音声SNS自由研究 | 「集まってる感」を表現するUIをまとめて、考察してみた
近年、音声SNSが盛り上がりを見せています。特に最近では、Clubhouseを筆頭に、さらに密なコミュニケーション手段を提供するサービスに注目が集まっています。
けんすうさんのnoteを読んで、テキスト→写真→動画→ライブ...のように、SNSがより密でリッチな方向に向かっている大きな流れにとても興味をもったので、
若年層を中心にユーザー数が増えている音声サービスを中心に、比較・考察をしてみようと思いました。
音声関連サービスはまだまだ勉強中なので(という言い訳をするために、"分析"ではなく"自由研究"ということにしています笑)、ツッコミどころあれば、ぜひぜひコメントください!
「部屋」という概念
これらの音声サービスには、"人が集まっているところ"を表す概念があります。Clubhouseで言うところの「ルーム」です。
その「部屋」を見つけるところから、入って退出するまでを、図にするとこのようなイメージになります。
SNSにおいて、この「ルーム」という概念は全く新しいものですはありませんが、テキストではなく音声を使ったサービスの傾向として、
「今」誰と誰が集まっているのか?
が可視化されるようになってきました。
【1】 部屋を見つける - "集まってる感"を可視化するUI
部屋に入るにあたって、中に誰が何人いるのか?何について話している部屋なのか?がわからないと、入室するハードルは高くなります(現実世界でも同じことが言えます)。
音声サービスが用いる「部屋」を現実世界で置き換えると、ガラス張りの会議室のようなイメージが近いかもしれません。部屋の中にいるので彼/彼女らの声は聞こえませんが、部屋の中に何人いるか・誰がいるかが分かる状態です。
この"部屋に集まってる感"を、各サービスがUI上でどのように表現しているか、また「部屋」をどのように呼んでいるかを集めてみました。
▼ Clubhouse
音声SNSのClubhouseは、"集まり"の概念を「ルーム」と名付けています。「Clubhouse」が元々「集会所」を表す単語なので、「集会所の中の部屋」がカード型のUIで表現されています。
「何について話しているルームなのか」という部屋のタイトルが上部に表示され、その下に最大2つまでのメンバーのアイコンと、参加者名が並ぶレイアウトになっています。
▼ Discord
もともとゲーマー向けに開発されたボイスチャットツールのDiscordでは、集まりを「ボイスチャンネル」と呼んでいます。それぞれのマイク(🎤)ビデオ(📹)の状態や、LIVE配信しているメンバーが居る場合はそのラベルも表示されています。
チャンネル名をクリックで即時入室でき、複数部屋が存在する場合、部屋をすぐに行き来できます。「チャンネル」というラベルではありますが、「会議室」や「喫煙所」のように、現実世界の空間の名前をつけて使っているコミュニティもあるようです。
▼ パラレル
Discordと同じように、ゲームをしながら話せる「パラレル」。こちらは日本サービスで、Discordよりスマホに特化しているようです。「ボイスチャットルーム」を略した「ボイチャルーム」が集まりの名前になっています。
ClubhouseやDiscordのように部屋をタップすると即入室、ではなく、「ボイチャルームに入室」というボタンが存在します。
▼ Spaces (Twitter)
Twitterのアプリ内で音声チャットルームを作れる「Spaces」は、現在テスト中の機能ではありますが、Clubhouseと類似した機能をTwitterのアプリ上でそのまま使えるということもあり、今後正式リリースに向けて盛り上がりを見せています。
去年リリースされたショートムービーが共有できる「Fleet」が表示される位置に表示されるようです。
Instagramの「LIVE」と「ストーリー」の関係性と同じく、ユーザーの「今」を伝える機能になっていて、こちらもアイコンで誰と誰が話しているのかがわかるUIになっています。さらに、異なる色やSpacesのシンボルを配置することでFleetと区別できるようにしています。
▼ Yay!
雑談通話コミュニティ「Yay!」は「通話」を通して繋がる、日本生まれのサービスです。ClubhouseやDiscordのように、友達とコミュニケーションをとるというより、趣味や年齢などの共通点から「友達を見つける」ことがアプリを使うメインを目的になっていて、より匿名性の高いサービスとなっています。
「ルーム」や「スペース」のような「部屋」を表す特定の名称は確認できませんでしたが、4分割した円に通話中ユーザーのアイコンが並ぶ見た目になっています。上述のサービスのようにエリアをタップすると即時入室するフローではなく、ポップアップで詳細が出るフローになっています。
▼ Spatial.chat
オンライン通話ツールの「SpatialChat」は、バーチャル空間で通話やビデオ通話が楽しめるサービスです。
一見Discord等の部屋のつくりと変わらないように見えますが、部屋の中での体験が大きく異なっています(後編に記載)。
各社UIの比較
ClubhouseやDiscordは、カード型UIにメンバーのアイコン・名前が表示されていて、外から見ても誰がどんな状態でこのルームに参加しているか(ミュートなのか、ビデオONなのか?)、がわかるようになっているUIを採用していました。
Spacesや、インスタLIVEは、プロフィールアイコンの丸いシェイプを重ねることでより視覚的に"集まっている感"を表現しています。Clubhouseのカード内のアイコンもアイコンが重ねられた表示になっています。
音声SNSではありませんが、常時接続型SNSの代表格とも言える位置情報共有アプリ「Zenly」は、実際に(物理的に)集まっている状態を炎(🔥)のモチーフを使うことで表しています。
Zenlyの公式ではこの集まりを「集会(英:Gatherings)」と呼んでいます。
それぞれのサービスにとっての、音声SNSとしてのポジショニングや、ターゲットとなる層に向けてどのように"集まっている感"を表現しているかが各社異なっていて、興味深いと思いました。
【2】 部屋に入る - 入室ハードルをいかに下げるか?
音声SNSは一般的に、積極的にユーザーが部屋をつくったり、参加することで活性化されていきます。
Clubhouseのようにルームをタップすると即時入室するフローになっている場合と、
パラレルやYay!のように「ルームに入室」と明記したボタンによってアクションが明確にされている場合があるという違いも見られました。
海外の新しめのサービスでは、このようなボタンを用いたラベリングは比較的少ない傾向にあることも分かりました。
特にClubhouseでは、「プッシュ通知をタップして即入室」のフローを導入している等、徹底的に入室のハードルを下げていることがわかります。
一方で、誤タップで意図せず入室してしまう可能性がある等、ユーザビリティに悪影響を与えてしまっている側面もあります。
したがって、必ずしもこっちのほうが良いというわけではありませんが、Clubhouseがサービスとして、より密で、素早い、リアルタイムなコミュニケーション手段を提供しようと試みていることがわかります。
【3】 部屋で話す - 部屋の中の構造
一般的なグループ通話のように、部屋にいる全員が発話可能なパターンと、いわゆる音声配信サービスのように、部屋の中で「スピーカー」と「観客」が分かれるパターンです。
図にすると下記のようなイメージです。
大まかに「通話目的」なのか「配信目的」なのか、でカテゴライズされそうです。
Clubhouse、Stand.fm、Zoomのウェビナーなどは配信の性質が強いですが、必ずしも一方通行のコミュニケーションなわけではなく、「手を挙げる」ことで「話し手になりたい」と表明することができる場合が多いです。
▼ 部屋の中にあるもの・ないもの
これらと比較すると、Clubhouseが他の音声配信サービスと変わらないように思えてきますが、他の音声サービスにあってClubhouseにないものが実はたくさんあります。
・テキストコミュニケーション
・画像や動画を使った表現
・「観客」のリアクションやコメント
これらの中には今後開発が予定されている機能もありますが、特に「観客」が手を挙げて選ばれない限り、発言・リアクションする権利が一切ない、という点は、他の音声配信サービスと大きく異なっています。
Twitterで「コメント機能をオフにする設定」ができるようになった流れと似て、「観客」より「話し手」の心理に寄り添った設計であると言えそうです。
▼ より現実世界に近い体験をUIに落とし込んだ "SpatialChat"
バーチャル空間で通話やビデオ通話が楽しめるサービス「SpatialChat」は、他サービスと比較すると、より現実世界に近い体験が部屋の中で表現されています。実際に部屋に入ってみると、中はこのようになっています。
左側の [S] アイコンが私なのですが、これまで紹介してきた音声サービスと違って、同じ空間にユーザーはいるのに、画像右側にいる、彼/彼女らが何を話しているかはこの時点では聞こえないのです(ネコの写真について話していそうだ、ということは分かりました)。
ここがSpatialChatの大きな特徴で、緑の○で囲っているエリアに自分のアイコンをそこに近づけることで、話を聞くことができます。
「近いと聞こえる、遠ざかると聞こえなくなる」という現実世界に近い体験を、平面のUIで表している点が他のサービスとは異なる特徴だなと思います。
【4】 部屋から出る - 空間を去る or 電話を切る
最後に「部屋から出る」アクションを各サービスがどのように表現しているかを比較しました。
大きく分けると、「退出」「退室」「Leave」など、「今いる空間を去る」ことを表現しているパターンと、「通話を終了する」を表す電話アイコンを用いているパターンの2つでした。
当たり前のように聞こえるかも知れませんが、プロダクトの前提に、そのコミュニケーションが「バーチャル空間上でのやり取り」なのか「通話」なのか、という点がこの「退室する」アクションに表れていると感じました。
Clubhouseは、「Leave」というワードを使っている点では前者に近しいのですが、細かく見ると2つ工夫されている点があります。
他サービスはドア(🚪)のアイコンを用いて「退室」を示しているところが多かったですが、やはり現実世界に置き換えても、みんなが話している最中に、その場を出ていくのは気まずかったりしますよね。
そんな気まずさ/申し訳無さを感じさせないよう、「バイバイ」のようにカジュアルな別れの挨拶を意味する「Peace out」を意味するピースサイン(✌🏾)を使うことで、細かなコミュニケーションにとても気を使っていると感じました。
また、Quietlyというワードチョイスも、「退室しても通知されたりしないよ!」という気まずさ解消への配慮を感じることができます。
このように、「退室」という一見地味なアクションも、サービスによってはかなり深く思考が巡らされていることが分かります。
【まとめ】 自由研究から学んだこと
これらのSNSによってコミュニケーションがより密になっていく中で、
心理的により安心してサービスを使ってもらう各社の配慮が随所に感じられ、とても勉強になる自由研究でした。
特に、Clubhouseからは学ばせてもらった点が非常に多かったです。実際にClubhouseでトークを聞いていて、ユーザーが
・コメント/リアクションの機能欲しい
・画像や動画をシェアしたい
・トークルームの絞り込みがしたい
・プッシュ通知でいきなりルームに入るのはびっくりする
といったように、他の音声SNSを比較して、Clubhouseの機能について話している場面が多く見られました。実際に私もユーザーとして、トーク中に同じようなことを思いました。
しかし、そこで「ユーザーの声が反映できていないからダメなプロダクトだ」と決めつけてしまうのではなく、
開発者がどのような哲学でプロダクトをデザインしたか?そのデザインでどのように私達の行動が変わったのか?を冷静に観察してみることで、
そのプロダクト切り開こうとしている新しい音声SNSの未来について考えることができました。
...とは言いつつ「音声SNS」と一言で言っても、奥が深すぎることに途中で気づき若干無理やり終わらせてしまった感があるので笑、
ユーザーとして各サービスを使い倒してから、また改めて考察にチャレンジしたいと思っています。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
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