最高のインテリアの作り方 「スタイル」を理解する
この一週間で、すっかり「家にいろ」が合言葉になりました。
フルリモート生活が始まった人も多いかもしれませんが、自宅で長時間快適に過ごせていますか?
世界がこうなる前は出かけてばかりの生活だった場合、家は寝に帰るだけだからと時間とお金をかけず、「気づいたら家の中がニトリとIKEAと無印良品と100均のものばっかり」みたいな感じになっている人も多いのではないでしょうか。
「自宅は別に悪くはないけど、特別気に入ってもいない」
「素敵にしたくても、いったいどうしたらいいかわからない」
そんな人がいるんじゃないかと思って、この記事を書き始めました。
インテリアの実践的な情報がない
外出自粛生活がこの先どのくらい続くかわからないし、せっかく家にいるなら快適にしたい。だけど、ふんわりとしたイメージはあっても、それをどう実現すればいいのか検討がつかない。インテリアってだいたいそんな感じだと思う。
インテリアは参考になる実践的な情報が少なすぎると、私はつねづね感じています。
家具はひとつひとつが大きくて高額だし、ころころ替えられないからファッションのようにトライアンドエラーで試すのが難しい。しかも、雑誌やWebに載っている情報は、「ニトリ・ダイソー・セリア・無印活用術」のようなプチプラものか、「一脚20万のデザイナーチェア」といった、高級家具の両極端しかなかったりします。
欲しい情報がなかったので、自分でまとめてみる
私は、数年前までフリーランスで自宅でドレスを作る仕事をしていました。その後入社したインターネット企業でもリモートが日常的で、もともと家の中での遊びが好きだったのもあって、毎日長時間自宅で過ごすのが普通の生活です。
さらに、諸事情により家具総取っ替えの引っ越しが多かったので、何度もインテリアを0から作り直す機会がありました。長時間過ごすからには気に入った家を作りたくて、これまでに約10年間で7回、引っ越すたびに「お洒落な海外のインテリアがどのように構成されているか」を考えて試行錯誤してきました。
その変遷を書いたのがこちらです。ちなみにこれを書いたあとにもう一回引っ越したのが現在の家。我ながら引っ越ししすぎ。
その甲斐あってか(?)過去2回ほど雑誌にお部屋が載ったりもしました。
Pinterestで海外のインテリアを眺めて考えた
コーディネートについて考えるときの必須のサービスは、Pinterestです。
上のリンクは私がPinしたボード集。ここに集めたインテリアの写真は600枚以上、最近はPinterest上に見たことがないインテリア写真が少なくなってきたくらい。
そうやってたくさんの写真を眺めて、イメージしたものを求めてインテリアショップを巡り、何度も家のインテリアを作り直した結果、お洒落なインテリアに必要な要素ってこうじゃないかな、というのが自分なりに見えてきた、ような気がします。
せっかくこんな時期なので、何回かに分けてその考察を書いていきます。
今こそ、最高の家が必要だ
毎日のリモート生活で、殺風景な部屋に平日も休日も四六時中缶詰にされて、つらい気持ちになってきた人のために、ちょっとは役に立つといいなと思います。 自分の家をもうちょっと好きになれれば、「家にいるしかない」この状況を、きっと楽しく乗り切れる。
今このタイミングは、なんと「家にいることが世界を救う」のだから、どうせなら最高の家を作って過ごしましょう。
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インテリアの「スタイル」を理解する
インテリアについて調べると最初に必ず目にするのが、「モダン」や「北欧」といったスタイルの名前でしょう。この記事でも、まずはどのようなスタイルがあるかを知ることから始めます。ただし、単に代表的な写真を並べて、「はい、これがモダンインテリアですよ〜。」というような、よくある説明にはあまり意味がないと思っています。
そもそも、なぜコーディネートを始めるには、スタイルを理解することが必要なのでしょうか?それは、漠然としたイメージや印象をグルーピングし、抽象的な概念のまとまりとして共有することで、それらを再現したり組み合わせたりすることができるようになるからです。
あまりインテリアに馴染みがない段階で、漠然とした完成イメージそのままを参考として見せられても、大抵の人はそこから受け取れる情報量が少ないので再現できません。
たとえば、絵を描く時を考えてみてもらうとよいと思います。「猫の絵をなるべくリアルに描いて!」と急に言われても、絵描きでもない多くの人は猫の細部を観察して理解した経験がなくうまく思い出せないので、「猫っぽいふわっとした何か」しか描けないのです。
インテリアコーディネートは、空っぽの部屋という空間にモノを配置して、立体的な絵を描くような感じです。しかも、寝る・くつろぐ・ごはんを食べる・パソコンをする、といった生活をするための「インテリア用品」という決まった形をもつ切り抜きで作るコラージュみたいなものです。もちろんインテリア用品は、何かの雑誌で見ていいなと思ったものを、切り抜いてそのまま使うというわけにいきません。実際はイメージとまったく同じものが手に入ることのほうが少ないので、この「スタイルを構成する要素の理解度」が低いと、いつの間にか理想からかけ離れたアイテムを買ってしまったりして失敗することがあります。
予算が無限に使えるなら別ですが、限りあるお金でなるべく長く使えるものを上手に選ぶには、そういった失敗を避けるために「ある特定の印象を与えるスタイルが、どういった特徴のアイテムによって構成されているのか」をなるべく解像度高く理解する必要があります。
「質感」と「色合い」のマッピング
ということで、前置きが長くなりましたが、代表的なインテリアスタイルを、「質感」と「色合い」という居心地と見た目の印象を大きく左右する2つの観点でマッピングしてみました。
ここで挙げているスタイル以外にも、細かく分類していくとまだまだたくさんあるのですが、大まかなジャンルをMECEに分類するとこんな感じなんじゃないかな、と私の独断でピックアップしました。
「グラムスタイル」や「ボヘミアン」は最近確立されてきたジャンルなので知らない人もいるかもしれません。それぞれのスタイルが具体的にどんな感じなのかは後半で解説するので、まずはそれぞれがどんなテイストを作り出すのかイメージを掴んでもらえればと思います。
まずは「質感」です。上の表では、高級感 or くつろぎ、シンプル or デコラティブという2軸で、それぞれのスタイルを配置してみました。
「質感」とは、家そのものの内装や、置かれるインテリアの手触りや風合いのこと。どのような質感のものをどんなバランスで取り入れるかで、部屋の印象や居心地がかなり左右されます。
インテリアの話をするとまず色に意識が行きがちですが、色より先に重要なのがこの「質感」つまり素材だと思っています。
その次に考えるのが色合いです。その空間に使われる色は濃くて強いのか、淡く優しいのか。色数は少なくシックにするか、カラフルにするか。「何色を使うか」という選択そのものよりも、全体として色味のテイストをどこに合わせていくのかを最初に決めることが重要になります。
上の表では、それぞれのスタイルでスタンダードなコーディネートをする場合を想定してマッピングしてみました。
スタイルはミックスされる
一つのスタイルに決めたら、ブレずにそれを貫き通さないといけない、と多くの人は思っているかもしれません。しかし実際は、海外のインテリアデザインでは特に、一つのテイストでガチガチに揃えられた家は少なく、いろいろなスタイルが織り交ぜられています。北欧デザインの椅子やソファはあらゆるスタイルに使われているし、ミッドセンチュリーの照明なんかも万能選手です。
たとえばこういう北欧デザインのカウチソファや
こういうミッドセンチュリーの照明が
よく見ているとかなりいろいろなスタイルに使われていることに気づくと思います。
日本のインテリアはスタイルを1つに絞ってしまうからつまらない、というのが個人的な不満で、私はインテリアの一番の面白みは、基本スタイルを越境してミックスを楽しむこと、だとすら思っています。積極的にミックスしていきましょう。
上手な質感ミックス
ただし、質感をミックスするとき、ちょっとしたコツは必要です。どんなところに置いても馴染みがいいスタイルと、個性的で存在感が強すぎて馴染ませるのが難しいスタイルというのがあります。
まずは比較的初心者でも馴染ませやすいのが、先ほどあげた万能選手「北欧」と「ミッドセンチュリー」。逆に馴染ませるのが難しいのが個性の強い「クラシカル」「アジアン」「和」「カントリー」など、特定地域のカルチャーが強く出たものです。
たとえば、カフェ風インテリアの温かみがありざっくりしたイメージの中に、クラシカルなヴィクトリア朝の格調高い椅子を置くと、なじませるのが難しいというのは簡単に想像できると思います。うまいことやればめちゃくちゃお洒落になるかもしれませんが、プロに任せるならともかく、自力でセンスよく仕上げるのはそれなりの経験と試行錯誤が必要だと思ったほうがいいでしょう。ファッションの極端な「はずし」アイテムが上級者向けなのと一緒ですね。
まず最初のうちは、個性が強すぎないもの同士、マッピングが近いものをミックスさせるのが簡単です。もし遠いもの同士を合わせる場合、「つなぎ」役になれる万能な小物や素材をうまく使っていくことが大事になってきます。
また、スタイルの違うアイテムをミックスするときは、一つだけ違うテイストのものを入れ込むと浮いてしまうことが多いので、ある程度のまとまった分量を、部屋全体に対してバラバラに配備していくと落ち着いたりします。
上手な色合いのミックス
インテリアの色合いは、選択したスタイルによっては素材の色でおのずと決まってきてしまいます(和とかカフェ風とかがそう)が、基本的には質感よりはミックスの自由度が高いです。遊びゴコロ次第で、さっきの表のマッピングとはぜんぜん違うテイストの色合いに仕上げても大丈夫。
たとえばグラムスタイルという近年欧米で流行っているインテリアスタイルは、基本的には白っぽく淡い色合いにゴールドや鏡面加工、サテンやベルベット生地などの光沢感あるものでゴージャス感を出すのが主流です。
しかしベースはその質感のところに、ミッドセンチュリー風なインパクトのある柄やカラーをミックスしている例もたくさんあります。アメリカのデザイナー、ジョナサン・アドラーの邸宅なんかがまさにこの感じ。
このタイプのインテリアは、非日常的な未来感とゴージャスさの掛け合わせで、とてもインパクトがあって素敵です。(ただし日本の住宅でやるのは、天井が低いのと内装がチープなのでなかなか難しいし、居心地がいいかというと……。「魅せる」専用のインテリアかも。)
それぞれのスタイルに含まれる代表的な要素
ここからはやっと、各スタイルに使われるアイテムの詳細と全体像のイメージを解説したいと思います。なお、私はインテリアの専門家ではないので、すべて独断と偏見ですが、あしからず。
北欧
日本の住宅に一番よくあるのが、こういうなんちゃって北欧風スタイルだと思います。北欧を表すアイテムは、オーク材など白っぽくさらさらした木材を使ったシンプルなテーブル、樹脂素材のツルッとした印象の椅子、ウールやコットン、リネンといったざっくりした風合いの無地のソファやラグなど。
日本では、良くも悪くも全体がシンプルでザ!北欧といったコーディネートが多いのだけど、海外の北欧インテリアコーディネートは、完全に北欧づくしにするのではなく、ラタンやかごなどのボヘミアン(※後述)な要素を追加したミックスが多い模様。
タワマン系モダン
これも日本のインテリアにありがちなスタイル。なお、私はこういうタイプのインテリアはぜんぜん好きじゃない。だけどタワマンなど一部のマンションには、これしかない! というくらい確立したスタイルです。
つるんと加工された人工素材、鏡面加工、ダウンライト、なんか全体的に暗い、空間が広く窓がでかい、みたいな感じ。どちらかというと家具より内装に影響されるところが大きそうで、合わせるものも限られます。
あまり好きじゃないしこのタイプは世の中に他にもごろごろ見本があるのでさらっと次。
和
畳、和紙、竹、つるんとして曲線的な木材、違い棚やふすまなど。説明するまでもなく和です。これもさくっと次行きます。
カフェ風
タワマンではない普通の住宅暮らしだと、無難な北欧スタイルに次いでやりやすいのがこのタイプ。パイン材などざっくりザラっとした木材の椅子やテーブル、手作り感ある棚やカウンター、黒板、ホーローのキャニスターなどなど。大きい家具はほぼ木材になるので、色合いも全体的に明るめの茶色になる。
ミッドセンチュリー
お洒落インテリアの王様的存在、ミッドセンチュリーデザイン。言わずと知れたシェルチェアのイームズ、時計やベンチなど名作だらけのネルソン、チューリップチェアのサーリネン、スワンチェアやエッグチェアのヤコブセンなど、有名なデザイナーや作品をあげるとキリがありません。
代表的な素材は、つるんとした加工の美しいチーク材、カラフルなファブリック、どこか宇宙っぽさのある未来的な形状のプラスチックなどがあります。
棒の先に電球がついたスプートニクライトとか
細いアームが逆に存在感を際立たせているセルジュ・ムイユのライトとか
照明にも特徴的なものが多いですね。
書いている熱量からもわかるように、私は大好きなスタイルです。しかし問題は、リプロダクトではないオリジナル商品は数十万なんてざらで、値段が高すぎること……。
インダストリアル
工場っぽい無骨な雰囲気がかっこいい、ヴィンテージとか男前インテリアとも言われるようなジャンルです。最近のお洒落カフェなんかは軒並みこんな感じになっていますね。使われる素材は、コンクリート、レンガ、革、パイプ、アルミなど。建物の雰囲気に左右されるところが大きいスタイルなので、これを完璧にやりたかったらコンクリート打ちっぱなしで天井が抜いてあるようなお部屋が最適でしょう。
ただし、椅子だけ、テーブルだけ、など一部のみのミックスにも取り入れやすいスタイルでもあります。
ボヘミアン
モロッコのリヤドという、歴史的な邸宅を再利用した小規模宿があるのですが、その内装の雰囲気を引き継いだようなスタイルが、ボヘミアン。これもグラムスタイルと並んで最近欧米でとても流行っています。アフリカのテイストと西洋のテイストがミックスされた、自然素材でリラックス感あふれる印象です。
代表的なアイテムは、エスニックな柄ラグ、ラタンのテーブルや椅子、かご、マクラメ編みの小物、たくさんの植物など。
私はミッドセンチュリーに並んでこのテイストがとても好きで、真似しようとして家の中が観葉植物だらけになっています。
ミッドセンチュリーのサイドボードや椅子との相性も抜群だし、もう少しシンプルに北欧寄りに仕上げることもできます。
新しいスタイルなのでなかなか日本ではアイテムが手に入りづらいのですが、一般的な日本のマンションの内装にも取り入れやすいスタイルだと思うので、今後国内でももっと流行るといいな。
アジアン
ボヘミアンが適度にモダンなシンプルさを取り込んだスタイルであるのに対し、こてこての民族感を打ち出すのがアジアン。ここで言うアジアは主に東南アジアの雰囲気で、バリ島のリゾート地のイメージですね。
ウォールナット材やチーク材など暗めカラーの木材に、重厚な装飾が施された家具、かごやツボなど、全体的に「重さ」を感じると同時に、熱帯の屋外っぽさがあるというか、風が通る隙間を感じるようなデザインです。
クラシカル
ロココ様式やヴィクトリア様式、バロック様式といったヨーロッパのクラシックなデザインを引き継いだスタイル。ボタンバックの椅子やソファ、革やベルベットなどのつやつやとした素材、モールディング(壁や天井の装飾)や暖炉などが特徴的。アジアンがあったかそうで開放的なのと対象的に、寒い土地の密閉された部屋の家具という感じ。
完璧に作り込むのは日本では輸入住宅にでも住まないと無理なので、そうでなければ諦めよう。ただし一人がけソファだけクラシカルなものを、など、ポイント使いでいい感じのミックスになることもある。どうしても憧れがあるなら挑戦してもいいかもしれない。
グラムスタイル
冒頭のほうでも少し解説したが、近年アメリカなどで盛り上がっているスタイルがこれ。キーワードは「ゴージャス」。ゴールド加工や鏡面加工、サテンやベルベット、曲線的なラインの装飾家具など。「北欧のシンプルさには飽きた」「姫感のあるものが好きだけどクラシカルほどやりすぎにはしたくない」みたいな需要にマッチするスタイルだと思う。
日本の住宅では難しそうではあるけど、内装がシンプルで真っ白、とかならやりようがありそう。
カントリー
好きな人はめちゃくちゃ好きな、温かみのあるカントリースタイル。カラフルでキュートな東欧風、真っ白な木材にわざと使い古した加工をするシャビーシックなど派生スタイルも多い。すべてに共通するのは、ざっくりしたパイン材家具、丸みのあるかわいらしい印象の細やかな装飾、チェックや細かい花柄、タイル使いなど。
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ふう、やっと終わった。
細かい分類をしはじめるとまだまだありそうだけど、基本的なのはこのあたりで、あとは色使いや質感のミックスによって作り出される派生型かなと思います。
それぞれのスタイルについてなんとなくイメージを共有できたところで、次回以降はいろいろと例を紹介しながら、どのように自分の部屋に理想のスタイルを作っていくかを考えていきたいと思います。
もっと1回目はさらっと書くつもりだったのに、導入だけでめちゃくちゃ長くなりました……。
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それでは、また次回〜。
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