容量市場の価格予測
初めに
容量市場の入札が始まった。誰も容量市場の価格を予想していないようなので、大胆に予測してみる。
筆者は電力会社とは一切関係なく、発電事業者でもなければ、小売事業者でもない。
容量市場に入札したわけでもなく、内部情報を持っているわけでもない。
これは、ただの電力オタクの妄想だと思って読んでほしい。
容量市場は広域機関が決定した需要曲線と、発電事業者が入札する供給曲線の交点で決まる。
需要曲線は以下の通り。
https://www.occto.or.jp/market-board/market/oshirase/2020/20200603_youryou_mainauction_jyuyoukyokusen.html
発電目的で分類して入札価格を考える。
各種電源の入札価格予測
比較的新しい電源・相対契約済み電源は、容量市場の価格にかかわらず、発電し、供給力となることは確実である。
確実に容量市場からの収入を得る必要があるので、0円入札する。
電源I'は容量市場に移行することから、電源I'に入札していた電源やDRが容量市場の価格を決めることとなる。
電源I'には主にアグリゲータ(DR)と老朽電源が参加している。これらの電源の価格を予測する。
〇アグリゲータ(DR)
これまで電源I'に入札してきたアグリゲータは2024年以降は、容量市場に移行することから、入札をする。
・入札価格
アグリゲータは、参加する需要家に事前に営業をかけているはずである。おおよその収入の目安が無ければ、需要家への営業は難しい。
DRに参加する需要家側も、価格がいくらかわからなければ、参加の可否を判断できない。
これまでの電源I'の価格をベースに需要家に価格を提示していると思われる。
よって、アグリゲータが入札する価格も、電源I'と同程度ではないか。
・入札量
基本的に発動は4年後の契約をすることとなる。需要家が現時点で4年後にDRに参加できるかどうかを今判断するのは難しい。
工場などの大口需要家の場合、4年後の生産計画など全く決まっていないだろうし、4年後には工場が縮小や撤退の可能性もある。
現時点で、4年後のDRに参加することを確約することは難しい。
小口需要家でも同様で、一般家庭でも、4年後には引っ越ししている可能性がある。
アグリゲータとしては、入札量を決めるうえで以下の3タイプがあると考えられる。
・アグリゲータ タイプA
4年後のDR参加の契約を結んだ需要家の容量のみを入札する。
・アグリゲータ タイプB
4年後の見通しが見えない需要家に対して、とりあえずは4年後にDR参加ということで話を進め、2年後の実働テストまでに決断してもらう。
実働テストまでは、参加を取りやめてもよいという条件とする。
その条件をのんでくれる需要家分も含めて入札する。
・アグリゲータ タイプC
現在電源I'の契約している需要家及びこれから契約できるであろう見込みで、入札量を決める。
需要家と具体的な契約もなく入札する。
タイプAの場合、入札量はかなり減ると推測される。タイプBも多少減り、タイプCは現状と同じ量を入札する。
タイプAやタイプBのアグリゲータが多いと思われるので、アグリゲータの入札量は、これまでの電源I'の入札量よりもかなり減ると推測される。
〇老朽火力電源
電源I'に入札してきた電源は老朽火力が多いと推測される。これらの電源は電源I'と同程度入札されると推測される。
これらの電源は経過措置の対象である。経過措置では、これらの電源は落札価格から42%減額されて支払われる。現在の電源I'で入札した価格が設備を維持するための費用と考えると、電源I'の価格の1.72倍(1÷(1-0.42))で入札する。逆数入札は問題ないと整理されている。
電源I'の落札結果は公表されている。
https://www.emsc.meti.go.jp/activity/emsc_system/pdf/044_07_00.pdf
ここから、入札量と価格を推測する。
〇DR
入札量⇒減少する
入札価格⇒同程度(5,106円/kW)
〇電源
入札量⇒変化しない
入札価格⇒1.72倍 (6,302円/kW×1.72=10,839円/kW)
容量市場はシングルプライスなので、落札した電源の入札価格の最高価格が容量市場の価格となる。
よって、価格の高いほうの電源で決まると推測される。6,302円は平均価格である。
エリアごとの最高価格も示されており、北海道を除くと、高いところで8,000円ぐらいである。
8,000円に経過措置を考慮すると14,000円/kWぐらいになり、ほぼ上限価格(14,138円/kW)となる。
北海道の場合、23,294円/kWとなり、大幅に超える。北海道の電源I'平均価格が10,025円であり、経過措置を考慮すると、17,243円/kWとなり、上限価格以上となる。
一部の電源は容量市場からの収入が上限価格であってもペイしないこととなると予測される。(特に北海道が顕著)
しかし、供給計画に計上している電源は、入札せざる得ないので、上限価格で入札することになるであろう。
まとめ
容量市場の価格は上限である14,138円/kWとなると予測。
老朽電源が赤字覚悟で上限価格で入札し、落札容量は、需要曲線の上限価格での調達量になると思われる。
もしかすると、発電事業者は、上限価格以上のコストがかかることを理由に、容量市場に入札しないという判断をしているかもしれない。その場合、容量市場での調達量が大幅に不足する可能性もある。
このような入札行動をした発電事業者に対して、監視委員会はどのように扱うのかは不明である。
必要容量が不足した場合は、すぐに、もう一回するとはならず、制度を変更して、1年前の追加オークションでかなりの容量を募集することになるのだろう。
このような問題が発生する原因は、NetConeや上限価格は欧米の制度を参考にしながら検討していたが、日本独自の経過措置を考えていなかったことによる。
経過措置により、既存電源の入札価格が必要コストの1.72倍で入札したため、NetConeの1.5倍という上限価格を超えたと推測される。
ここまでは、容量市場の落札結果で着工の判断をする新設電源のことを考えていない。
新設電源のコストはNetConeの9,425円/kWであるとすれば、この価格で入札するので、ここまで価格は上昇しないとも考えられる。
しかし、容量市場の収入をあてにした新設電源はまだ入ってこないと推測される。5年ぐらいの価格推移をみて判断するのではないだろうか。
というのは素人の妄想で、そうはなら無いだろう。
電力・ガス等取引監視委員会や広域機関などは、ここで、書いたような情報よりももっと詳細な情報を持っているはずであり、その情報をもとにおおよその価格を計算したうえで、制度設計していると思いたい。
上限価格に張り付くような、イレギュラーな結果とはならず、容量市場がうまい具合に価格が決まることを期待したい。