平成17年度現代文(国家Ⅱ種)

受験生時代にお世話になった  代々木ゼミナールの堀木先生の現代文の読み方、「答えは、全て書いてある」をモットーに解いてみました。

問1 次の文の内容と合致するものとして最も妥当なのはどれか。

(歴史)には二重の意味がある。ひとつは書かれたものとしての(歴史)であり、もうひとつはそこに語られた出来事である。この出来事は言うまでもなく過去の出来事だ。その一方で(歴史)は記述されたときにはじめて成立する。つまり(歴史)が過去を設定するのである。ここにひとつのパラドクスがある。たとえばひとは(歴史)の意味のこの二重性のために、歴史が書かれる以前にそれは存在したからこそ、その記録として歴史が書かれるのだと。だが(歴史)の発端を考えてみればわかることだが、それがはじめて書かれた時(歴史)というものが発明された時期は、歴史のどこかに位置しているのだ。それ以前には(歴史)は存在しなかったのに、(歴史)はそれがすでに以前から存在していたものとして書かれる。たしかに過去はあった。だが(歴史)が書かれた以前には、過去の出来事は秩序立った事実の継起として定位されていない。(歴史)が書かれることによってはじめて、過去がある時間的秩序に基づいた過去として定位されるのだ。したがってある意味では、記述された(歴史)が遡及的に事実としての(歴史)を生み出すことになる。だから(歴史)は(歴史)自身を語り出すのだ。したがって(歴史)を書くということは、そのような意味で二重の設定行為であり、それも遡及的な効果をもつ、というのも(歴史)はつねに事後的に書かれ、そうして書かれることによって過去がはじめて、すでに起こったこととして設定されるのだから。

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