめでとうございます。

2021年に出した

男子100mの日本記録9秒95の音を聴いて、走るリズムは、三拍子なんではないか、エレベーター前にあった、ロンドの意味と繋げたくなりました。

時計の針を09のところまで、歩いて見ると、急にピアノが鳴り出した。

一つだけ椅子が空いていたので、会場の方に促されて座って聴いてみた。

アップライトの背中越しに聴くピアノは、温かく、いろんな人の思いを受け止めて来たようなメロディーでした。見知らぬ人の何かを昇華して来たような音色は、心を包む紙を触る人の手と同じように、もてなす心を音にしているようです。照明が暗くて助かった。涙が溢れてしまっていた。

ピアノの鍵盤を叩く、触るのは、音に触れることで、触れたものを聴くことも、触れることに変わりなく、確かにあることを知る。

ネジ一つを巻く、テーラーがハサミで布を裁く、リングになるための金属を叩く、叩く音だけでわかる、体に響く音は、静かに遠くに響いていく。

銀座の街ですれ違った人と別の会場ですれ違う。

街の音は、聴き流されてしまうものかもしれませんが、時を刻む、紡ぐ、断ち切る、形作る、人をつなぐもの、時間をつなぐのも、人間のなせる技で、匠なものづくりの音に、90年過ぎても、響いていますよ、と、確かな今を感じていました。

入場には、事前にデジタルチケットを予約が必要です。時間を見つめる機会にどうぞ、足をお運びください。






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