【エッセイ】便所講 #4
前回
言い訳
おかしいね。
GWの暇つぶしにサクッと書いて単発で終了するはずだった当家の便所話も第4話となってしまった。
味噌汁の時と同じだ。書き方自体が全く進歩していないというか、全般に思いつきの行動が多くて、思いつきの中でさらに思いつくことも多々あるのでどうしてもこういう事になってしまう、という自己分析はできている。
トラブル事例2‐便座割れる
前述の通り
現在から遡ること7~8年前、トイレリフォームによって当時、上の下レベルの自動開閉機構付き便座を設置した当家。
因みに可の有名な「◯OT◯」というメーカーの製品であって、基本的には業者に進められて取り付けたわけだが。
非常に快適だった。
さすがは「T◯◯O]だと感心した。
そして約2年が経過しようとしたその頃。
微かな異変
ある日、便座のフタが開かないことがあった。
「まぁ時にはそういうこともあるだろう、所詮は機械なのだから」と、鷹揚に構えていた私。
その場は手動で開いて対応、その次から暫くは何事もなく正常動作していたので「やはりちょっとした誤動作だろう、めでたしめでたし」と余裕をかましていたある日便所のドアを開けると、本来は閉じていなければならないはずの便座のフタが開きっぱなしになっている。
違和感を感じた私はちょっと周囲を覗き込んで愕然とした。
非常事態
便座の根元すなわち丁番に当たる部分が割れ、欠けて、その破片が床に落ちていた。
私はわけの分からぬままその破片を拾い、眼前でまじまじと見つめ、膝がガクガク震えるのと同時に「なぜ?」という疑問が脳内をぐるぐる回転し始めるのを感じていた。
まったくわけのわからないまま、とりあえず拾った破片を割れた丁番部分に嵌めてみると、ピッタリ合う。
いや、おかしいだろう、無人の便所で突然、便座開閉用の丁番部分が割れて欠けるなんてぇことがあるかい?
いかに訝しんだところで、状況からして、そういうことが現実に起きたという事実に変わりはない。
ということで、ひとり悩んでいても問題は解決しないので、カスタマーセンターに電話。これも電話がつながるまでにすったもんだしたのだがそれは省くとして、相手が言うことには、
「部品が欠けた理由はわかりませんがとにかく、便座が降りていて且つ人が座って便座に荷重がかかっているという条件が揃わなければウォシュレットは作動しません。現在は丁番の軸受にあたる部分が欠落したことによりモーターの軸がフリーになっていて、便座が降りた状態であるという条件が確認できないため、作動しません。有償の修理を手配しますが、すぐには行けないので、数日は現状のままの使用をお願いします」
ということであった。
斜陽
実に横柄な言い分である。
私はこれが嫌でたまらなかった。いや、担当者の態度ではなくて温水便座として機能しないということがである。
「自動開閉機構のついた温水便座」を取り付けたにもかかわらず、自動開閉どころか温水便座としても機能しないということは、当家の便座の地位が上の下から下の中あたりまで一気に下落したということで、これは明らかに当家の斜陽を暗示している。
これは絶対に避けなければならない。
私はウンウンと唸りながら必死で考えた。
確かにメーカーが言うように、開閉スイッチを押しても、モーター音を響かせながら軸が空転しているのが目視で確認できる。
とりあえず開閉不可に対しての降格は受け入れるとして、温水便座としての最低限ギリギリの尊厳は死守せねばならん。
応急処置
散々考えた結果。
神を罵り号泣しながら自動開閉機能をオフにし、欠け落ちた軸受をとにかく軸に嵌め、そのポイントに合わせて便座を手で動かし、軸受と便座を強力なガムテープでガッチリ且つぐるぐるに固定する。そして軸受と便座が分離しないように手で抑えながらギリギリの低速で便座を軸受けごと下げ、便器本体と接触したところを、こんだ便器本体と便座をガムテープで固定する。
こうすると、モーターの軸は最下限を感知して便座は下がっていると認識するので、そこに人が座れば荷重がかかり、温水便座の動作条件である「便座が降りている」「荷重がかかっている」という2つの条件はクリアされるのである。
まぁ、実際にこれをするのは言うほど簡単ではなくて、事前にガムテープを切ってないばかりに何度も軸受が転がってしまったり、変な体勢で作業したら腰が痛くなったり、もたもたしていたら妻子から「遅い」と叱責されたりという苦難が私を襲い、発狂挫折寸前でなんとかほぼ理想の形ができたのである。
私がゆっくりと便座に腰を下ろすと、ノズルの自動洗浄をするウィーンという音がして「あ、これ成功したかも」という達成感その1が私を満たした。そしていよいよ温水機能の発動である。私がスイッチを入れるとそれはしっかりと作動し、正確に私の肛門近辺を洗浄してくれた。達成感その2である。
私が唇を震わせて感動の涙に暮れていると妻が「早くしてくれ」と吠えたので私の感動は急激に萎み、涙は枯れた。
これがその時の記録写真である。
「フランケンシュタインの便座」
とでも名付けたい感じの力作であるのだが、でもちょっと雑。
(つづく)終わらなかった、嗚呼・・・