【音楽】アンダーグラウンド#3 ニック・ケイヴ
前回
普段はあんまり聞かないけど
時々、猛烈に聴きたくなるシリーズ
ニック・ケイヴである
何言ってんだ、ニック・ケイヴはアングラじゃねぇよという声があることは重々承知なのだが、これは私的な印象、あくまでも自分の想いとしてはアングラ、いや一時期はアンダーグラウンドの代名詞とさえ思っていた、そういう歌手である。
"The Birthday Party"
最近はその従来の歌の巧さが正当に評価されて、チャートに入るような具合になっているがそもそも、彼が注目された初期というのは"The Birthday Party"というバンドで、極めて不健康そうなパンクバンドであった。
The Birthday Party, "Junkyard"
それ以前にも”BoysNextDoor"というバンドをしていたようだが、私が知ったのは"The Birthday Party"からである。
で、その"The Birthday Party"は観た通り、陰鬱な感じの曲をこれまた陰鬱でダル気な演奏をバックに更に陰鬱な低音ヴォイスで時に絶叫しながら歌うというもう、ニューウェーヴ感満載の暗いバンドだったのだ。
”NickCave &The Bad Seeds”
そしてその陰鬱なバンドでの活動を終えたニック・ケイヴが"The Bad Seeds"というバンドを従えてソロ活動を始め、現在まで続いているわけで、そのわりと前半の時期に発売された"The Firstborn Is Dead”そして"TenderPrey"というアルバムが、私のツボを強烈に刺激したのだった。
NickCave &The Bad Seeds/"The Firstborn Is Dead”
NickCave &The Bad Seeds/"TenderPrey"
とりあえずは"The Firstborn Is Dead”から"Tupelo"をどうぞ。
NickCave &The Bad Seeds "Tupelo"
次に"TenderPrey"から"TheMercySeat"をどうぞ。
NickCave &The Bad Seeds "TheMercySeat"
ここまで、3曲を視聴いただいたところで聡明な皆さんがお気づきのように、どれも大差ない。
陰鬱ながらもエモーショナルなのはヴォーカルだけで、バックの演奏は陰鬱かつ単調言い換えれば一本調子、どれも暗いとしか言いようがない。
ちなみにこの人、実は詩人としても著名で詩集も何冊か発表、翻訳されて日本でも発売されていて、私はこれを図書館で読んだのだが、感想としては「陰鬱」それに尽きる。
もはや廃刊で古本を探すしかないようではある。
まぁとにかく最初から現在まで陰鬱、暗味、辛気臭さの権化のような存在であり、これまさに一時期のアンダーグラウンド音楽の世界的な潮流、音楽全体から見れば支流のアンダーグラウンドにとってはこれが本流の潮流だったわけだからその流れで観聴きすれば、いかに本人の名前が売れようがなんだろうがあくまでもアンダーグラウンドの代名詞と呼んで問題ないと思っている。
そこで、ここにニック・ケイヴが富と名声を手に入れた後のライヴ映像を発見したので、先程のまだ貧しく貧弱で辛気臭い当時の映像と見比べていただきたい。
"TheMercySeat"(LIVE)
聡明な皆さんはおわかりのように、もはや大歌手の貫禄である。
確かに曲は暗い、相変わらず陰鬱である。
だが、歌のエモーションが減退して代わりに演奏のエモーションが増加してしまっている。
現在の彼は地下から這い出して、メインストリートを歩いているようだ。
参考までに
ニック・ケイブとともにジメジメした辛気臭い地下を歩んでいる"The Bad Seeds"のメンバーに、ブリクサ・バーゲルドというドイツ人がいるのだが、彼は1980年代から活動している"アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン"というバンドのリーダー、ヴォーカリストである。
このバンドは演奏に鉄くずや金属を組み合わせた自作楽器、更にはチェーンソーやドリルなどを使い、それを持ち込んでライヴをするという、ノイズ・インダストリアルというカテゴリーの音楽を世界に広めた立役者の一つである。
名前を知らなくても、聴いたことなくても、彼らのこの象形文字のようなマークは知ってるという人もいるかもしれない。
Tシャツのデザインに使われたり、入れ墨として身体に彫ってる人もよく見かける有名なマークである。
Einstürzende Neubauten - Sehnsucht (Official Video)