文系未経験7人をiOSエンジニアとして転職できるまで教育した話
はじめに
こちらのnoteに書いている2020年4月からiOSエンジニアになりたい人向けに個人講義をやっていました。
結果、異業種から文系の未経験での転職者だと合計7人がiOSエンジニアとして内定が出ました。
学生や1~2年目のwebエンジニアからの転職の方々も含めるともう少し多いです。
最高齢者は2021年9月に内定の出た35歳の男性で、この方も異業種からですのでIT業界もプログラミングも未経験でした。(下記追記の通り37歳の男性も内定が出ました)
30代半ばの男性がちゃんと内定が出たことを区切りに、これまでの指導で得たことについて書いていきます。
(2022.07.22に追記)
2022年7月に高卒の未経験の方もiOSエンジニアとして内定が出ました。
(2023.09.19に追記)
その後、37歳の未経験男性、地方在住の方もiOSエンジニアとして内定が出ました。
https://note.com/harusan_swift/n/n259713f09859?from=notice
ただ、この方は事前にプログラミングスクールも出ており、それから足りない部分を自分の個人指導で補填したような感じです。
どういう企業に就職できたのか?
・社長が宇宙に行けちゃうような業界最大手のIT企業
・都内じゃない地方の中堅企業
・乗りに乗って人をガンガン増やし出したスマホアプリ開発企業
・少数精鋭のベンチャー企業
など
企業規模に関わらず新人のiOSエンジニアとして内定が出ました。
僕自身が積極的に企業情報を集めてるわけでもないのですが、身の回りで見聞きする感じだとまだまだどこも数年は人手が足りないままだと思います。
内定後、活躍できているのか?
僕自身が生徒の内定先の会社で働いているわけではないのでどれぐらい活躍しているのか分かりませんが、1年近く働いている生徒は一緒にiOS開発の副業をしてもらう程度にはなりましたし、教えている最中でもその時の実力に合う案件があれば仕事を回したこともありました。
今のところ全員iOSエンジニアとして働き続けています。
(2024.07.26に追記)
その後、プロジェクトの都合や本人の希望でFlutterやAndroidネイティブなどをやれている方々もいるようですが、SEは続けらているようです
なかには4年で開発リーダー候補にまでなったり、給与も自分より高くなった人もいます
どれぐらの費用と期間がかかるのか?
決まった期間を受講するのではなく、各々で知りたいことや足りなそうなことを講義やコードレビューで都度払いしていったため、個人によってばらつきはあります。
そのうえで、だいたいみんな10ヶ月で10万円ぐらいかけた頃に内定が出ました。
挫折率はどれぐらいか?
まず前提として講義は1回1回都度払いのため
・試しに講義を1回受けてみた人
・分からないことだけピンポイントで聞いてきた人
・数回受けてインターン生として働き出した人
・途中からflutterやweb系をやり出した人
・しばらく連絡なくて、いつの間にかiOSエンジニアになってた人
・しばらく連絡なくて、本業が忙しくて期間が空いたけどまた講義を受け出した人
などもいるため、正確に「iOSエンジニアになることを諦めた」のかどうか分かりません。
目安として、継続的に講義を受けてくれて10万円近く払ったのに「iOSエンジニアなれました」と連絡を受けていない方は1名(記事を書いた時は2名でしたが2022年1月に内定が出たと連絡をいただけました)います。
そのうちひとりは何か家庭の事情があったようでTwitterも更新がなくなりこちらから連絡を取りようがなくなりました。
iOSエンジニアには誰でもなれるのか?
はっきり言うと分かりません。
上記のように試しに1回受けただけの人も、挫折したのか、もっと自分に合った人に教わることにしたのか、僕には知りようがないのです。
自分の感覚だと、誰にでもなれたら職能ではないので挫折もする人もたくさんいると思いますが、プロスポーツ選手みたいに選ばれた一部の人だけが生き残るみたいな分野でもなく、普通に他の職種の専門職と同じぐらいかと思います。
だけど明確な資格がいらない分なりやすいと思います。
さらに都内に限ると仕事は溢れていますので一定の能力を身に付けたら必ずなれる状況とは思います。
年齢、性別、コミュ力、資格などはほぼ無関係で、技術力さえあれば良いかと思います。
数学は学ぶ必要があるか?
ないです。
中学1年生で学ぶ x = 1 というような変数の概念は理解する必要はあるかと思いますが、それ以降になると一般的なiOSアプリを作るうえでは不要です。
講義やレビューで数学的能力を問うような機会もなく、その素養が足りないと感じる機会もありませんでした。
英語は学ぶ必要があるか?
僕自身は10年前に最後に受けた社内TOEIC模試が290点だったので、底辺でもいいからiOSエンジニアとしてやっていくには中学英語ぐらいで良いかと思います。
もちろん英語ができた方が何かと有利とは思います。
学歴・学力は必要か?
学歴が必要な会社もあるかと思いますが、身の回りのiOSエンジニア採用の場合に学歴で採用が分かれるというのは聞いたことがありません。
そもそも採用を考えてもいい技術力の人がまずいないため、会社としても学歴を問える場合ではないというのが実情かと思います。
学力でいうと、講義を受けた方々は高卒か大卒か大学中退でしたので、中卒の人が学んでいけるかどうかは分かりません。
目安として僕自身の高校の頃の学力は以下のnoteに書かれてます。
高校の頃を目安にすると、高校を問題なく進級できるぐらいの学力があれば学べるとは思います。
指導を受けただけでiOSエンジニアになれるのか?
講義だけでは不可能で、その後自習をしたうえでコードレビューまで受けたら可能です。
iOSエンジニアになるには自分のアプリを世に出さないといけませんが、そこで講義の内容を作成中のアプリに組み込んである程度使いこなせるようにならないといけません。
その時のコードレビューで「あの講義で教えた理解が足りてないから復習をした方が良いですよ」などを指導しました。
内定を出すまで指導はしましたが、内定が出たのは間違いなく本人の努力によるところが90%を占めると思います。
僕にできたことは何を努力したらいいか教えることでした。
何を教えたのか?
冒頭のnoteに書いた通りですがもう一度リンクを貼ります。
僕が2社のベンチャー企業で採用担当をしていて「未経験でもいいからせめてこれぐらいは学んでいてほしい」というものを教えました。
会社の規模や研修制度によってこの基準は変わってきますが、他の会社の採用担当者の方からも「だいたい合ってる」と言ってもらえた基準です。
プログラミングスクールはどうなのか?
そもそもiOSプログラミングが学べるスクール自体の数が少ないため、iOSに限ると一般的にスクールがどうこうという意見は出せないのですが、webエンジニアを採用している時だとスクール卒の人は全く話になりませんでした。
ベンチャー企業であるため会社に知名度がなく、優秀な人が来なかった可能性もあります。
ただ、個人的に1年以上プログラミング指導をした経験から言うと、スクールの3ヶ月で何十万円は期間が短すぎて値段が高すぎる印象です。
SwiftUIを学ぶべきなのか?
少し調べた人だと分かるかと思いますが、今iOSは根本の技術の転換期で、既存のUIKitからSwiftUIに移り変わってます。
初学者はどちらから勉強していくべきなのかというのが課題になるかと思います。
いま現場で使われているアプリの大半がUIKitですので、いま求人が多いのはUIKitです。
身の回りではSwiftUIだけの求人はないと言ってもいいぐらいです。
しかし社内のプロジェクトでは1画面ずつSwiftUIに徐々に切り替えていってるでしょうし、新規プロジェクトはSwiftUIで作り出しているかもしれませんので、数年でメインがSwiftUIに入れ替わっていくのも事実です。
結局未来のことなので、それがどれぐらい先なのかはみんなの勝手な憶測で正確には分かりません。
僕自身はまだ仕事のメインでSwiftUIを扱う段階ではないなと捉えてますし、生徒が仕事を始めたい期間を考えると求人の多さからUIKitを教えています。
冒頭の4人も含めた内定が出た人たちも皆UIKitを学んでいました。
(2022.2.26に追記)
ここ数年でiOS/Androidの両方に対応できるGoogle製のフレームワークであるFlutterが台頭してきました。
FlutteもSwiftUIと同じく宣言的UIを取り入れ、さらにホットリロードなど開発のしやすさがSwiftUIより遥かに洗練されています。
こういうマルチプラットフォームなフレームワークは過去にいくつかプロジェクトが立ち上がっては消えてを繰り返してきましたが、さすがにGoogleがやりだしただけのことはあり信頼性は高そうです。
なので、これからゼロからプログラミングを学び始める人で、スマートフォンアプリ開発に限って言うなら、SwiftUIに手を出すぐらいであればFlutterをやりだした方が良いんじゃないかなと個人的には思います。
プログラミングを教えると儲かるのか?
教える側の立場からの話ですが金銭面だけでいうと全く割に合いませんでした。
普通にSEとして仕事をした方が安定して収入が得られます。
もっと経営をうまくやればいいかもしれませんが、上記のように一般的なプログラミングスクールのような短い期間で採用レベルのiOSエンジニアに教育する自信はありませんでした。
利益を追求すると、もっと生徒ひとりあたりのサイクルを短くして1回の講義を高くしないといけませんがそれだと挫折者が増えますし「iOSエンジニアを増やしたい」という目的に合わないため今の価格設定でやりました。
iOSエンジニアが減っていくようだと国内のiOSアプリが満足に改修できずどんどんなくなっていくでしょうし、そうなるとwebやandroidといった他の開発ができなかった僕にとっては死活問題になるので講師業は将来の自分の保身の気持ちが大きいです。
今後
まだ2年ぐらいは現状のまま講師業を続けはしますが、それ以降は一旦やめようかと思ってます。
生徒の募集自体はあと1年ぐらいだと思います。
(2023.09.19に追記)
とくに辞める意味もないというか自然と受ける人が減ってきているので、変わらず募集は続けてます。
先日、以下のインタビューに出させてもらったところみたいに、この1年で世間のiOSを学べる環境も増えてきています(こちらのスクールを受講した人を知りませんので良し悪しについては分かりません)。
真っ当なスクールさえ増えてくれれば、色んな講師がいるスクールの方が学びやすいのも事実かと思います。
あとは上記で書いたように将来的にはSwiftUIがメインになることもあり、UIKitでiOS開発を覚えようという人が集まらなくなってきたなと実感してるからです。
まだUIKitメインが就職に有利と捉えてますが、さすがに1年後にもなるとSwiftUIを教えていかないといけなくなるため、僕自身が技術のキャッチアップしないといけません。
(2023.09.19に追記)
定期的にXでアンケート取ってますが、なかなか逆転しないようです。
SwiftUIの方が採用に有利という結果になったらUIKitを教えるのを辞めようとは思います。
おわりに
iOSエンジニアが増えない状況による自分の将来の不安と、昨今の悪質プログラミングスクールが目立ちますが口先で叩くだけじゃなく自分でやってみてどんなものか試したいので1年ちょっと個人指導をやってみました。
結果として本業の合間程度の講師業でも、未経験者を7人ほどiOSエンジニアとして内定出せました。
僕自身が社会人としては真っ当なマインドが欠けており面接対策や身だしなみやビジネスマナーなんかは教えられませんが、幸い技術力だけあれば異業種からくる未経験者でも内定が出る業界で、技術力だけ教えれば良かったので助かりました。
上記にも書きましたが、あと1年で募集を一旦やめますが、あと数名はiOSエンジニア人口を増やせたらいいなと思います。
将来的には各企業で経験を積んで偉くなった元生徒の方々から仕事を貰えてアゴで使ってくれると嬉しいです。
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