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第六話 炎と光の奥義

アリスは聖剣を構え、魔神と化したガラフを睨みつけた。その体からは炎の魔力が湧き上がり、周囲の空気を震わせていた。一方で、聖剣からはリディアの力による神聖な光が放たれ、闇を切り裂くように輝いていた。
「アリス、この一撃で全てを終わらせるわ。」
リディアの声が、聖剣から力強く響く。
アリスは深呼吸し、両手で聖剣をしっかりと握りしめた。「分かったわ、リディア。一緒にやり遂げるわよ!」
アリスの足元から炎の魔力が渦巻きながら天に向かって舞い上がり、それが聖剣の光と混ざり合い始めた。炎の赤と光の金色が融合し、まるで太陽のような巨大な輝きを放つ。
「これが私たちの力…!」
アリスはその剣を天に掲げ、力を集中させた。
「『紅蓮光焔の裁き』…!」
アリスが叫ぶと同時に、炎と光が完全に融合したエネルギーが巨大な刃となり、空を切り裂いて魔神へと突き進んだ。
その一撃は、まさに破壊と浄化の力を兼ね備えていた。炎は魔神の肉体を焼き尽くし、光はその闇のオーラを浄化していく。
魔神は苦しげな咆哮を上げながら、全力で防御しようとする。しかし、炎と光の融合したエネルギーの前では、それも無力だった。
「グアアアアア…!」
魔神の姿が次第に崩れ、その闇の力が霧散していく。
攻撃が収まると、辺りには静寂が訪れた。アリスは聖剣を地面に突き刺し、息を整える。
「リディア、やったのね…。」
彼女の声には安堵と疲労が混じっていた。
リディアの声が優しく響く。「ええ、アリス。あなたの力がなければ、ここまでたどり着けなかったわ。」
爆発が収まり、辺りには静寂が訪れた。そこに残っていたのは、瀕死の状態で地面に倒れ込んだガラフだった。彼の体からは魔神の気配が完全に消え去り、かつての人間らしい顔つきが戻っていた。
「…俺は…何を…してしまったんだ…」
ガラフの声は弱々しく、瞳には後悔の色が浮かんでいた。
アリスは聖剣を手に、彼に近づいた。「ガラフ、あなたは魔神の力に頼りすぎた。その代償はあまりにも大きい…。」
ガラフは苦しげに顔を歪め、地面を拳で叩いた。「俺は…間違っていたのかもしれない。力を追い求めるあまり…全てを失った…。」
彼の目には涙が滲んでいた。「魔神に頼ったことで、私は自分の信念を捨てた。…愚かだった…。」
アリスはその言葉を静かに聞き、聖剣を握り直した。「もう終わったわ。これ以上、自分を責めないで。」
ガラフは弱々しく微笑みながら呟いた。「俺は、ここまでのようだ…」
静かに死を受け入れる覚悟をした。

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