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9合目

このところ私は、コンサート続きの夫や娘のお世話でバタバタしています。

指揮とピアノ。
同じ音楽でも音を出す人と出さない人では勉強の仕方が全く違います。

夫は時折腕を振りながら、ニコニコしながら、眉間に皺を寄せながら、スコアと睨めっこしています。

娘も、弾いては譜面と睨めっこ。
そして音が時々苦悶しています。
私もピアノですから、苦しんでいる様子が手に取るようにわかって、隣の部屋で聴きながら泣けてきます。

案の定、昨日は晩御飯を食べながらポロポロ涙をこぼしていました。

来月6日、第5回目となるソロリサイタルのメインの曲は、
ベートーヴェンの「ハンマークラヴィーアソナタ」です。

私もかつて挑戦しましたが、
軽々はじき飛ばされました。
私はまだまだそんな域には達していませんでした。

娘がリサイタルの曲目を決める時は必ず先生に相談します。
昨年、相談した時先生は「とうとう来たね」と言ってくださったそうです。

50分に及ぶピアノソナタ。
もうだいぶ耳が聞こえなくなったベートーヴェンが苦しみながら、しかし、どんどん進化するピアノに出会えた時期でもあり、そこには驚きや喜びもあります。

全4楽章のうち、第1、第2楽章を作曲したのはウィーン式のピアノ、
第3、第4楽章を作曲したのはイギリス式のピアノだそうです。
イギリス式の方が低音に深みや幅があり、それにインスピレーションを受けての第3、4楽章。

娘が苦しんでいる箇所があるのもちょうどそのあたりです。

「あと少しで抜けられそうなんだけどなー!」

そうそう。毎年本番10日前あたりはこんな感じになるのです。
これがないと、頂上へ向かう尾根は歩けません。


この曲のことを「クレイジー・ピース」と言うピアニストもいます。

リサイタルまであと10日。
きょうはリサイタル前最後のレッスン。
いつもこんなギリギリまでレッスンは入れないけど、今回は何もかもが特別なんだろうな。

新幹線に乗るのも気分転換になるでしょう。
きょうは富士山見えるかな?

※見出し写真は昨日の頑張れご飯。

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