第七話 救う覚悟、背負う代償
戦いが終わり、魔神の力から解放されたガラフが地面に倒れ込んでいた。彼の体はボロボロで、息も絶え絶えだった。その目には後悔と苦しみが浮かんでいる。
アリスは聖剣を地面に突き立て、ゆっくりとガラフに歩み寄った。
「アリス、何をするつもり?」
リディアの声が鋭く響いた。
アリスは聖剣を握りながら答えた。「彼を回復させるわ。このまま見捨てるわけにはいかない。」
リディアの声には警戒心が込められていた。「やめて、アリス。彼は魔神と契約したことで、まだその力が残っているかもしれない。下手に触れると、再び暴走する危険があるわ!」
アリスは一瞬立ち止まり、リディアの言葉を考えた。だが、彼女の目には強い決意が宿っていた。
「リディア、それでも私は彼を助ける。犯した罪は生きて償ってほしいの。」
彼女はそう言い切ると、聖剣を腰に戻し、ガラフのそばに膝をついた。
「アリス!」
リディアの声が再び響いたが、アリスは静かに呪文を唱え始めた。
「『聖光の癒し』…!」
彼女の手から放たれる優しい光が、ガラフの傷ついた体を包み込む。その光は彼の血に濡れた肌を癒し、傷口をふさいでいった。
ガラフの体が光に包まれた瞬間、彼の目がかすかに開いた。弱々しい声で呟く。
「…なぜ…俺を…助ける…?」
アリスは真剣な表情で答えた。「ガラフ、あなたの命を奪ったところで、本当の平和は訪れない。
ガラフはその言葉に驚いたように目を見開いたが、すぐに苦笑を浮かべた。「愚かな女だな…俺は敵だぞ…。それでも…?」
アリスは静かに頷いた。「あなた自身が過ちに気づいている。だから私は助けるの。」
ガラフ:「過ちに気づいた…?そんなことを言われても、俺はもう償いきれないほどの罪を背負っている…!」
アリス:「償いきれない罪なんてないわ。命がある限り、やり直せる。そのために生きて、平和のために力を使うべきよ。」
ガラフ:「生きて…平和のために…?俺が…そんなことを…。」
アリス:「できるかどうかじゃない。やるかどうかよ、ガラフ。生きることは、過ちを抱えながらも前に進むこと。だから、私はあなたに生きてほしいの。」
ガラフ:「…お前は…本当に愚かだ…。だが、なぜかその言葉が、心に響く…。私が、生きていいというのか…。」
アリス:「もちろんよ。あなたは強い人だから、きっとその力を正しい道に使えるはず。だから、生きて。」
聖剣の中でリディアはしばらく沈黙していたが、やがて静かな声で言った。「アリス…本当にあなたは優しい人ね。でも、その優しさがあなたを危険にさらすこともある。忘れないで。」
アリスは小さく微笑んだ。「ありがとう、リディア。でも、私はこの道を選ぶ。」
アリスは立ち上がり、ガラフに手を差し伸べた。
「これからどうするかは、あなた次第よ。」
ガラフはその手を見つめ、ゆっくりと掴んだ。彼の目にはまだ迷いが残っていたが、どこかに新たな希望の光も見えていた。