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キヨ(記録)Vol.3
ついに会えた。
本当に会えた。
会うまで、本当に来るかなって
少し心配した。
彼女は目が不自由だ。
そして、脳にも病気を持っている。
約束の時間から5分くらい経った頃、
「バスが混んでて進まないの。
烏丸で降りて歩いて行くわね!」
と電話があった。
朝でも四条通はまあまあの人混み。
“まだしばらくかかるかも…”
最後に会ってから7.8年は経っている。
ちょっとドキドキしながら待っていた。
すると
凄い勢いで白い杖をついた人が
通り過ぎて行った。
「キヨ!」
呼び止めたら急ブレーキかけて止まった。
「あ!さこ!!」
「なんて速さよ〜っ!!危ないじゃないの〜!!」って、
2人で大笑いした。
良かった!元気だ!!
三千院に行く予定だったのが、
大原は遠いからと、ちょっと尻込みしたので、
きょうはこの辺りでお散歩しましょうということにして、
まず予定どおり、
フランソワ喫茶店へ。
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いつもいっぱいのフランソワは、どうしてかあまりお客さんがいない。
朝だからかな。
時々電話では話していたけど
やっぱり伝えきれない。
キヨはまだ子育てが終わっていない。
4人いる子どもの中で、
一番上がつい最近就職が決まった。
下の3人はまだ学生。
みんな個性が強くて
キヨお母さんは大変だ😌
せっかくの京都。
歩こうということになり
空也上人に会いに行った。
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明るいところから、展示室に入ると目の見えにくい彼女は、
その空間に目が慣れるのに時間がかかる。
説明文を読んであげる。
他の人も聞いているので
漢字を読み間違えないか
緊張した🫢
近くのご飯屋さんでしっかり腹ごしらえし、
そのまま東山方面へ向かう。
この辺りは若者でいっぱい!
急に八坂の塔が見えた。
「わあ!京都みたい!」
唐突に大きな声をあげるキヨ。
京都に住んでる人が何をいうの!
もう、可笑しくて2人で笑い転げた。
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とにかくこの人混みを脱出すべく、どんどん坂を登った。
坂本龍馬のお墓の少し手前まで来た。
ここまでくると流石に人もあまりいない。
京都市内の景色を見ながらゆっくりお喋りした。
昔から山登りの得意なキヨは
全然息がきれていない。
私はバテバテ。
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そのまま高台寺の方へ降り、
石塀小路を抜けて
円山公園へ。
「桜餅と金木犀が混ざった匂いがする」
と言う。
なるほど、桜の名所だものそうかもね。
そろそろ日も暮れかけ。
暗くなると全く見えなくなるので、
明るいうちに帰途に着く。
白川沿いに歩いて
次に会う約束をして別れた。
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2人とも2万歩歩いた。
歩けることに感謝するキヨを見て
キヨの強さと優しさに涙が出た。