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「奥村厚一 光の風景画家 展」京都市京セラ美術館

2024.09.07

平安神宮のそばにある京セラ美術館。和洋折衷の外観が目を引きます。
現存最古の公立美術館であり、京都の景観を損ねないようにデザインされています。茶色のセブンなど、今にも引き継がれる古都のブランディングですね。

鉄筋コンクリートの上に和風の屋根を載せるスタイルは「帝冠様式」と呼ばれており、当時の人々の国家への思いが物々しい様式名に表れている気がします。

▽best

「雪景」
枝に積もる雪のデフォルメが美しい
必要最低限な影の描写も巧みです

京都観光中に思い立って足を運びましたが、見に行ってよかったです。京都生まれとのことで、没後50年、生誕120年記念の展示でした。
まろやかな色調と、品よくデフォルメされた独特な筆致が印象に残りました。

官展を舞台に

「初冬晴月」
枝の描写と雲の形が独特で、
どこかシュールな雰囲気でした

この頃は写生に基づいた堅実な描写をしていたそうですが、すでに独自性が滲み出ているのがわかります。特に樹木の描写にこだわりを感じました。

「林道」
生き物のように個性豊かな幹

創造美術以降

「黒潮」
有機的な波のゆらめき

画壇で地位を得ていたにも関わらず、日展を離れ、日本画の新しい時代を切り拓くために「創造美術」という団体を結成したそうです。
東京と京都の画家が集結したらしく、東西の協業だったんですね。

「海」
海の重たい青色と空の灰色が調和しています

この頃から、風景の一部をクローズアップした画角の絵が増えていったそうです。
ここが描きたかったんだな、と意図が見て取れる作品がたくさん並んでいました。

「浪」
チャレンジングな描写に
新しい時代を創ろうという意欲を見ました

風景と光

ポスターに「モネのように」とありますが、光と風景の組み合わせは早期からの重要なテーマだったようです。

「早春」
「夕映」

空気感にはリアリティがあるにも関わらず、細かい描写を見ると程よく省略されていることがわかります。

風景をぱっと見た時の第一印象をそのまま絵に落とし込んでいるように感じ、だから印象派のモネの名が出るのね、と納得しました。

「秋湖」
「橋立」
「湖光」

旅とスケッチ

とても山好きで、国内外さまざまな場所へ旅していたとのこと。絶景の壮大さは現地に赴かなければわかりませんよね。私はカナダのバンフでそれを痛感しました。

素描に関しては、デフォルメなどはせずに描いており、そのまますぎておもしろくないのではと心配していたそうです。
意図的に描写を抑えているわけではなかったことに驚きました。

「津呂岬展望(足摺岬)」
「山口県仙崎」
「瀧」
「春晴」
「山雲紅葉」
「花の原野(アラスカ)」

全体を通して自然に対する愛情や優しさを感じ、絵から受ける印象そのままの人柄だったのかなと想像しました。

風景画は、その人が世界をどのように捉えているかが特に表れやすい気がします。

京都観光の彩りが増えた展示でした。

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