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【全文無料公開】自社の顧問税理士に疑問を持ったら読む本: -税理士の選び方と変え方、活用法までわかる1冊-

2022年にリリースしたKindle「自社の顧問税理士に疑問を持ったら読む本: -税理士の選び方と変え方、活用法までわかる1冊-」を一人でも多くの経営者に読んでもらうため、全文無料公開することにしました。Kindleにて購入(Kindle Unlimitedなら無料)することもできますが、この記事ですべて読むことが可能です。

はじめに

1000社の顧問税理士になってわかった驚愕の顧問税理士の実態

「私が思っていたより、ひどい税理士だったんですね」

これは、いままでの顧問税理士との契約を解消し、私の経営する税理士法人と契約されたとある経営者の実際の感想です。その経営者は、「税理士なんてどこに頼んでも金額くらいしか変わらない。税理士なら資格を持っているわけで、最低限のことはしてくれるだろう」。そう考えていたそうです。しかしながら、当税理士法人のサービス内容と報酬額を伝えると、目の色が変わり、すぐにこう言いました。

「いままでなんて無駄な費用を支払っていたんだろう。すぐにでも顧問税理士を変えたい」

もしかしたら、あなたも顧問税理士なんて、誰に頼んでもそれほど違いはないとお考えかもしれません。しかし、その実態は違います。わかりやすくあえてこう表現すれば、「ダメ税理士」と契約していることは、大きな機会損失であり、そして利益を失うことに繋がります。そして、残念ながらこの業界に優秀と呼べる税理士が決して多くないのも事実。もしかしたら、あなたも大きな損をしている可能性があります。

私は税理士事務所を開業して14年。現在は累計1000社を超える顧問契約を経営者と締結し、税理士としてのサービスを提供してきました。その中でも、「これまでの顧問税理士に疑問がある」「不満が大きい」という理由から契約をされる経営者は決して少なくありませんでした。

正直、これは断言しても良いかと思います。あなたはいまの顧問税理士で損をしている可能性があります。もちろん、満足のゆくサービスを受けていれば良いですが、前述のとおり、この業界はダメ税理士も多く、そして一度税理士と契約したら、ほかの税理士と比較することがないため、「そういうもの」と思いがちです。

そこで、本書ではあなたが顧問税理士に疑問を持っていたら、あるいは持つ前に改善できる点についてまとめました。税理士の顧問契約次第で、会社の業績は必ず変わります。本書があなたの経営をより良いものにするための一助になりましたら幸いです。

第1章 あなたの顧問税理士に、こんな疑問を持ったら危険信号

税理士の平均的な仕事ぶりはこんな感じ。あなたの顧問税理士は?

税理士の仕事と言えば、税金に関する相談や決算申告。このような認識が一般的です。ですから、税理士を選ぶときには税理士の人柄や実績、予算感などで選ぶことが多いと言えます。別の言い方をすると、実際に税理士と顧問契約をするときに、サービスの内容まで吟味した上で契約をするという経営者は意外と少ないものです。本書をお読みのあなたにも顧問税理士がいると思いますが、おそらくサービスの内容まで慎重に検討して決めたわけではないのではないでしょうか?

多くの場合、誰かの紹介やWeb検索などで税理士を決めます。そして先ほどのような曖昧な基準で税理士を決める。こうした流れが一般的ですが、これは大きな間違いです。税理士は国家資格のひとつなので、確かに知識的な前提は同じですが、税理士個人によってその能力やサービス内容は大きく異なります。「国家資格を持っているのだから、最低ラインの仕事はしてくれるだろう」という認識もありますが、これも間違いです。中には社会人としてのマナーに欠ける税理士もいるようですし、本当に税理士の個人差は大きいと言えます。

例えば、税理士の一般的な業務に試算表の作成があります。これは優秀な税理士であれば、1ヶ月後にはあなたのもとに報告が届いていなければなりません。あなたからの資料送付の状況によりますが、2ヶ月後や3ヶ月後に届くのはかなり遅い部類。試算表が遅ければ財務状況の確認や把握は遅れ、経営に支障をきたします。あなたの顧問税理士はどうでしょう。まさか試算表を送ってこないなんてことはないと思いますが…。

ほかにも、期首から九ヶ月が経過した時点で決算予想が届いているかどうか。これもベーシックですが、重要な要素です。この時期に予想が届かなければ、節税のしようがありません。このようなことができていない税理士には、少なくとも及第点をあげることは不可能です。

そのほか、優秀な税理士であれば、融資を含めた資金調達の相談もスタンダードに対応します。もし、あなたの顧問税理士が融資に関する相談を受けてくれないような場合は赤信号。融資に関する実力は、税理士個々人で大きな差があります。さらに、税務調査の対応やそもそもの料金表が不透明な場合も多く、顧問報酬の対価としてのサービスを受けられていない経営者が多いというのが実情です。

本書では、そんな顧問税理士への疑問を解消していきます。まずは、税理士と一口に言っても大きな差がある。これだけはまず絶対に知っておいてほしい事実です。では、具体的な解説を始めていきましょう。

試算表が遅れて届く税理士には要注意

試算表の送付時期については、顧問税理士への疑問が湧く…というよりは、これは疑問を持って頂きたい基本中の基本です。なぜなら、試算表の作成と送付については、税理士の最も基本的な業務であり、税務の基礎となるもの。つまり、この試算表作成業務ができていない場合には、即刻契約を見直す必要があると言えます。

前項でもお伝えしたとおり、税理士に資料送付をしたあと、優秀な税理士であれば1ヶ月後には試算表が届きます。会社の財務状況を把握するためには、試算表の作成はできるだけ早い方が良いのは言うまでもないことだと思いますが、この基準を知らされることはまずありません。あなたも顧問税理士と契約する場合に、試算表はいつまでに送るという契約はしていないでしょう。ですから、2ヶ月後に届いていたとしたらそれは税理士としては黄信号。それ以上なら赤信号。届いてなければ論外ということになります。

もちろん、あなたの会社が月次の経理資料の送付が遅れた場合はこの限りではありませんが、適切な時期に送付しているのであれば、1ヶ月後には届いていなければ、良い税理士とは言えません。試算表が遅れることで、会社の財務状況の把握は当然遅れます。1ヶ月の遅れが直ちに会社に致命傷を与えるものではありませんが、そこは塵も積もればです。そして、何より税理士としての基本中の基本である試算表作成業務ができていないということは、ほかの業務も疑ってかかる必要が出てきます。そのくらい重要な基準となる業務なのです。

あなたの顧問税理士は、どのくらいの期間で試算表を送ってきますか?もしかしたら1ヶ月後にきちんと試算表が届いている優秀な税理士と契約しているかもしれませんし、実はかなり遅いという事実に気づかれたかもしれません。こうした税理士の差は、複数の税理士事務所と契約してみないとわからないものです。ですから、「よくわからないけど、税理士の先生が言うならそういうものなんだろう…」と自己完結されてしまう経営者がほとんど。このように、試算表の作成のほか、税理士によってまるで能力もサービス内容も違うとお考えてください。

次項からは、さらに税理士の違いを明らかにしていきます。あなたの顧問税理士は、例えば「相談したら回答してくれるけど、基本何の連絡もない」、「納税額を決算期直前に伝えてくるだけ」、「経費をやけに厳しく考える」など、顧問税理士の行為や姿勢に疑問を持ったことはありませんか?実は、無駄に顧問報酬を支払っている場合も多くあります。ぜひ、次項以降を確認し、あなたの税理士が適正な仕事をしているか、きちんと確認していってください。

「先生は忙しい」は本当?レスポンスが遅いのは致命的

あなたの顧問税理士は、相談から回答までにどのくらいの時間がかかっていますか?このレスポンスの速さというのも、重要な要素です。「即レス」という言葉は一般的な言葉になりましたが、この本質を理解している人は優秀な税理士といえるでしょうし、レスポンスにストレスがある場合には、強く疑問を持った方が良いといえます。

税理士は確かに「先生」と言われる職業です。ですから、これまでの流れは「先生にお願いする」という趣旨が強いものでした。そのため、顧問税理士の事務所に連絡をしても「先生は忙しいので、追って折り返します」と職員さんに言われてしまう始末。でも、そんな「先生」だから仕方ない、と引き下がってしまう経営者は、いまでも多く存在しています。

しかし、いま税理士は全国で8万人近く存在する職業です。「先生という稀有な存在」とは言えません。経営者側からお願いするというものではなく、フェアに事務所を選ぶと考えるべきだと私は考えます。このスタンスで考えると、レスポンスは極めて重要な課題です。

例えば、あなたの税理士がレスポンスについてどのように理解しているか。前述のとおり、これは優秀な税理士かどうかを見分ける一つの基準となります。原則として、優秀な顧問税理士は「即レス」を心がけます。しかし、これは「クイック・レスポンス」であって、「クイック・アンサー」ではないことをきちんと理解していることが重要です。

顧問税理士への相談は、時に問題が難解で回答までに時間がかかることがあります。それがある意味では専門家と言われる所以ですが、例えば相談のメールを受信したときに「メール確認しました。相談まで2日間のお時間をください」とすぐに返信が来るのであれば、これは合格点です。これなら、いつまでに返信が来るかわかるので、経営者側もその後の計画なども立てやすいでしょう。一方で、相談メールを送るも2日後に回答と合わせてメールの返信が来た場合。これは確かに前者と同じ結果でも、2日間はこちらも動きが取れません。このように、即レスとは相談に回答することだけでなく、メールならばメールを受信して回答までにどのくらいかかるのかをすぐに返すこと。難しいことを相談するわけですから、クイック・アンサーでなくても良いわけです。この本質を理解している税理士とは、コミュニケーションエラーが起こることも少なく、スムーズにことを運ぶことができます。

あなたも「うちの先生、いつも返信遅いなぁ…」と感じることはありませんか?コミュニケーションエラーの蓄積はストレスと事故のもとです。ぜひ一度、あなたの顧問税理士のレスポンスについて、確認してみてください。

「税金の相談には乗ってくれる」はダメ税理士の典型

税理士の普段の仕事とはなんでしょう。もちろん、税務会計の仕事を行うのは当たり前です。あなたが毎月資料を送付し、試算表を作成する。そして決算期には書類や資料をまとめて決算申告をする。これは顧問税理士と契約をする以上、最低限行ってもらう仕事です。もちろん、契約の内容によっては自計化といってあなたの会社で経理を行い、そのチェックだけ顧問税理士に任せるというかたちもありますが、日々の税務と決算申告に関わるということに関しては、異論がないところでしょう。

では、あなたの顧問税理士はそれ以外のことについては、どうでしょうか?もちろん、税務上で疑問が出た場合には相談したりしていることでしょう。それもひとつの税理士の役割です。でも、あなたの顧問税理士、相談と申告だけで終わってしまっていませんか?

「顧問税理士から何も提案がない」というのは、よく耳にする言葉です。私がこれまで税理士事務所を開業して14年。本当にこの言葉をよく聞いてきました。様々な経営者と対峙し、またほかの税理士を見る中で、優秀な税理士であれば提案があるのが大前提です。

例えば、融資。無借金経営主義の経営者もいますが、やはり資金繰りを考えるのは顧問税理士の重要な仕事だと私は考えます。一番近いところでクライアントの財務状況を見ているのですから、借りやすい時期や借りるべきタイミングを一番心得ているのは顧問税理士です。ですから、適切な時期に借り入れの提案をすることなどは優秀な税理士のひとつの条件だと言えます。融資は決算書や試算表の評価が高いときでないと難しいため、タイミングを逃して赤字を出してしまうと、借り入れが当面厳しくなることもあります。そのため、借り入れの提案は極めて重要な仕事と言えます。

あるいは節税。期首から九ヶ月経過頃に、利益と納税額の予想を報告するのは大前提として、ここからどのように会社にお金を残しておくかということも、重要な課題です。「会社にお金を残すのに一番重要なのはきちんと納税すること」といって、何も考えずに多額の納税を促す税理士もいるようですが、やはり会社の状況をよく見れば、保険の検討など利益を上手く残す方法はいくらでもあります。こうした都度の提案がない顧問税理士には、やはり強い疑問を持った方が良いでしょう。

別の指標を伝えるとすれば、「その顧問税理士との契約で、会社に残るお金は増えたか?」と言い換えることもできましょう。あなたの顧問税理士が、会社の利益を増やすための提案をどれだけしてくれているか?もし、何も提案がないのであれば、残念ながらあなたの会社のお金は減っていってしまっているのかもしれませんね。

あなたの顧問税理士のDX意識はどの程度?

これは税理士だけでなく、士業全般に言えることですが「ITリテラシーが低い」と言われることが多々あります。もともと士業は平均年齢が高く、中には八〇代まで現役で仕事を続ける先生もいらっしゃいますので、ある程度の部分は確かな事実であり、致し方ないことなのかもしれません。

しかしながら、人工知能(AI)、クラウドサービス、RPA(Robotic Process Automation)、DXなどが叫ばれ、すでに実生活や経営にも導入されている中、「ITはちょっと苦手で」という顧問税理士には、やはり疑問を持つべきです。

業界の恥部を晒すようですが、いまだに電話とFAXを中心にクライアントとコミュニケーションを取る税理士事務所もありますし、中にはこの時代に帳簿を手書きで行っている事務所もあるとか…。あなたの顧問税理士はいかがでしょうか?顧問税理士の希望する連絡手段に合わせてしまってはいないでしょうか。

税理士事務所がこうしたITツール類に対応することは、もはや「特長」ではなく最低限です。例を挙げるなら、ZoomやTeamsを使用したオンラインミーティング。LINEやChatWork、Slackなどのチャットツール。こうしたツールはひと通り使えて当然と考えるべきです。あなたも、「できればこのツールを通じてやりとりしたい」という連絡手段があると思います。そこは、顧問税理士ではなくあなたに合わせる事務所が、良い事務所だと言えるでしょう。

ツール類だけではありません。本職の会計も同じことが言えます。「freee」などに代表される「クラウド会計」と呼ばれるタイプの会計処理も一般的になっています。クラウド会計では、インターネット環境さえあればどこからもアクセスでき、パソコンだけでなくスマホでも活用できる、いまの時代に適した会計システムです。データの自動取り込みなどが可能なシステムもあり、これによってよりリアルタイムに会社の数字を把握することが可能になります。

もし、あなたの顧問税理士がこのようないわゆる「DX」に消極的である場合には、やはり強い疑問を持つべきです。いつも電話の折返しを待っている。連絡はメールだけ。時にFAXで資料を送信しなければならない…というのは、長く会社経営を行う上で多大なるストレスになります。いま、当法人でも先駆けて導入していますが、税理士業界ではRPAというパソコン上で動くロボットシステムなども導入が始まっています。高度化する会計処理の中、きちんと情報を仕入れて対応してくれる税理士。それが常に近くにいてほしい顧問税理士の姿なのではないか、と私は強く考えています。

「税金以外の相談は専門外で…」という税理士の本音

税理士のメイン業務は税務、税金に関すること。これは説明したとおりです。そのほか、なんとなく「お金」周りの相談をしても良いのかな…どこまで相談して良いのだろうか。このあたりは経営者の抱える疑問なのではないでしょうか。

優秀な税理士かどうかを見分けるひとつのポイントとして、幾度か挙げさせていただいた融資に関する業務があります。この融資に関する相談をきちんと受けてくれるかどうか。これは顧問税理士として私は絶対に必要な条件だと思いますし、これまでも数多くの融資に関わる相談を顧問先から受けてきました。

私は税理士たるもの、クライアントの利益を最大限に。資金繰りを常に良いものに。綺麗事ではなく、本当にそう考えております。言うまでもなく、クライアントの利益があるからこそ税理士報酬があるわけで、クライアントのお金に関して私たちはいつも真剣です。ですから、こういった融資に関してもむしろ積極的であるべきと考えて事務所を経営してきました。

ところが、実際に他事務所の話を聞いているとそうではないようです。融資に関する相談を顧問税理士にしたところ、「融資は専門外だから」と他のコンサルタントなりを当たるようにと言われてしまったという経営者もいました。この経営者は、私の事務所では積極的に資金繰りの相談を行っていると言うと、ぜひお願いしたいということで顧問税理士を変えることになったのですが、これまで融資について独学で行っていたというから驚きです。

ほかにも例えば節税について。税理士であれば、保険などの一定のスキームは知っておくべきと私は考えています。もちろん、そういった専門家と提携して、必要に応じて紹介するなどの体制でも対応できますが、やはり知らないといつ紹介すれば良いのかがわからず、結局節税ができないこともしばしばあります。ですから、少なくともお金周りのことであれば、「専門外なので」と断る顧問税理士は論外と言って良いでしょう。

本当に税理士によって、能力や提供サービスは異なります。多くの経営者は、一度税理士と顧問契約を締結すると、よほどのことがない限り、税理士を変えようとは思いません。それは、「他事務所と比較する」ことがないため、税理士のサービスとはこういうものかと疑問があっても、「こういうものか」と自分を説得してしまうことが多いからです。

本書のとおり、税理士の個人差、事務所差は大きな違いがあります。続いて、税理士の見極め方を深めていきましょう。

税務調査のときに、顧問税理士の本性は明らかになる

税務調査のときの対応も、税理士としての実力が浮き彫りになるシーンです。税理士であれば、税務調査のときに税務署と戦ってくれるだろうと思いこんでいる経営者も多いのですが、これも税理士個人の実力差が大きく出ます。実力差と、「スタンス」も如実に出ます。

スタンスとは何かというと、その顧問税理士が「税務署寄り」か「クライアント寄り」かということで、この話をすると「えっ、税務署寄りの顧問税理士なんているの?」と言われることもあるのですが、実際はかなりの数の税務署寄りの税理士がいるようです。

これはそもそも、「税理士という資格を税務署から与えられている」という感覚を持っている人がいることに起因しているようです。自分の大親分だから、逆らわないようにしよう。だから税務調査で否認され、追徴課税を指摘されたら「言う通りにしましょう」というしかないわけです。しかし、あなたがどうせ顧問税理士と契約するなら、戦ってくれる税理士を選びたいはずです。そこで重要なのが、「先生はどう思うのか?」という質問をすること。

例えば、明らかに経費にならないものは別として、私たちが一番気になるのはいわゆる「グレーゾーン」に関わる経費です。これは経営者のスタンスにもよりますが、経営者の本音としては、グレーゾーンで可能な範囲であれば、攻めの姿勢を持ちたい…というところではないかと思います。

もちろん、私たちは脱税のお手伝いはいたしませんが、やはり経費算入できるものならば、それにはチャレンジしたいと考えています。これが、「税理士としての意見」です。ところが、税務署寄りの税理士に相談すると、こんな感じで回答されます。「それは、税務署は認めてくれないでしょう」「税務署がなんて言うか…」このような感じです。つまり、自分の意見よりも税務署を中心に考えている。そして、「税務署が認めない」と言えば、これは水戸黄門の印籠のようなもので、経営者としては何も言えなくなってしまいます。こんなときは、「先生の意見はどうなんですか?」と税理士個人の意見を聞いてみると良いでしょう。そこできちんと自分なりの見解があれば及第点と言えますが、税務署の言う通りになっているような回答であれば、顧問契約は見直した方が良いのかもしれません。

ちなみに、税理士だからといって、税務調査対応が必ずできるかといえば、そうでもありません。開業した税理士のほとんどが、前職も税理士事務所になるのですが、前職に経験を積んでおかなければ、開業後は未経験のまま税理士事務所を開業することになります。これも税理士に対する思い込みです。繰り返しになりますが、「税理士」とひとくくりにできるものではないのです。

毎年担当が変わる顧問税理士は要注意

あなたの契約している税理士事務所が、例えば10名を超えるような中規模以上の事務所だとすると、所長の税理士以外にも担当がつくことがあります。きちんと組織化されていれば良いのですが、多くの場合あまり上手くいっていないと聞きます。

税理士事務所がクライアントに担当を付けるのには、いくつか理由があります。まずは所長である自分自身で見られる限界があるためです。個人で数百の会社を見ることなど、不可能です。そのため、税理士事務所は成長していくと担当制になります。もし、あなたの担当が代表税理士でなくなった場合。あるいは最初から担当だった場合、下記のような点に気を付ける必要があります。

まず、担当者のレベルです。理想を言えば、担当が税理士であっても無資格者の職員であっても、代表税理士と変わらない実力を持っていてほしいものですが、代表税理士は優れているからこそ組織化までできるわけで、同レベルの水準を求めるのは難しいと言えます。しかし、だからといって「何もできない」担当者かどうかは見極めるべきですし、疑問を持った方が良いといえます。単なるお使いになってしまっていて、そのお使いすら満足にできないのであれば(伝言等が上手くいかないなど)、大きなストレスです。ここも「そんなものか」と思わずに、あなたの理想を追うべきです。場合によっては、代表税理士に直接相談したい場合は、組織化された事務所より、個人事務所の方が良い場合もあるわけです。

一方で、担当者がそれなりに優秀なレベルだったとしても、担当者が毎年変わるような事務所には注意が必要です。これも「そういうものなのか」と自分を納得させることなく、疑問を持ちましょう。担当者が変わっても、きちんと引き継ぎされていて、スムーズにやりとりを再開できるならまだしも、中には引き継ぎが行われずに担当者が変わるケースもあると聞きます。そうなれば、あなたがもう一度会社の会計について説明しなければならず、これも大きなストレスになるはずです。

なお、担当者がコロコロ変わるということは、その税理士事務所の組織化が上手くいっていない可能性もあります。離職率が高いのかもしれないし、教育制度が整っていないのかもしれない。税理士に経営の相談まで求める場合は、急成長した税理士事務所が適任と言えますが、急成長していたとしても、高い離職率であれば消耗する経営になっている可能性がありまず。このあたりも、顧問税理士を見極めるひとつのポイントといえるでしょう。

顧問税理士に関する疑問はすべて解消しよう

さて、ここまで一部分ではありますが、顧問税理士に関して持った方が良い疑問点について、解説してきました。結論から言えば、顧問税理士は誰に頼んでも同じではないということ。そして、税理士事務所の選択ひとつで、あなたの経営は大きく変わるということです。

経営者は会社をつくり、顧問税理士は必要なものと考え、まずは税理士を探します。多くの場合、知り合いに聞いて紹介してもらう。あるいはネット検索で探して検討する。こんなパターンがほとんどのはずです。場合によっては、複数の事務所を比較した上で税理士を決められた賢明な経営者もいると思いますが、多くの場合、人の伝手や料金のみで決めてしまうことがほとんどです。

特に人の紹介で決めた場合、税理士に疑問を持っても変えにくいと思います。そこには人間関係があるので、なかなかすぐに解約はできないはずです。そこで、第二章では、現在の顧問税理士を改善する施策をいくつか掲載させていただきました。まずはいまの顧問税理士への疑問を解消し、改善できるのであれば、契約を続ける。そうでなければ、別の税理士に変える選択をすれば良いと思います。

具体的な税理士の変更方法などについては、第3章に収録していますので、ぜひお役立てください。では、第2章の改善方法に移りましょう。

第2章 顧問税理士に疑問を持ったときの対処法

試算表が遅れたときの対処法とその影響

まずは試算表の作成と送付が遅れることについて考えてみましょう。これには二つの側面があります。まずひとつは、試算表の作成と送付が遅れることは、あなたの会社の財務状況の把握が遅れ、ひいては資金繰りや経営に大きな影響が出るという点。ふたつめは、顧問税理士のスタンスの問題です。

経営が順調にいっているときには、試算表の遅れなど気にならないかもしれません。しかし、こうした小さな遅れの積み重ねが、経営の綻びになることは決して少ないことではありません。例えば、会社の預金残高なども急に底をつくということはまずないでしょう。しかし、会社経営も家計も、ちょっとしたお金の使用が重なって残高を目減りさせてしまうものです。会社のクレジットカード使用なども、驚くほどの請求額が来て「これは不正利用されたに違いない」と再計算するとぴったり使途と金額が合っていたりする。こういうことは、よくあることです。こうした日常の資金繰りの中で、試算表の作成が迅速にできていて、税理士が気付く人材であれば、外注費が少しずつ増えているとか、事前に対策を講じることが可能になるわけです。

まずは、試算表の作成と送付の遅れが、徐々に会社の財務の破綻に繋がるということ。これを意識してください。逆に言えば、ふたつめの側面として、これほど重要な業務の遅れを出すという顧問税理士には、やはりプロの税理士として疑問を感じます。

もし、あなたの顧問税理士の試算表作成と送付が遅れている場合には、とにかく期限を決めてきちんと報告するよう、必ず伝えてください。特に融資を受ける場合など、すぐに試算表が出てこないのは致命的です。例えば、あなたもご存知かと思いますが、金融機関から融資を受ける場合には、2期分(または3期分)の決算書と直近の試算表を求められることがほとんどです。余裕を持って融資を受けられる場合には、のんびり顧問税理士に試算表を出してもらえれば良いですが、例えば金融機関の都合でできるだけ早く融資を実行したいとき。あるいは、あなたの会社ができるだけ早い段階で融資を実行してほしいなど、税理士の試算表待ちになってしまっていたら、本末転倒です。本来、こうしたお金の面でのプロとして普段契約しているわけですから、このような状況では逆に足を引っ張っているとも言えてしまいます。

試算表の遅れの蓄積は、最終的に取り返しのつかないことにつながります。もし、あなたの顧問税理士がこうした遅れている状況であれば、できるだけ1ヶ月後に納品するよう、強く伝えるべきだと私は考えています。

顧問税理士のレスポンスを早める方法とは?

顧問税理士のレスポンス意識を変えることは、決して簡単なことではありません。このコミュニケーションの時間感覚は本当に人それぞれで、「即レスを心がけている」といっても、そこまで早くなかったり、逆に「普通」という税理士でも案外レスポンスが早かったりすることがあります。

まず、コミュニケーションツールの選択については、顧問税理士に迎合する必要はないと私は考えています。これだけ便利になった世の中です。LINEやChatWork、Slackなどのチャットツールはやはり便利ですし、ZoomやTeamsなどのオンラインミーティングならば場所を問うことなく打ち合わせが可能ですし、このあたりはしっかり使えるようになってもらうべきだと私は考えます。

顧問税理士が電話主体の場合で、あなたが電話でのコミュニケーションでなく、LINEで連絡を取り合いたい場合には、もう電話をかけることと電話を取ることをやめてしまいましょう。例えば、LINEで相談事項を送ります。回答は電話でかかってきても、その電話は取らずに、LINEで返信をします。「いま、電話ができる状況ではないので、LINEでお返事いただけますか?」といって、常にLINEならLINEでやりとりする癖付けをしていきます。税理士としては、電話が通じないのであれば仕方ないとLINEで返信するしかなくなるわけです。このような流れでまずはツール定着を狙います。

レスポンスを早めてもらうには、やはりLINEの既読機能のような同期するツールである程度せっついていくのがベストでしょう。チャットツールとしてはChatWorkなどもありますが、ChatWorkは非同期ツール。相手がメッセージを読んだのかどうかすらわかりません。これに対して既読機能のあるLINEであれば、コミュニケーションが同期するので、ある程度レスポンスを早める理由になります。

もし、あなたがいまの顧問税理士とこれまでと変わらず仲良くやっていきたいということであれば、「税理士を育てていく」という感覚を持つのもひとつの考えです。最近のコミュニケーションツールを覚えさせる…と言うと偉そうですが、上手くコントロールしていくくらいの感覚は必要でしょう。基本的に税理士など士業はプライドの高い人が多く存在します。ということ、税理士の至らなさを責めたり、他事務所と比較して貶めるようなことをすると、サービスの品質を落とされる…なんてこともあるかもしれません。もっとも、クライアントの期待に応えてこその専門家ですから、あまりにもこちらからの要望に応えてくれない場合は、どこかで見限るという判断も経営者ならば持っておくべきでしょう。

税金以外の相談、または提案がない税理士にはどう対処すべきか?

基本的に、税理士だけでなく士業全般が受け身の職業です。「相談業務」や「受任」、「依頼」という言葉が使われるように、「何かあったら動く」というのが基本スタンスの税理士が大多数を占めると言えるでしょう。

ですから、こちらから何も言わないと本当になにもしない税理士も多数存在します。あなたの顧問税理士はいかがでしょうか?ただ試算表を送られ、年に一回決算申告のときだけ、必要に迫られて面談する。こんな「待つだけ」の税理士になっていないでしょうか。

普段から提案しない税理士に、改めて提案をしてもらうというのは、なかなか大変なことです。前述のように基本的に「待ち」のスタイルの場合、あなたの会社を気にかけ、必要に応じて提案をするというのは、ただ「何か提案してください」と言っても、何も変わらない可能性が高いと言えます。

この提案を普段しない顧問税理士には、目的とポイントを絞って依頼するのがコツです。「何か提案してください」では、この手のタイプの税理士はなかなか気づけません。そこで、むしろ顧問税理士をこちらでコントロールするくらいの気持ちで対峙していくことが重要になります。

例えば、節税に関して提案をしてほしい場合。期首から9ヶ月後に利益予想があるのが前提ということを第一章で解説しましたが、これも待つのではなく、経営者側からコントロールしていきます。「そろそろ決算期が近いですが、今期の利益予想はどのくらいになりそうですか?」とこちらから把握しにいく。そこで上がってきた利益予想に対して、例えば「利益が500万円以上出る」という予想が立てば、顧問税理士に「この500万円について、節税や有効活用する方法は何かありますか?○月○日までに先生のご意見をいただきたいのですが」とこちらから期限を切って提案を促す。こうすれば、さすがに何もしないということはありえないでしょう。これで何もしないのであれば、それはもう顧問税理士とは言えないはずです。

極論を言うと、提案のない顧問税理士に提案してもらうためには、こちらから指示を明確に出すことが必要です。経営者としては、ひとつ負担が増えてしまうわけですが、このくらいのことをしなければ、提案のない事務所から提案が上がってくることはありません。何度も解説したとおり、やはり税理士には個々人で大きな差があるのです。

DXに乗り遅れることの恐怖。できる税理士には差がある。

ここではデジタル化、クラウド化等を総称してDX化と呼ぶことにします。これまでお伝えしてきたクラウド会計やチャットツールなど、もはやこれは付加価値ではなく、税理士事務所としては当たり前のように備えておかなければならない環境と言えます。

これらのツール類を使いこなしてもらうための方法は、これまでに説明済みかと思いますので、ここではRPAなどのこれからのDX化について解説させていただきます。

いま、税理士業界では「RPA」が注目されています。RPAとはRobotic Process Automationの略で、簡単に言えばパソコン上で動くロボットのようなものです。パソコン上でこのRPAを使い、設定をすると例えば転記のような作業はあとはこのRPAが行ってくれるという、まさに近未来的発想のシステムです。このRPAの普及により、税理士事務所では人材を抱えておく必要がなくなるのではないか、さらなる低価格化が実現できるのではないかなど、様々な意見が出てきています。

RPAは確かに画期的なシステムだと言えますが、2022年現在では導入コストの面や、メンテナンスの必要性から、RPAを導入している税理士事務所はごくわずか。今後、本格的にRPAが主流のシステムになるには、もう数年かかる見通しと言われています。

ここで重要なのは、あなたの顧問税理士がこのような最新情報について、きちんと押さえているかどうかです。税理士には税理士会という団体があり、各種研修の実施や情報提供などを行っていますが、主たる情報提供はやはり税務、税金に関することです。もちろんRPAやクラウド会計の情報提供などもありますが、全体的にこうしたDX化が得意とは言えないので、やはり自分ごとと考えられない税理士は多く存在します。

つまり、良い税理士とそうでない税理士を見分けるひとつのポイントは、こうしたDX化に向けた情報をきちんと把握しているかどうか、ということになります。確かに税務や税金、節税に関する情報を追いながら、こうしたDX化まで追求していくのは決して簡単なことではありません。しかし、クライアントのことを考えれば、やはりこうした最先端の情報を顧問税理士がいつも手に入れ、実践しているとなればそれは頼もしい存在だと言えるでしょう。

一度、あなたの顧問税理士がきちんと情報を追っているか、聞いてみても良いかもしれません。そこで頼りない回答がくるのか、頼もしい回答が来るのかで、ひとつ見極めになっていくでしょう。

融資やその他の経営相談に消極的な顧問税理士はどうすべき?

税理士事務所によっては、経営コンサルティングが可能とPRする事務所もあります。ただし、この税理士による経営コンサルティングや経営相談は必ずしもあなたに貢献できるとは限りません。

その積極的な姿勢は評価すべきだと思います。しかしながら、経営者の相談までできるかといえば、少し怪しいところです。もちろん、中には高度なコンサルティングが可能な事務所は存在しますが、やはり多くの税理士事務所はかたちだけの経営相談業務になっていると聞きます。

そもそも、なぜ税理士に経営相談ができるのかという根拠も不透明です。確かに大小様々な規模、そして多数の業界の「数字」を見てきた経験はあるのかもしれません。しかし、それはあくまで数字上のことで、実際の経営を見てきたわけではないのです。もちろん、税務に関してはその経験を買うべきですが、経営についてまで相談できる事務所は限られています。

では、どんな事務所であれば経営相談まで可能かといえば、やはりその税理士事務所自体がきちんと伸びて組織化されていることが前提でしょう。自らの事務所を伸ばすことができていないのに、経営相談ができるというのはやはりちょっと違います。自信と根拠を持って、税理士事務所を拡大しているトップに相談できるのであれば、その経営相談は有益なものになるはずです。

税務以外に、融資業務を受けることや経営相談を受けることなどは、実力の違いももちろんありますが、多くは仕事に対するスタンスの問題だと私は考えています。クライアントファーストを掲げて努力を続けていれば、自然と顧問先のために取り扱い業務は増えていきます。このスタンスをいまの顧問税理士に変えてもらうというのは、ちょっとした軌道修正というよりは、経営方針そのものを変えてもらうことになるので、なかなか難しいところだといえるでしょう。

ツールやコミュニケーションなどは、あくまでも軌道修正の一部です。ですから、変えることはできます。しかしながら、スタンスについては前述のとおり。もし、あなたがもっと積極的な姿勢を顧問税理士に求めるのであれば、積極的な指摘よりも、もしかしたら税理士を変えてしまうのが早いのかもしれません。

税務調査で、税務署の味方になる顧問税理士は、もう顧問じゃない

いよいよ第2章の最後です。税理士に税務署寄りの考えを持つ人がいることは、すでにお伝えしました。前述の提案と同じく、税務調査の対応についてもこれは指摘事項というよりは、スタンスやマインドの問題です。

クライアントはあなたです。あなたが報酬を支払って、税務や申告、そして税務調査を依頼するわけですから、顧問税理士は100%あなたの味方であるべきと考えるのが普通でしょう。しかしながら、中にはとにかく税務署の言いなりで、クライアントであるあなたの意見よりも税務署の意見に忠実。特に税務調査はコンスタントに実施されるものではありませんから、いざ税務調査が入ったときに、顧問税理士の本性がわかった…というような例もあります。

批判を恐れずに言えば、税務署の言いなりになる税理士は、もう顧問税理士として契約を続けるべきではないと私は考えます。もちろん、納税は国民の義務ですし、正しく納税することは重要です。しかし、クライアントから報酬をもらっている以上、少なくともあなたと同じスタンスであるべきです。ですから、前述のように脱税は論外としても、すべてについて「税務署が認めないでしょう」「税務署の言うことは聞いた方が良い」のような税務署を中心に考えるような発言が多い顧問税理士は、長い目で見れば近くに置いておくべき存在ではありません。

これまで、1000社を超える顧問先と契約を結ばせていただきました。その中には、既存の顧問税理士を変えて、私の経営する税理士法人との契約を希望された人もいます。結果、業績を伸ばされた会社も多いのですが、その中でも多かった相談は「税理士を変える方法やタイミングがわからない」というもので、これに頭を悩ます経営者も多いのです。

そこで、第3章では税理士を変えるときのポイントなどについてまとめました。もし、あなたが税理士を変えたいと考えていたら、きっと参考になると思います。

第三章でも触れますが、税理士を変えるためにはいくつかのポイントがあります。その中でもっとも懸念されるのが「人間関係」です。その点なども踏まえつつ、解説をしていきます。

第3章 税理士を変える勇気を持とう

顧問税理士の実力で、会社の売上は本当に変わる

さて、これまでの解説で察しの良い人はすでにお気づきだと思いますが、あなたの経営、特に資金繰りや節税は顧問税理士の力量とスタンスによって大きく異なります。これは揺るがない事実です。

そして、税理士に支払う報酬が本当にその対価に見合う金額なのかどうか。これもはっきり言って不透明です。報酬額そのものはインターネットを通じて比較できますが、内容については税理士事務所によって本当にまちまちで、同じ顧問料5万円だとしても、提供するサービス内容に大きな違いがあるのはよくあることです。

そもそも、明確な料金表をつくっていない事務所も多いものです。数字を取り扱う仕事なわけですから、きちんと料金表は内訳を明確にすべきだと考えていますし、私はこれまでずっとそのように本当の意味で明朗会計でやってきました。こうした料金やサービス内容なども、他事務所としっかり比較して税理士を選ぶべきだと私は考えます。

本章の結論は、冒頭のとおりなのですが、本当に顧問税理士によって会社の業績は変わります。例えば、想像してみてください。常に迅速なスピードで試算表が上がってくる。試算表と合わせてアドバイスが送られてくる。融資を受けるべきタイミングの提案がある。金融機関の選択も間違いない。そんな顧問税理士がいたら、あなたの会社の資金繰りは安泰です。

あるいはもうひとつ考えてみてください。決算期の前に利益予想がしっかりと届き、節税方法の提案までセットでついてくる。それもただ単に利益を減らすだけの短期的な節税ではなく、将来の積立の意味も含めた保険による無理のない節税プラン。あなたは情報を集めることもしなくて良いし、節税の勉強をする必要もない。ただただ、本業に本当の意味で集中すれば良いだけです。

よく「月末になると経営者が資金繰りに奔走する」なんて話を聞きますが、顧問税理士が真っ当であれば、よほどのことがない限りこんなことにはなりません。そして何より、資金繰りのことを経営者が常に考えなければならない状況を生み出しているのは、顧問税理士が原因でしょう。

あなたはお金の悩みを常に抱えたまま、経営をしたいと思いますか?言うまでもなく、お金の心配をせずに経営に集中したいはずです。そのためにも優秀な顧問税理士と契約するというのは、やはり重要なことだと言えるでしょう。

1000社以上の顧問を通じて痛感したこと

何度かお伝えしたとおり、私が開業してから14年間に、1000社以上の会社と顧問契約をさせていただきました。これもすでに伝えましたが、税理士を変えて当法人と契約される方も多く、その前任の税理士の話を聞くと驚くことが多数あります。

何度もお伝えしましたが、一度も提案を受けたことのない経営者や融資の相談を断られた経営者。決算期直前に利益だけ告げられ、節税のしようもなく多額の納税をすることになった経営者。私から言わせれば、なぜこのときに融資を受けなかったのか。なぜこのタイミングでこれだけ無駄な税金を支払うことになってしまったのか、本当に顧問税理士がいたのかと勘ぐってしまうくらい、信じられないような状況が存在します。

これらのことを踏まえると、経営者はお金の課題を常に自分自身で抱え過ぎだと私は感じます。融資ひとつをとっても、仮に顧問税理士が融資の相談を受ける事務所だったとしても、スタンスが消極的であれば、経営者自身が自発的に税理士に相談をするというアクションを取らなければなりません。そうなれば、当然常に資金繰りのことを頭のどこかで考えておく必要が出てきます。これは経営者にとって非常に大きなストレスです。

仕入れがあり、原価計算があり…のような普段から数字を取り扱うタイプの会社であれば、まだ資金繰りは馴染みのある話なのかもしれませんが、クリエイター系の企業であれば、資金繰りを常に考えることは苦痛でしかないでしょう。

こうしたお金の苦しみから解放させることが、税理士の本質的な役割なのではないかと私は考えます。適切な融資や節税の提案。税務だけに留まらず、クライアント企業のために必要であれば、補助金の提案や社会保険労務士との提携によって助成金の提案もする。可能ならば、そういったワンストップでの提案をするのが、もっとも近い位置に存在する顧問税理士の仕事であり、役割だと思うのです。

このお金のストレスから解放された経営者は、本当に驚くほど業績を伸ばします。やはり、経営者は資金繰りについて積極的であるべきだと思いますが、追われてはいけない。そう強く思います。

税理士を変えることは「不義理」か?

私は無理に税理士を変えた方が良いとは思いません。経営者にも様々な事情がありますし、一概にいますぐ税理士を変えたほうが良いと言うつもりもありません。

しかし、あなたが顧問税理士について強く疑問を持ち、適切な指摘をしてもストレスが解消されない。融資の相談にも節税の相談にも乗ってくれない。消極的なスタンスが変わらない。そういうことであれば、税理士の変更を検討するのもひとつの選択肢だと思います。

税理士の変更をするとき、もっとも厄介なのが顧問税理士との人間関係。またはそれにともなう関連の人脈への影響です。もともとお世話になった人からいまの顧問税理士を紹介してもらったということであれば、契約そのものが切りにくいでしょうし、関係者への説明も必要になるかもしれません。そして何より長年お世話になった顧問税理士に解約を言うことが忍びない…多くの経営者がこうした気持ちを少なからず持っています。

しかし、顧問税理士との関係性より重要なのが、あなたの会社が成長することです。そして、会社が成長することによって、あなた自身やあなたの家族。そして従業員の給与等の条件を上げることができるわけで、どちらが重要かなどは、本来比べられないはずです。

顧問税理士側から見れば、不義理のように感じてしまうかもしれません。しかし、重要なのはこれまでの過去ではなく、これからの未来です。

あなた自身がより会社を伸ばしたい。お金に関する不安をなくしない。そして、その目的を達成するために、いまの顧問税理士では物足りない。努力をして改善しようと思っても、改善されなかった。そこまで来ていれば、もう顧問税理士を変えるタイミングなのではないかと思います。

きちんと順を追って手はずを進めれば、契約上も人間関係上もそれほど実際はおおごとにはならないのが現実です。もし、あなたが自分の会社のため、あなた自身や家族のため。そして従業員のために顧問税理士を変えたいと判断したとするなら、次項以降を読み進めて頂ければと思います。

顧問税理士の変え方、良い税理士の選び方

顧問税理士を変えるタイミングは、直近の決算が終わったときがベストです。期の途中となると引き継ぎが遅れたりした場合、決算に影響が出てしまうことがあります。とはいえ、まずは新しく契約をする税理士を見つけてからということになりますので、まずはあなたのお眼鏡にかなう税理士を探しましょう。

良い税理士を見分けるポイントとしては、まずは料金表が明確なこと。何にどんな費用がかかるのか。契約してしまってからでは大変です。例えば、顧問料の中に年末調整の費用は含まれているのか。決算申告も顧問料に含まれるのか、別料金なのか。このあたりの料金表のオープン性はまず重視したいところです。

次に検討する事項は、やはり資金繰りや節税に関する提案をどれだけしてくれるのか。これは実績中心に税理士にヒアリングしていけば良いと思いますが、注意したいのは実績があるかどうかではなく、この税理士から自発的に提案があって実行されたものかどうかという確認が必要です。税理士を変える場合には、現状は顧問税理士がいるわけですから、焦る必要はありません。丁寧に聞いていきましょう。

それから、コミュニケーションツールやDXに関する意識。このあたりもあなたのストレスに関わることなので、必ず確認してください。合わせて、担当制なのかどうか。税理士が担当してくれるのか、それとも無資格者の職員なのか。このあたりも検討要素に入れてほしいところです。

そのほか、他士業との連携やオプションサービスとして何を行っているのかの確認や税理士事務所自体が伸びているかどうかも検討基準のひとつといえるでしょう。特に税理士事務所が伸びているということは、トップの経営力は間違いありませんし、情報収集に関しても意欲があることの証明になります。

最終的に税理士変更の意向を現在の顧問税理士に伝えるときは、次の税理士を決めてから、直近の決算の、直前の打ち合わせでその旨を告げてください。このとき、直接でもメールでも良いのですが、いまの顧問税理士を責めないことが重要です。仮に不満があって変えることになったとしても、例えば業界の付き合いの関係で税理士を変えなくてはならなくなったとか、いまの顧問税理士に非があって解約となると波が立ちますので、このあたりはうまく考えて実行しましょう。このあたりでいざこざが起こると、次の事務所への引き継ぎを放棄されることもありえますので、ぜひ慎重にことを進めてください。

この瞬間から、勇気を持って行動しよう

顧問税理士を変えるということは、特に人間関係ができてしまってからは、なかなか精神的にも大変なものです。しかし、何度もお伝えしたとおり、顧問税理士との人間関係とあなたの会社に関係するステークホルダーの幸せを天秤にかければ、どちらを優先するかは自明の理のはずです。

私自身が税理士なので、税理士を変えるということは小さなことではないことはわかります。私自身もまったく解約されたことがないわけではなく、諸事情によって残念ながら解約になってしまったケースもあります。14年、1000社を超える規模でやってきましたので、さすがに解約ゼロとは言い切れないのですが、その都度改善を繰り返し行い、いまのクライアントには満足して頂いている自負はあります。

さて、あなた自身ももし顧問税理士との契約を解約するということになれば、それ自体が大きなストレスであり、人間関係も含めれば大きな出来事になります。しかし、本当に繰り返しになりますが、あなたにとって最も重要なことを最優先した上で考え、決断していただきたいと私は考えています。

ここまで本書をお読みいただけたということは、何かしらの顧問税理士への不満や疑問があったからこそだと思いますが、環境を変えるということは勇気の要ることです。でも、その環境を変える勇気を持った人こそ会社を伸ばせる人だと私は思いますし、そういう経営者を多数見てきました。

繰り返しになりますが、本書は積極的に顧問税理士との解約を進めるものではありませんが、もし本書がなにかのきっかけになって行動を起こし、あなたの会社やあなた自身、そしてあなたの周りに良い影響がありましたら幸いです。

終わりに

思い切って、二〇年続いた税理士との顧問契約を解除した社長の話

「私が思っていたより、ひどい税理士だったんですね」

冒頭に挙げたエピソードは実話です。この経営者は20年間、同じ税理士と顧問契約を続けていました。本書で解説したとおり、顧問税理士に疑問はあったものの「税理士とはこんなもの」という主観でずっとなあなあの関係で税理士との契約を続けてきていて、本人は大きな問題はないと考えていたわけです。

ところが、とある縁で私と知り合い話を伺ったところ、提供するサービスは報酬額と見合わないし、融資や節税に関しても提案は一度もない。税務調査のときも税務署の指示に従うばかりで、本書で説明した「ダメ税理士」の典型のような税理士だったのです。もちろん、人間的には決して悪い人ではなかったのですが、「もしかしたら、もうちょっとほかの税理士事務所も見てみては…」と軽くサジェストしたところ、最終的にいくつかの税理士事務所の検討を経て、私の経営する税理士法人と契約することになった、という経緯です。

当法人と契約してから、その経営者はお金の不安が解消されたのか、20年間あまり動きのなかった売上も大きく伸ばすことになり、資産も増えるようになっていきました。もちろん、私たちは全力で支援しましたが、やはり環境によって会社経営も経営者そのものも大きく変化するものなのだ、と強く感じたエピソードでもあります。

何度も繰り返しになりますが、あなたがもしいまの顧問税理士に疑問を感じていたら、その疑問はあなた自身の成長の伸びしろを削っている可能性がある。それだけはぜひ感じ取っていただければと思います。いずれにせよ、本書が何かしらのきっかけになり、あなたの会社の業績が伸びることに繋がりましたら幸いです。

読者特典

本書をお読み頂いた読者の方限定で、税理士に関する相談をお受けしています。あなたの顧問税理士に関する疑問など、セカンドオピニオンとしてご利用ください(60分無料)。税理士に関する相談をご希望される方は、下記のフォームより必要事項をご記入の上、送信してください。

※原則として、Zoomを通じたオンライン相談とさせていただきます
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