【NY Nalata Nalata】「いいもの」の空間
10代の頃は、何でも多く持つことがステータスだった。
筆箱にはびっくりするぐらいの量のカラーペンが入っていたし、ファストファッションブランドで大量の服を買っていた。
しかし、私自身が歳を重ねただけでなく、「大量生産大量消費」の時代が終わりを迎え、今世界の流れが、「ミニマリズム」や「サステイナブル」に変わってきている。
私が、「本当にいいもの」への意識が高まったのは、大学時代に祖母からもらったカシミアのセーターがきっかけだった。祖母が数十年前に買ったカシミアのセーターたち。大切に保管して残しておいてくれたものを数点もらった。
最近では、カシミアも簡単に手に入るようになったが、カシミアにもランクが沢山ある。本当にいいカシミアは、軽いのにとっても暖かくて、上品だ。そして長持ちする。
私はそのカシミアのセーターたちを着て、ヨーロッパひとり旅に行った。自分への旅行のお土産に、パリのビンテージショップでセリーヌのスカーフを買った。
そこから先の大学生活では、全くと言っていいほど丁寧な暮らしができていなかったので本末転倒だった。しかし、ニューヨークにきてから大きくライフスタイルが変わり、「いいもの」を見直す生活の真っ最中にいた。
そこで偶然出会ったのが、Nalata Nalataという雑貨屋さんだ。
日本の繊細な雑貨に虜になったカナダ人のカップルがオーナーで、こだわり抜いて選ばれた美しいものばかりが並んでいる。
イーストビレッジの静かな通りの一角にあるこの店。見た瞬間から静かな佇まいに魅了され、入った瞬間から柔らかく開放的なその空間に虜になった。
オーナーさんたちの審美眼が光る美しい作品たち。ミニマルなインテリアに置かれ、余計な装飾はなし。作品が持つ本来の美しさが際立つ。
中には、日本の伝統工芸品なども。日本にいたら当たり前に見るようなものも、ここに並んでいると、ディテールの美しさに気づくことができる。
いいものを見ると、想像力が豊かになる。
このお皿であのお菓子を食べたいなとか、じゃああのお茶をいれようとか、そのために時間を使おうと考える。
いいものは、人生の中で特別な時間を与えてくれる。そしてその時間がより自分に喜びや幸せの瞬間を与えてくれる。
忙しい中で毎日、丁寧な時間を過ごすことは難しい人も多いかもしれないが、週に1度でもいいから、そのいいものを楽しむために過ごすことで、すこーしのときめきやきらめきを与えてくれる。
ここで言う、いいもの、とは、必ずしも高いものとは限らないし、人によって定義も様々だろう。私にとっていいものとは、作り手の思いが伝わったり、丁寧に作られていることが分かるものだ。
Nalata Nalataでは、その一つ一つのいいものたちが、大切にそこに置かれていた。目の前に並ぶ作品たちの、ここに来るまでの、そしてこの後のストーリーが目に浮かんできそうなほどだった。
学生の私にとって、ここに並ぶものたちは決して、簡単に手の届く範囲にあるものではない。でも、高いお金を出す価値があると感じる。
そしていつか自分がいいものだと感じ、心が喜ぶものに囲まれてすごしたい、その為に頑張ろうと思えた。
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