推しドラァグクイーンに出遭ってしまった🍎りんごないと vol.8 ➖不惑の余韻➖のこと🍎
2019年のNHK紅白歌合戦は、きーちゃん(こと氷川きよし様)が紅白二色の着物に身を包んで登場し、星野源はおげんさんに扮した後にピンク色のダウンを纏い、紅組トリのMISIAはLGBTQカルチャーとクラブカルチャーを大フィーチャーしたステージでレインボーフラッグを掲げて歌った。
この明確なメッセージ性についてSNS上では賛否両論巻き起こったけれど、テレビの前の私は「もしかして、ドリアン様が出演していらっしゃるのでは?!?!」と血眼になって画面上を探していた。
MISIAのステージ上のダンサーは、コーラスの星屑スキャットさんも含め、DJとダンサーが皆シークレット出演。
12月に国際フォーラムでのライブイベント「LIVE PRIDE ~愛をつなぎ、社会を変える。~」で、星屑スキャットさんとMISIAと(そしてユーミンも!)共演していた、ドラァグクイーン3人組ユニット八方不美人のメンバーの1人で、私の推しドラァグクイーン/ドリアン・ロロブリジーダ様が、このステージにシークレットで現れる可能性ゼロではないと思ったから。
🍎推しドラァグクイーンとの出遭い
2019年秋、新宿二丁目のクラブAiSOTOPE Loungeで開催された、椎名林檎様オンリーのオールナイトパーティー「りんごないと」。
以前から噂に聞いていて気になっていたけど、「一人でオールナイトイベントに行く」という行為がどうしても勇気が要って、なかなか足を運べずにいた。
しかし!御本尊(林檎様)アルバム発売記念の特番(『V.I.P.-椎名林檎-』スペースシャワーTV)で「りんごないと」主催者のドラァグクイーンの皆様が林檎様と共演されていた姿を見て、なんて素敵な人達なんだ〜この人達の姿を生で観たい…と強く思った→直近のりんごないとには、林檎様のライブに何度もダンサーとして出演されていたBambiこと仲万美ちゃんがゲスト出演されると知った→自分の健康状態・仕事の予定…等々様々な要因が良い方に重なって、単身・深夜の新宿二丁目に乗り込むことにした!
※イベントから帰ってきた早朝、興奮冷めやらぬまま描き殴った絵。
結果、行って本当ーーーーに良かったし、「もっと早く行ってれば…」とも思わない、今のこのタイミングがベストだった、今の自分に、ジャストフィットのイベントであった。
🍎其の夜
世界に名だたるゲイタウンの新宿二丁目の街を迷いながら探し歩き、やっと辿り着いたAiSOTOPE Loungeの、扉を開けたら丁度「獣行く細道」が始まったところ!この世は無常、皆んな分かってゐるのさ…!!!
会場は既にギュウギュウ状態で、林檎コスの人もいればグッズTシャツや和服(!ステキだけど大変そう)の人もいて、ニセ林檎とニセ宮本のデュエットで場内大爆笑ののち、ニセ宮本が増殖して3〜4人になった所で祭か?と思うくらいの大盛り上がり。林檎ファンしか乗ってない満員電車みたいだった…!
入るとまずラウンジがあり、廊下を通るとメインフロアに繋がっていて、メインフロアにはステージとDJブースがあった。メインフロアは撮影NG、ラウンジは撮影OKと分かれていた。
(ラウンジに掲示されていた、過去のりんごないとのフライヤー。ファンならすぐわかる味わい深いネタ満載)
メインフロアは基本的に、
●ステージで1組20〜30分のショーケース
↓
◇DJタイム(林檎関連楽曲オンリー)
※このDJタイム中、ステージ上ではドラァグクイーン達や万美ちゃんが出たり引っ込んだりして、好き好きに踊っているフリーなジユーダム空間。ステージに出ていない出演者は、サブフロアのラウンジに現れて撮影タイムもあったりした(ほとんどメインフロアにいたので、このシステムに後から気づいた!超悔しかったので、次回こそは撮影しまくりたい)
●と◇が一晩中、明け方まで交互に繰り返される。
観客はショーケースはじっくり観る感じで、壁際のソファに腰掛けたりしてる人も。
DJタイムでは踊ったり歌ったり(合唱)のこれもジユーダム空間。しかしカラオケと合唱コンクール以外で、他人と一緒にあんな大声で何曲も何曲も歌う(しかも声の限りに時折泣きながら)なんて今までの人生で初めての体験で、しかも周りにいるのは友達や知人ではなく、全員知らない人。で、かかる曲は全部好きな曲!
基本的にライブでは当然ながらあくまで「ステージ」を観たいし音楽を聴いていたいので、私はステージ上の人と一緒に歌うということはほとんどしない派。(林檎様以外のライブでも)
あと、スポーツ観戦もしたことないし、祭を観るのは好きだけど自分から大声出したりはしない。なので、この「何十人もの知らない他人と、爆音で好きな曲ばかりがかかる中、好きなタイミングで喉が枯れんばかりに歌う」ことの脳内麻薬爆発感はかなり強烈で、「これ宗教だったら入信しとるな」と思った。好きな曲を歌い続ける宗教…。
このショーケースで、仲万美ちゃんのダンス、CHIEさん・YU-TAさんのポールダンス、そしてドラァグクイーンの皆様の銘々選り取り全方位に趣向を凝らしたショーが観られた。
万美ちゃんのステージではワールドクラスの美しさと迫力(何せ御本尊との共演者ですからね…!)に圧倒されたけど、その後のフリーで踊る様子や、ラウンジで撮影に気さくに応じてくれる姿を見ていたら(この日唯一のツーショ嬉しかった〜)、底抜けに明るく朗らかで、大きな口開けてカラカラ笑う気風の良いお嬢さんで、クールでミステリアスなイメージは、この夜を境にガラッと変わった。DJタイムで「NIPPON」がかかった時、ちょうど万美ちゃんがステージにいて、ほらほら本家の振付やってよ〜!みたいな流れになったけど、「あれ?!忘れちゃった…」て表情で踊りながら思い出していってたのが、マンガみたいで可愛かった。
東京事変の「落日」で踊るポールダンサーの方の肉体美を観た瞬間「なんだこの意味不明な美しさは?!」と、今までの人生で感じたことのない種類の謎の感動に襲われボロボロ泣いた。(情緒…)
人間の肉体が極限まで磨かれて、その筋肉が妖しく光る照明とミラーボールに照らされて、繊細な動きひとつひとつを、あの大好きな曲が大音量でかかる中観てる…なんか凄いもの観てる…いま……て、泣いてた。
そしていよいよ推しドラァグクイーン様の登場…いや、実はこの日の時点ではまだ「推し」という概念が自分の中に生まれていなかった。
何故なら、出演されていたクイーンの皆様、本当に全員が、それぞれに美しくて超〜素敵だったから!
昔からずーっと「ドラァグクイーン」という男性と女性の境界線上に在り妖しく華々しいファビュラスな存在に惹かれ続けていたけれど、こんなにも汗がかかるぐらい近距離で、さすがにちょっと化粧も崩れてくるわってぐらいの長時間、同じ空間で見つめていたことはなかった。この日はじめて、幻想としてのドラァグクイーンでなく、自分と同じ人間の肉体をもった、同じ時を生きる生命体なんだと生々しく実感した。
おりぃぶぅさんの、多くの人の人生狂わせてそうな妖しい美しさ、深夜の東京、酒、女、男、薔薇…それらが煮詰められてスープになったみたいなステージ!
オクラ・ベジタブルさんの、剽悍な中にある哀愁!これから東京事変の「御祭騒ぎ」を聴いた時は必ず、あの独自解釈の阿波踊り的な凄いダンス(しかも真顔)を思い出すだろう…。「リモートコントローラー」でマジでリモコン超探してるのも良かった…!
そしてその中でも、ドリアン様に特に惹かれたのは…まず、背が高い!ガッシリ筋肉質!でも、メイク超〜〜〜綺麗!!!!!
で、踊っている時のノリ方が、他の人と全然違って、なんか凄〜〜〜くカッコ良かった(カッコ良すぎて語彙力死んだ)!!!!!
他の人は人間ぽい生々しさがあったけれど、一人だけ異次元からワープしてきたみたいだった。
クィーンの皆様は何度かお召替えをされていたんだけど、2008年の林檎博の衣装で現れた時は、え?!そこチョイスします?!?!と、度肝抜かれた。どう考えても難しそうなのに、再現度高かった!
はじめは2018年の林檎博衣装(Mステで林檎様が「正しい街」を歌った時、ファンへの取材コメントコーナーにこの衣装で出演されてました)、最後には2014年の林檎博衣装。赤いラインが入った、白い長ランをあの長身でクールに着こなしてて、はぁ、超〜〜似合ってたな〜〜〜(ひとしきり思い出にふける)。
この夜はとにかく出演者の皆様全員が素敵で、出来る限り全員を目に焼き付けたけれど、後からドリアン様のSNSやいろんな活動での写真を見るにつれてどんどん心の中で特別な存在になり、ずーっと画像集めてるし、レスリー・キー氏撮影のピンクヘア写真を速攻で待ち受けにしたり、インスタライブを楽しみにしたり…噫!これが「推し」という感覚ではないか…!
と、久々に思い出した。
幸いなことに、ドリアン様は冒頭に書いた八方不美人での活動や、YouTube番組や様々な企画出演など、静止画・動画コンテンツに不足することがない、ヲタクとしてありあまる富!
友達にドリアン様の話をして「理想ってこういうことなんだな〜私、こうなりたかったんだ…!って気づいたんよ」と言ったら「さきちゃんもドラァグクイーンメイクしたらいいじゃん!」と言われた。
あのメイクは確かにやってみたいけれど、それだけじゃないんだよな〜とも思った。例えば今から私が肉体改造して、すげえムキムキになってからクイーンメイクを施したとしても、なんか違う。
ドリアンさんの姿形も勿論最高なのだけど、あの肉体と、動いている時のグルーヴ感、所作の一つ一つ、そして声(声も肉体の一部!クイーンのショーではリップシンクなので歌声は披露されなかったけれど、素顔の活動で「マサキ」さんとして歌われている動画を見て、あまりの上手さにびびった。天は二物を与えすぎ!!そして八方不美人の活動でも美声が聴ける)の、全部が合わさったドリアン様が理想で、私が「こうなりたい」と願っていた姿なのだ。
三十七年生きてきて、他の何かになりたいとか憧れたこと、ほぼ無かった(自分に満足しているわけではなく、諦めが早かったのと、どちらかというと「人間以外のもの」になりたいと思っていたため。鬼とかね)。女性誌でよくある「なりたい顔」特集も、時々ある「1日だけ他人なるとしたら?」という話題も、意味はわかるけど感覚としてわからなかった。
でも自分がなりたい姿、他の誰かになりたいと強烈に憧れる感覚ってこれだったんだ!と、気づいた。
男でも女でもない、でもその両方でもある美しさを全身で表し、何より自分の美しさを誇る、自身を蔑むことを一切しない、堂々たる強さ。
🍎TOKYO事変
DJタイムでクイーンの皆様がステージで好き好きに踊っている時、「TOKYO」がかかった。
元々、最新オリジナルアルバム「三毒史」の中で一番好きだった曲。でも、あの日あの場所であのステージで演じられたのを観て、あの瞬間私の中で「TOKYO」が完成した。
何処にも繋がらない女の孤独/この世から消えてしまいたくなる焦燥/どんなに酒を浴びても忘れられない虚しさ。それらを言葉とメロディがガッチリ組み合い畳みかけてくるこの曲に乗せて、女と男の境界を生きるクイーンたちが、林檎様のコスチュームを纏って、真夜中のクラブで、生と性を漲らせていたあの表情あの光景を観て、「TOKYOの完成形、ここに在り…」と思った。