音楽の身体性について、思うこと
最近、ダンスを観ることが多いのですが、ずっと考えていた、音楽の身体性のこと。ふっと昨日あたり、腑に落ちた。
よく、SORAKIくんのダンスを観ています。
ただリズムにのって踊っているだけでなく、
音楽をよく聴いているダンサーだなと、思うからです。
昨日、コットンクラブへ松丸契さんの新曲を聴きに行き、もやもやしていたことがさらっと納得してしまっていました。
反射鏡(ピアノのまわりに置かれた反射板)に写った譜面がちょうど見えたので、時々見ながら、譜面に起こされたことと、その場で起きてしまった即興、どこまでが譜面通りでどの部分が即興なんだろうか。と、ソプラノを手にして、やっぱりおく、というくだりは、今日になって気になっていた。何か吹こうとしていたようでもありました。ダンスにも決めておく振り付けがあって、でも、その通りに行かないこともある。
ライブは、石橋英子さんの弾き姿に見惚れて、恥ずかしくなりつつも聴き逃したくなく、息を凝らして耳を澄ましていました。
2セット目は、官能的過ぎて、どうしたらいいんだろと、戸惑いつつ、踊ってしまいたくなる、リズムと和音の連なりに、うきうきしつつ、終わった後に、爽快感と2度とないことと、秋への移り変わりを感じ、夏にチケットを購入していたけれど、行けなかったドスノモスの方がたに帰り道遭遇して、いろんなところで、演奏している松丸さん、いったい何人いるんだ、得体が知れない。
休憩時間に、同席した方と、久々に映画の話しなどできたことも楽しいひとときでした。
松丸契さんと石橋英子さんの演奏は、毎回、緊張感のある水面の中を泳ぐような気分で、危うさに息を飲む。聴き終わると、ざぶんと陸の上に上がり、水圧から解放される。
今回は、風に吹かれているような気分で、踊ってしまいたくなるリズムやたたみかける和音の連なり、得体の知れなさや移り気な心が見え隠れする。こんなにメロディアスな曲を作ってしまうんだな。若き日の日野皓正さんを思い出したり、夏の太陽の暑さ加減、蝉の抜け殻が人知れず、木から落ちる、何かが終わる時とふーっと駆け抜ける風には、いつも風景がともなって見えてくる。
松丸さんすごいな。
そして、石橋英子さんの官能的過ぎる弾き姿に、身体があることで、音楽があるんじゃないかと思ってしまいました。
話しは、逸れているわけではなく、音楽のライブとダンスの即興ってきってもきれなく、SORAKIくんのダンスには、音楽をすごく感じるのですが、踊りが見える、踊ってしまう音楽は、記憶にも残り、身体性がついてくるものと思う。そして、
そこから、さらに突き抜けようとしているんじゃないかと思えるダンサーがSORAKIくんで、遊び慣れた手のつかい方、ちょっとした日常の仕草を振りの中に入れていて、発見した時、とてもうれしかった。
びっくりしたのは、ヒグラン ハマジアンの音楽で踊っていたショーケースの踊り。おしゃれすぎて、決め打ちし過ぎて、今までの既存のダンスからはみ出していくようなダンスではなかったように思う。その試みは充分に感じましたし、ハマジアンは、ダンスミュージックを作り続けている人と認識していたので、その選曲は、かなりうれしかったです。知っている音楽が踊りつがれるって、うれしいものです。ダンスコンテストにハマジアンで出てくる人は見かけませんから、その選曲、かなり、とんがっているとも、思いました。
くだらないことをユーモアで蹴散らし、アウェイも楽しむことがたたかいなのさ、と、これまで試行錯誤して得てきた術を存分に使い、観ている人たちを巻き込んでいったレッドブル2022の踊りは、「これ、好きなんだよ。この音楽!!これ、知らないけれど、聴いてみるわ、踊ってみっか。そう、来る?おれは、こう、踊る。」と、しっかり、対戦するダンサーと対話しているみたいで、よいなあと思う。
ラストのたたみかけは、yoshieさんのダンスが宿っているようで、ユニークさがあって好きな振りです。
話は逸れているようで、逸れていない。
踊る人と音楽を奏でる人。
聴いて踊る、踊るから奏でる、その交差する関係が音楽の身体性なんではないかなぁと思います。
松丸さんの指揮は、初めてみましたが、それぞれの持ち味を信頼しているんだなと、椅子に座っている時に安心して聴いていました。
聴いている方が、え?この先どうなるの?と、戸惑い、振り落とされそうになりつつ、終わらないでくれ、と、思うけれど、演奏は、何かを失っていくように感じました。
時々、音楽へ欠落することへの憧れがあるのですが、曲の終わりはその欠落そのものかな、と思います。
終わりと決めたら終わりなんだと、サインが指先から出される。組曲の終焉は、まだ、これから続きがあるようなんだけれど、と、観客は期待して拍手をするが、その後に
「おしまいです。」
と、物語から現実に引き戻される。
新作には続きがあるようです。
SORAKIくんも今年は、新作?!引っ提げて、踊るようです。
お二人が交差するかは、わかりませんが、楽しみです。