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5年以上抱えた悩みが「免疫マップ」を通して、ほどけていった話

私は5年以上、付き合っている悩みがあった。その起源をたどると、30年以上抱え続けた悩みと言っていいかもしれない。長い、長いぞ。。

それは、「他者と深い関係性を作りたいのに、コミュニケーションを避けてしまう」というもの。

「この人と話したい」「仲良くなりたい」と思うのに、体は固まり、むしろ距離を置いてしまう。

人見知りと言えば、確かにそうだが、その言葉だけでは片付かなくなってきた。仕事でもプライベートでも、「人と向き合う」「深く繋がる」ことが必要な場面が増えてきたのだ。

どうにかしたいと思い、数年前に、『なぜ人と組織は変われないのか』という本を読み、自己変革のアプローチの一つである「免疫マップ」を作成してみた。免疫マップというのは、「人が変わりたいのに変われない」仕組みを可視化したものである。

感想としては、
「ふーーーん。で?」

というように、特段新しい気づきはなく、作成して何かが変わったわけではなかった。

免疫マップの存在も忘れてきた頃、友人が「免疫マップを作ってみたら、すごくよかった!一緒にワークショップを作ろう!」と声をかけてくれた。

試しに、「免疫マップ」の作成から、その後の行動の数々、仲間との振り返りまで、一通り本に沿って実施してみたところ、そのパワフルさに驚いた。(1人でやった時は、免疫マップの作成で終わっていたのだ。)

この「免疫マップ」は、書いて終わりではなく、その後の免疫克服のための具体的な行動と他者からの客観的な視点、深い内省をすることで、私自身に、大きな変化があったのだ。

「『免疫マップ』だからこそ出来ることがある」と分かったので、自分の体験を踏まえて、どんな変化が訪れたかを話していきたいと思う。

免疫マップというのは、『なぜ人と組織は変われないのか』の著者であるハーバード大教育大学院教授・ロバートキーガンが開発したもので、自己変革アプローチの一つである。変化に対して自分を守ろうとするメカニズムを免疫と表している。

この本では、「人は変わる必要性を認識していても85%の人が行動すら起こさない」「人が変わりたいのに変われないさまを『まるでアクセルを踏みながらブレーキをかけているようだ』」と表現されている。

現在、仲間と提供している『免疫マップ ワークショップ』については、過去の募集内容をこちらに記載している。ワークショップや個人セッションにご興味・ご質問があれば、XのDMや、こちらの「カジュアル相談」から、ご連絡いただきたい。

専門用語が多く、小難しく見えるかもしれないが、20代から50代まで、様々な悩みを抱えた方に受講いただいている。

それでは、「免疫マップ」の世界にようこそ。


そもそも「変わりたいのに変われない」って、どういうこと?

・部下に権限移譲したいのに、いつも自分が手を動かしてしまう
・子供を怒らずに優しく導きたいのに、気づくとガミガミ怒っている
・同僚の前で意見を言いたいのに、言葉を濁して、ストレートに伝えられない
・情熱ある仕事に力を注ぎたいのに、ついつい別の仕事ばかり引き受けてしまう

上記の例は、これまでの免疫マップワークショップの参加者から出てきた声である。

特に、自分にとって大切なテーマで、これまでも変わりたいと思って色々やってきているけど、しぶとく変わらない。そんなテーマが出ることが多い。

私のテーマは、「他者と深い関係性を作りたいのに、コミュニケーションを避けてしまう」というもの。

例えば、仕事で出会った人に興味が湧き、「この人をもっと知りたい!この人と深い話したい!」と思っても、話しかけることに強い抵抗がある。目を合わせない。話しかけた場合も、どうでも良い表面上の話題を持ち出し、深い話ができない。というものだ。

このテーマに沿って、まずは免疫マップを書いていく。

私の免疫マップ

最初に書いた免疫マップがこちら。

一番初めに書いた免疫マップ(画像をクリックで拡大)

免疫マップでは、改善目標、阻害行動、裏の目標、強力な固定観念の4つの要素を書き出していく。

①改善目標:自分から心から望んでいる状態や目標
②阻害行動:①を達成したいと思っているのに、ついやってしまう行為、妨げているもの
③裏の目標:阻害行動をして得ていること(不安感情と結びついている自己防衛的な目標)
④強力な固定観念:自分や世界に対する信念・思い込み

免疫マップを構成する4つの要素

私の場合は、人と繋がりたい(①改善目標)という願いがある。だけど、自分から絡みに行かない、人見知りをする(②阻害行動)。

なぜそれをするかというと、絡みに言って話せなかったり仲良くなれなかったら悲しくなるし、そもそも行動しなければ失敗もせず自己否定しなくて済む(③裏の目標)。

その裏の目標を持ってしまった背景にある思い込みは、自分はどうせ好かれない、世界は怖い(④強力な固定観念)というものだ。

なお、この免疫マップは、私1人で書いたものだが、他者との対話を通して、より解像度が高く、納得できるものに変わっていった

免疫マップを「1人で」「解像度高く」書き上げるのは、かなり困難である。どうしても1人で書くと、曖昧な言葉を使ったり、無意識に本質を誤魔化した表現になる。そうなると免疫マップの効力が落ちる。

他者の視点を借りて取り組むのが、大事なのである。

免疫マップを作ってみての感想

自分の免疫に対して「すごく恥ずかしい」と思った。

他者がこの免疫を持っていたら「可愛らしいな」「人間らしいな」と感じかもしれないが、自分となると違う。

自分の免疫は「特別」なのだ。なんでこんな歪んだ世界を見るようになったのだろう、と嘆きたくなる気持ちになった。

このように免疫を可視化すると、「恥ずかしい」「どうにかしなかといけない」と言う気持ちが募る。これが、免疫に立ち向かうモチベーションにも変わるのだ。

結論から言うが、この免疫マップは、ある意味かなり歪んだものである。過去の痛い経験によって、自分にとっての思い込み(強力な固定観念)が作られてしまい、全ての出来事をその思い込みを通して見るようになってしまい、世界を見る目が歪んでしまう。

この歪んだ思い込みに気づき、適切に修正することを、免疫マップワークショップではやっていく。

私がこの思い込み(強力な固定観念)を持つようになった過去の出来事

・小さい時、母が厳しかったので、母の思う通りにして、母を喜ばせようとしていた。その経験から、他者の反応が気になるようになり、人との距離感が掴めなくなっていった。

・小学校の時、「1番の親友」と毎日言い合っていた親友が、背が高くて格好良い転校生が来たら急に「あなたは2番目」と言った。「たった1日で人の気持ちが変わるんだ」と、恐怖を感じた。

・中学校の時、仲良し友達がある日から急に無視をしてきた。後で聞くと「いつもさきちゃんがニコニコして羨ましかったから」と言う理由だった。「人間ってやっぱり怖い」と思った。

・勤めていた会社がM&Aにより、不満や非難で溢れていた時、私は「社員エンゲージメントを高める」という特殊ミッションを担っていた。同僚に話せない秘密の仕事も多く「あいつは何をしているんだ」と私に対する否定的な意見を聞くこともあり、ぎくしゃくする人が増えていった。一人一人の笑顔のために必死で動き回っていったが、その過程で私は孤独になっていった。

筆者の、思い込みを持つようになった過去の出来事

会社での経験が決定打となり、「自分は愛されない」「世界は怖い、すぐ人を決めつける」という、強力な固定観念が生み出された。

深く刻まれた古傷が痛み続けるように、強力な固定観念は、様々な場面においても私に影響を与え、変化を拒むようになった。過去の経験が、自分の人生全てに当てはまるわけではないのに。

このように無意識に、自分にとって納得できる理論をつくりあげ、思考と体が支配されてしまうのが免疫の姑息で厄介なところだ。

強力な固定観念をどう変えていくか?

強力な固定観念は、「常に、どの状況でも正しい」と信じきってしまうことが非常に厄介なところなので、それが「いつ、どこで、誰と接する時に正しいのか」を、様々な行動を通して理解していく。

これが、ワークショップの「キモ」なのである。固定観念が本当に正しいのか検証行動を重ねることで、少しずつ免疫マップが変化していく。

自分1人でやろうとしても、どうしても狭い視点にハマってしまうため、この一連の流れを仲間と共に、人の視点を借りながらやることが大事なのである。ワークショップでお互いに行動の提案し合うことで、思いがけない視点が得られ、より適した行動が見つかったりもする。

(このnoteでは「行動」まで書くと長くなってしまうので割愛する)

私の免疫マップが様々な行動の結果どうなったか

現時点の免疫マップはこちら。

解像度が上がった現時点の免疫マップ(画像をクリックで拡大)

まだ変化の途中ではあるが、結論から言うと、そもそも私は全ての人と繋がりたいわけでなく、繋がりたい人と繋がることが大事なんだと気づけた。

また過去の仕事上の経験から強化された「私は愛されない」「人は怖い、すぐ決めつける」という思い込みは、当時の特殊な状況(お互いが担っていた仕事上の役割)が引き起こしたことで、個としての自分や相手が悪いわけではなかったんだ、と骨身に染みて理解でき、癒しに繋がったのである。

「私はこのテーマに関して、自分自身を変えるべきである」と自己否定ぎみに捉えていたのだが、「変えたいところ・変えられるところだけ、取り組めばいい」と心底、思えるようになった。気持ちが軽くなり、「変えたいところ・変えられるところ」に、より集中できるようになった。

免疫は必ずしも悪いものではない。この免疫があったからこそ、助かったこともたくさんある。免疫を敵ではなく味方にしたい、そんな風に今は思っている。

これらは、「免疫マップに沿った行動」を起こしたからこその結果である。

免疫マップワークショップだからこそ出来ること

免疫克服の旅は楽ではないし、短期間で解決するものではない。そもそも、免疫(固定観念)は絶対ゼロにならないし、一つの免疫が改善したと思ったら、また別の免疫が姿を現す。

大事なことは、自分の固定観念に自覚的になり、それが本当に正しいのか検証を繰り返していくことで、強力な固定観念が少しずつ変化し、支配力が弱まっていく。このプロセスによって、自分が歩みたい道を歩んでいくことが大事なのである。

免疫マップの良さは、「理論的に」免疫について理解していくことである。人が無意識に、全く理路整然としていないのに抱えてしまった思い込みを、理論的に対処していく。そして自分にとって本質的な変容に向かう。

これが免疫マップワークショップだからこそ出来ることなのだ。

免疫マップワークショップ 参加者の声

参加者のけいこさんの感想はこちらからも、ご覧いただけます。


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