ああ、南国バリの夜は更けて　PART２

夜、そろそろ寝ようかなと思っていたら、突然ヨースケから着信があった。

何だろ、こんな夜更けにと思いながら『応答』のマークをタッチした。


はい、どうしたの？


おう、チサトか？　ごめんな夜遅うに、実はな、オレな、バリに来てん


えっ？バリ？　そうなの？　仕事？　それともバカンス？


アホ、仕事に決まっとうやろ


そう、こないだ、そんな話、何もしてなかったから


突然言われたんや、こっちにな、取引先の支店があってな、まあ二、三日で帰るんやけど


それはお気の毒、ゆっくりして来ればいいじゃない。


そんな訳にはいかへんよ。それにゆっくりったって、何も無いとこやよ。ひやわんにも会えへんしな。


誰よひやわんて？　でも景色の良いところでのんびりするのもいいじゃない。海でも見ながら


海？　海なんてあらへんよ。あるのは滝くらいやな、名前はなんやったかな、えーっとたしかAKM48とかいう看板を見たよな気ぃするわ


AKM48？　そんなの聞いたことないわ。バリにもそんなアイドルグループあったのね。そうか秋元さんでAKMね。でも滝って何だろ？

食べ物は？　どんなものがあるの？　何か食べた？


いや、そちらとそんなに変わらへんよ。そばとか焼肉とかかな？　よおわからへん。


へぇ、そうなんだ。いつか二人で行けたらいいな。……バリ


ええっ？　他にもっとええとこ、ようけあるやろ？　でも、せやな、ここにもええとこあるんやろな、知らんけど。


知らんけどって、そんなことないわよバリって言ったら有名じゃない、南国の島で。


え、南国の島？　笑わんせんなや、そんなイメージちゃうやろ、ほやけど秋は紅葉が綺麗らしいで、おかんに聞いたわ。これもあんま知らんけど。


紅葉？　それは私も知らなかった。でもそんな風景見ながらアロママッサージなんかして貰って、トロピカルドリンク飲んで、リラクゼーション気分を満喫出来たら最高よね。


せやな、仕事が一段楽して、まとまった休みが取れたら、そん時でも一緒に行こか？


そうね、楽しみにしてる。それより、何か用？　珍しいじゃない電話して来るなんて


いや、せっかくこちらに来たんで、チサトになんか土産、買おかなと思たんやけど、なんがええのか、さっばわからへんねん。なんか欲しいもんあるか？


あら、そうなの、ありがと。なんでもいいわよ。そちらの特産品とかで


う〜ん、特産品て、特になんもあらへんで、肉や野菜や果物ぐらいしか、饅頭なんか要らんやろ？


もうヨースケったら笑わせないでよ。もっとバリっぽいものとかあるでしょ、ま、お仕事で行ってるのだから土産なんか気にしなくていいわよ。


ほうか、それ聞いたら安心や。悪かったな、もう寝るとこやったんやろ？


いいのよ。そんなこと、電話してくれてありがと、気を付けて帰って来てね。帰りの飛行機とか。


アッハハ、チサトこそ笑わせるやないか、どっから飛行機乗るねん。その前に難波についてまうわ。


そうか、ヨースケ飛行機苦手だったもんね。なるべくそんなこと考えないようにしてるのね。そうよ、あっという間に関空よ。じゃ、また戻ったら教えてね。


おう、そないするわ。


それじゃ、おやすみ


おやすみぃ、ゆっくり寝てや〜、ほなまた。



ヨースケはスマホを切ると、ガイドブックを手に取って地元のグルメや特産品のページを開いた。
それにしても、三重県の名張市なんて初めて来たから何があるのかさっぱり分からない。ひやわんていうゆるキャラも全然知らなかった。
ガイドブックによるとやっぱり伊賀牛と忍者饅頭が有名らしい。それと赤目48滝か。
チサトと二人で行くなら、伊賀上野も良いな。忍者屋敷とか、上野城とか、それと松尾芭蕉記念館とかあるらしい。

そんなことを考えながら、ヨースケは名張ステーションホテルの一室で、ユニットバスのシャワーを使いさっぱりすると、髪の毛を乾かして、セミダブルのベッドに潜り込んだ。


おわり

ああ、南国バリの夜は更けて
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