【エッセイ】残りの人生で最も聴きたい曲
アメリカ映画界の聖人
私はキアヌ・リーブスのいい人エピソードというのがなぜか好きで、時々検索をかけたりYouTubeで探して観たりもしているのだが、以前、彼がテレビ番組のインタビューで「残りの人生で最も聴きたい曲は?」という質問に対してJoy Divisionの“Love Will Tear Us Apart”と答えているのを知って、はて私の場合はどれだろう?と思い、考えてみた。
【Joy Division/Love Will Tear Us Apart】
ジョイ・ディヴィジョンは私たちの世代はリアルタイムで知っているイギリスのバンドで、いわゆるパンクロックのちょっと後に出てきて通称ポスト・パンクと呼ばれるバンド群の代表格と言えるバンドなのだが正直、音楽自体もバンドにまつわるエピソードも陰鬱過ぎて(笑)私はあまり好きになれなかった。
ただ、今となってはこういったネガティヴな雰囲気を前面に出したバンドというのは珍しくないが、この当時では異色というかかなりインパクトが強かったのは間違いない。
ヴォーカルのイアン・カーティスが自殺して解散した後に、ニュー・オーダーというバンドに変わりブルーマンデーという曲がクラブ・シーンで大ヒットして、どちらかというとテクノとか打ち込み系の、クラブ音楽として有名になった。
私的にはただでさえ好きになれなかった上に、苦手なクラブ音楽の方に行ってしまったバンドなので、なおさら聴かなくなってしまい、ニュー・オーダーになってからの音楽は殆ど知らない。
TomWaits/Time
キアヌ・リーブスは色々考えた挙げ句に“Love Will Tear Us Apart”を挙げたらしいが、私は考え始めた直後に答えが出てしまった。
トム・ウェイツのタイムである。
noteの記事としても度々名前を挙げてしまって、重複記事多数の上、自分でも管理しきれていないほどバラバラに情報をだしていて恐縮だが、やはり私はこの人が好きで、捨て曲は一曲もないと確信しているのだけど、その中でもこの曲"Time"がダントツで好きなのだ。
なんのギミックもない極めてシンプルな曲、ガットギターのみによるシンプルな演奏、敢えて抑揚を消したような歌唱、フックになる部分があるとすればそれは彼自身の嗄れた声くらいのもので、美しいメロディーをなぞりながらザラザラと感情を擦っていく。
とにかくシンプルであるがゆえに、何度聴いても飽きることのない、どんな気分の時に聴いても心にすっと入ってくる、一生聴いていける名曲だと私は思っている。
【TomWaits/Time】
おまけ【MarcRibot】
ちなみにこの曲でギターを弾いているのがマーク・リボーという人で、これもまた私が最も好きな、最も影響を受けたギタリストであり、私としては至福の一曲でもあるのだ。
この動画なんか観るともう、貧乏な爺さんがぶっ壊れかけてガムテープで補修してあるペンペンした音のギターを爪弾いてるだけみたいに観えるし、そもそも巧いんだか下手なんだかわからないような演奏なのだけど、実はクラシックからノイズまでどんな音楽にも対応できる、ギターという楽器を知り尽くした現代の名手のひとりなのである。
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