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【全文無料公開】脱税?税金逃れ?心当たりがある経営者のための税務調査対応マニュアル-ひとり親方、大工、建設業編-

はじめに

税務調査の予告があって、眠れないあなたへ

本書は、建設業を営む人で、すでに税務調査の予告が入った人のための本です。

そして、税務調査が入ったらマズいということをすでに確信している人に向けて書きました。

もしあなたがいま、税務署からの税務調査の予告が入って焦っている状況であれば、いますぐこの本をお読みください。できるだけ簡単に、かつわかりやすく直前にできる対策をコンパクトにまとめてあります。できることはまだあります。

「心当たりがあり過ぎて、もう無理だ。諦めるしかない。」

そういう場合でも、可能性はまだあります。

もしかしたら、数千万円の追徴課税半分で済むかもしれません。場合によっては、最悪のケースを逃れることができるかもしれません。

もちろん、脱税行為や脱法行為を推奨するわけではありません。

でも、やってしまったのであれば仕方ありません。それなりの代償は必要になる可能性はありますが、できるだけ軽傷に抑える方向に切り替えるべきです。

申し遅れました、私はさきがけ税理士法人の代表税理士の黒川明と申します。当法人では、建設業を営む個人事業主や法人の飛び込みでの税務調査の相談を多数受けています。

多くの人が、もうダメだと最後の希望として相談にいらっしゃいます。ほとんどが税務調査ギリギリでのご相談です。私たちはこれまでの知見を活かし、できるだけ税務調査の結果を軽傷に抑えます。そして、そのほとんどの人が事業を諦めることなく、まさに「九死に一生を得る」ような結果で蘇るのです。

本書は、そんな私たちのノウハウと経験を詰め込みました。もし、あなたが税務調査を控えて、夜も眠れない状況だ…という場合には、必ずお役に立てるはずです。

さきがけ税理士法人 代表税理士 黒川明

第一章 過去のどんぶり勘定は、もう取り返せない

「バレないだろう」は、ほとんどバレる

本書では、建設業を営む個人事業主と建設会社の経営者を合わせて「社長」と呼ぶことにします。

多くの社長は、こう考えています。

「自分のところだけは大丈夫だろう。バレないだろう。なんとかなるだろう。」

と。しかしながら、これまで私が税理士として顧問先や駆け込みで相談に来た社長への対応から言わせてもらえれば、ほぼ確実にバレます。

いま、税務調査が入って少し冷や汗をかいているかもしれません。その冷や汗は、当日おそらく冷や汗どころか、洪水のようにあふれることになります。

確かに社長が稼いだお金です。社長がどう使おうが自由。でも、適法に納税されていなければ、税務署は容赦ありません。

どんなに領収証や経費処理の偽造をうまくしていたとしても、口裏合わせをしたとしても、ほぼ確実にバレます。

あなたが完璧な準備をしていたとしましょう。しかし、そこは百戦錬磨の税務署です。質問の仕方を次々に変えていきます。あなたは最後まで辻褄がきちんと合った回答ができますか?すべての口裏合わせた人間が同じストーリーを認識していますか?

簡単にいえば、すぐに「ボロ」が出ます。

まあ、心当たりがある社長であれば、すぐに表情に出るものです。調査官はそういった面も見逃しません。

ですから、断言しても良いですが、脱税行為、脱法行為はほぼ確実にバレます。「自分だけは大丈夫」ということは現実にはありません。

これは脅しているのではなく、事実です。

では、次にいきましょう。

いまから過去の悪事は隠せない

税務調査の予告が入ったあと、慌てて偽装工作に走る社長がいますが、これは最悪の判断です。発注書、領収証、脱税や税金逃れの偽装工作は山ほどありますが、これは素人考えというしかありません。

前述のとおり、税務署は甘くありません。例えば、現金でやりとりをしていて、口座への記録がないからバレないだろう。簡単にバレます。例えば、あなたの会社の資材の仕入れや人件費。こういった別の材料から、一般的な売上を算出すれば、売上が足りていないことなどすぐに分かってしまいます。何か不正をすれば、必ずどこかで辻褄が合わなくなるのです。

そして、あなたの偽装工作が発見されれば、重加算税の対象となります。

重加算税はもっとも重いペナルティです。重加算税の三十五%または四〇%の税率の高さも恐怖ですが、最大七年分を遡って税務調査が行われることがあります。通常の税務調査では三年分が対象とされていますから、支払う税金額も相当な金額になります。

あなたは下記のような行為に心当たりはありますか?すべて重加算税の対象となる可能性がある行為です。

・二重帳簿をつくっている
・決算に関係ある書類を破棄、改ざん、隠している
・税額控除に必要とされる証明書などを改ざんしている
・取引先と通謀して契約書を偽造している
・簿外資産・資金(帳簿に載っていない資産や資金)に関連する収入を計上していない

これらは悪質な脱税行為となります。実際に追徴課税の例を挙げると、例えば裏口座をつくってお金をプールしていた社長は、追徴課税六〇〇〇万円。ほかにも、プライベートな経費がすべて認められなかった社長は追徴課税一五〇〇万円。このような例はいくらでもあります。

そして、すべてが意図的な脱税行為、脱法行為ではありません。「帳簿をつけていなかった」、「レシートなど管理が適当」、「無申告」などでも税務調査が入れば一発アウト。やはり、「自分だけは大丈夫」はないのです。

口裏合わせも、簡単に見抜かれる

税務調査が入るタイミングはそれぞれです。税務署のデータベースを元に定期巡回で調査が入ることもあれば、狙いうちで入ることもあります。意外と多いのが「タレコミ」と「芋づる方式」です。

「タレコミ」というのは、通報のことです。あなたの周りの社長や社員が税務署に通報することで税務調査が入ることがあります。口裏合わせをしたとしても、誰かひとりが罪の意識にさいなまれればそれまで。簡単に税務調査は入ります。

そしてこの「口裏合わせ」。これは一見、一致団結して税金逃れができそうな気もしますが、やはりそんなことはありません。特に建設業の場合は、元請けに調査が入れば、自然と下請けの正しい売上を税務署が把握することになります。そこで違和感がある下請けには調査が入ってしまいます。つまり、場合によっては関係者すべてが調査対象になるわけです。建設業の場合、このように芋づる式で税務調査が行われることが多く、自分だけ上手くやろうとしても結局関係者からその偽装工作が露呈してしまうことが多々あります。

税務署が偽装工作など簡単に見破るのは説明したとおりです。口裏合わせも、ひとりの社長の説明の辻褄が合わなければ、すべて崩れてしまいます。そして、やはり窮地に追いやられたら、自分が一番かわいいものです。ひとりが自白すれば、もうその口裏合わせは成立しなくなります。

口裏合わせは偽装工作です。つまり、重加算税の対象になります。あなたが想像するよりもはるかに多額の税金を納めることになってしまうでしょう。ですから、口裏合わせをしていたとしても、最終的には大きな悪い結果となって返ってきてしまうわけです。

では、税務調査の予告が入ったとき、もし心当たりがあったとしたらどうすればいいか?場合によっては追徴課税で会社のキャッシュでは耐えられないほどの納税をする必要が出てきます。こんなとき、緊急で数千万円、あるいは数億の資金調達が可能かといわれれば、まず不可能に近いでしょう。

いくら売上があったとしても、現預金はそれほどない。中小企業ではよくあることです。ですから、当法人に相談に来る社長も「自分のところだけは大丈夫だと思っていた。でも、追徴課税を計算したら、納税額がとんでもない額に…」と顔面蒼白になります。

しかしながら、まだ諦めることはありません。できることはあるのです。

もう逃げられない場合に、どうしたら良いのか?

極論を言えば、税務調査が入ったときに脱税行為や脱法行為などの心当たりがある場合には、ほぼ間違いなくその偽装工作はバレます。あなたがいかに巧妙な偽装工作をしたとしても無駄で、最後には七年分の税務調査と重加算税が待っているのです。

当法人に飛び込みでこられる社長には、このような方がいらっしゃいます。

・脱税行為、脱法行為に心当たりがあり、税務調査が入ったらバレるのがわかっている。とてもじゃないけど、重加算税なんて支払えない。もう自己破産か夜逃げしかない。もしかしたら逮捕されるかもしれない。

・そもそも、申告をしていない。発注書や領収証、レシートも管理したことがない。でも、税務調査が入ってしまった。反論する証拠も材料もなく、途方に暮れている。もちろん、税金を納めるための現預金などない。やはり廃業しかないのか…。

・元請けに秘密にしていた脱税行為、脱法行為がある。税務調査でこれらの偽装工作が明るみになったら、重加算税は納められないし、仕事も切られてしまう。これがバレたら若い職人にも確定申告を迫られるし、そうなれば全員に辞められてしまう。もう首を吊るしかないのか…。

少し過激な表現になってしまいますが、これらは実際にあった声です。最初はみな、自分のところだけは大丈夫だろう。税務調査が入ったとしても、なんとかなるだろうと楽観的に考えています。

ところが、実際に自分がやった行為。そしてそれにともなう追徴課税などを調べてみると、とんでもない額の納税になることや、社会的信用を失う行為をしてしまったことに気付きます。そして、もう取り返せないということにも。

では、ここまで来たら諦めるしかないのでしょうか。

いいえ、そこは税務調査のプロとしてあなたに提案があります。もちろん、脱税行為や脱法行為を推奨するわけではなく、これらは違法な行為ですし、二度と手に染めるべきではありません。しかし、だからといって座して死を待つこともありません。

結論を言えば、ここまで来たら「できるだけ軽傷で終わらせる」ことが重要です。次章からは、そのプロのテクニックをお伝えします。

第二章 いまからできる税務調査対策-少しでも納税額を抑えるために-

無申告の場合にできる最善策は?

まず、無申告の場合には税務署主導ではなく税理士主導で動くべきです。税理士がいない場合は税務署主導となり、税務署主導であれば資料を持って行かれ、相当辛口な経費計上の上で税額を出してきます。

これに対して税理士主導であれば、資料を預かり、税務調査の前に正しい確定申告書を出すことが可能です。関与する税理士の力量にもよりますが、税務署主導に比べて経費をかなりねじ込むことも可能で、税務署主導で作った申告書より税額が安くなることが多いと言えます。また、税務調査前に提出することで無申告加算税も安くなります。

そして、無申告あるいは脱税行為があった場合の前提がふたつあります。

ひとつは、最後まで諦めないことです。もしかしたら、最初の税金の試算であなたの想像を遥かに超える納税額が算出されてしまったとしても、そこで心が折れてはいけません。必ず何かできることがあるはずです。

実は、税理士に相談する前に、自己完結で諦めてしまう社長も多くいます。様々なネットの情報を見たり、知り合いの社長から話を聞いたりして、素人判断で「もうダメだ」と考えてしまうケース。これは本当に素人判断も良いところです。諦めるなら、プロの税理士に相談してからです。ですから、まずは素人判断で自己完結せずにプロのちからを借りることが重要になります。

ふたつめは、税金をゼロにすることはできないということです。税務調査に際して、脱税行為や脱法行為などの心当たりがある場合、それらを合法にすることも適法にすることもできません。言い換えれば、「やってしまったことは、もう取り返せない」ということになります。

しかしながら、税務署の指摘をただ待っているだけだと、言うまでもなく想像以上の納税額になります。そこで、ふたつめの前提となるのが、税額をゼロにするのではなく、「できるだけダメージを抑える」という考え方です。

例えば、三〇〇〇万円の追徴課税を支払うのは不可能。そんな税金を支払うお金はないし、廃業するしかなくなる。でも、これが五〇〇万円まで抑えられたらどうでしょうか。さらに、分納といって、分割で納めることが許されたらどうでしょうか。

確かに五〇〇万円でも相当大きな納税額です。しかし、三〇〇〇万円の納税よりは延命できます。このように、できるだけ軽傷で抑えるのが最善策であり、プロの税理士ができる最大の対応策となります。

では、こうした最善策をどのようなものか。

それを次項で解説していきます。

“修正申告”というあなたを救う魔法とは?

税務署から税務調査の予告が入ると、一般的に社長は次のように考えることが多いと言えます。まずは単なる心配。「バレないだろうか」という不安とも言えます。次に、なんとかこの調査を乗り切ることを考えます。そこで思いつくのが、「税務調査の対応・交渉に強い税理士」探しです。

確かに、税務調査が入ったからといって、すべての指摘に素直に従わなければならないわけではなく、反論の余地があります。そのため、税務調査に強いとPRする税理士事務所に相談に行きがちです。もちろん、これは間違いとも言えないのですが、決定的に間違っている認識がひとつあります。

それは、どんなに交渉が強い税理士でも、脱税行為や脱法行為をひっくり返すことはできないのです。ですから、心当たりがある場合には、誰に頼もうと結局ボロが出てしまうわけです。ちなみに、「税務調査をノーダメージでクリアできる」と断言する税理士が稀にいますが、完全に無傷というのは経験上不可能に近いと言えます。つまり、「無傷でできる」を主張する税理士は、税理士自身が違法行為をしている可能性があるので、十分お気をつけください。

では、座して死を待つのかといえば、調査が入る前にできる対策があります。それが修正申告です。あなたもこの言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、おそらくこの修正申告は「税務調査が終わったあと」に申告するものだとお考えのはずです。

しかし、この修正申告は税務調査の前に出すことができます。例えば、税務調査が行われてしまい、悪質な脱税行為・脱法行為が発覚したとなれば、一章で解説したとおり重加算税の対象となり、最大七年分の税金を支払う可能性があります。これに対して、修正申告をすれば最終的に納税額を抑えることができるかもしれないのです。

何度もお伝えしていますが、決して脱税行為・脱法行為はしてはなりません。しかし、法律のルールにきちんと則って自ら修正申告を先にしてしまうことで、納税額を抑えられることもまた、現在の法律のルールなのです。

ですから、税務調査が入った時に行う最善策は「修正申告」です。修正申告が唯一無二の軽傷で済む方法と言っても過言ではないでしょう。

ところで、稀に修正申告をせずに「交渉で有利にします」と主張する税理士がいますが、これはギャンブルに近いものだと考えておいてください。確かに交渉でラッキーが起こることもありますが、何度も解説したとおり七年分の税務調査と重加算税の可能性があります。ですから、交渉に淡い期待を持つのは賢明とは言えないでしょう。

このように、ただ座して死を待つだけでなく、できることがあるのです。

資料がなくても、経費をねじ込む方法

前述のとおり、調査前に税理士に修正申告をしてもらえば、あなたも軽傷で済む可能性があります。顧問税理士がいる場合はその税理士に修正申告を依頼することになるでしょう。

では、顧問税理士がいない場合や、調査時に税理士に依頼することなく調査が行われた場合には、どうなるのでしょうか。答えは、「最終的には税務署の指導どおりに納税することになる」です。もちろん、税理士を挟まなくても交渉することは可能です。しかし、税務に精通している社長はほとんど皆無で、交渉そのものが難航し、最終的には精神的疲弊も相まって最終的には税務署の指導に折れてしまうことが多いのです。つまり、最終的には税務署の指導に従って追徴課税を納めてしまうことになるのです。これはまさに文字通り「座して死を待つ」ことになります。

ですから、税務調査のときは必ず税理士を挟むこと。それも税務調査の実績がある税理士に。優秀な税理士なしに、ダメージを軽減する方法はないのです。

それに、もしあなたが会計管理を適当に、例えばレシートや領収証がない場合でも、優秀な税理士であれば経費をねじ込むことも可能です。もちろんすべての場合において可能とは言えませんが、レシートや領収証がないからアウトという単純な話ではないのです。

例えば交通費などは、領収証がなくても経費計上できる可能性があります。A地点での工事を請け負い、B地点から移動する。これは工事を請け負った以上、必ず生まれる移動距離です。移動なしに工事は不可能ですから、この距離間のガソリン代などは使わないわけにはいかないのです。

こういった前提があれば、あとは平均的な数値を算出します。この距離において、例えばハイエースなら平均的にどのくらいのガソリン代がかかるかなどを計算します。これらの想定計算に異論の余地がなければ、経費は認められることになります。つまり、領収証類がなくても経費を計上することは事実上可能で、やはり最初から諦める必要はないのです。

優秀な税理士であれば、このあたりは把握しているはずです。もし、あなたの顧問税理士や相談先の税理士が「領収証類がないと経費計上は難しい」というのであれば、完全に実力不足と言えるでしょう。

このように、まだまだあなたにはやれることが残されているのです。

・七年重加算税を選ぶか、軽傷で生きながらえるか?

修正申告をするということは、言うまでもなく納税することです。ですから、仮に軽傷で抑えられたとしても、出ていくものは出ていきます。

もちろん、あなたがどのような脱税行為・脱法行為をしているかはわかりませんが、バレなければ軽傷どころから無傷で済むとお考えかもしれません。税理士に支払う報酬ももったいないし、もしかしたら無傷で通り抜けられるかもと考える社長も多いもの。

しかしながら、前述のように税務署はあなたの願望通りにはいきません。もちろん、税務調査官も人間ですから、見落とすこともあるでしょう。ただ、その可能性はほとんどないと考えた方が良いです。そのくらいやはり調査官はきちんと調査をしてきます。

ですから、淡い期待は捨てるべきです。もしかしたら税金を納めることがないかもしれない。しかし、上手く切り抜けられても、数年後の税務調査で発覚する可能性は十分あります。つまり、隠し続ければずっと不安と共存しなければならないということです。

もし、修正申告をしなければ、七年分の税務調査と重加算税の可能性があり、場合によっては納めることが不可能な納税額になることもありえます。そうなれば、再起不能。廃業しなければならないこともあるでしょうし、そうなれば顧客や取引先、雇用している職人などすべての人に迷惑をかけることになります。お金だけでなく、あらゆるものを失ってしまうのです。

修正申告をすれば、税金を納めることになります。これでも大きな痛手になるでしょう。しかし、再起不能になるよりはマシなのではないでしょうか。

経営が存続できるレベルの納税額であれば、経営を続けていけば最終的になんとかなるケースは多々あります。言い換えれば、修正申告をするかしないかは、あなたが事業を継続したいかどうかの選択でもあります。

長い人生、一度や二度は大変な思いをすることはあるでしょう。修正申告での納税も苦しいかもしれません。しかし、人生を投げ出してしまうよりは、軽傷で耐え、先々を見据えて判断するのが賢明なのではないでしょうか。

税金は、「分納」できる

修正申告をしても、状況によっては想像を超える納税額になってしまうことがあります。いくら納税額を抑えることができても、この金額を一度で納めることになれば、間違いなく経営は傾く…そんな状況もありえます。

しかし、あまり知られていないのですが、税金は分割で納めることができます。税務署や都道府県、市区町村との交渉次第ですが、三回分割、六回分割なども現実的には可能です。

税務署としても、基本的には納めるものを納めてもらわなければなりません。税収という点を考えると、無理に納税を強要して倒産してしまうより、経営を続けながらきちんと継続的に納めてもらう方が、結果としては良いわけです。そのため、実務的には分納が認められています。

「じゃあ、一〇回、二〇回のような長期分割も可能なのか?」

と疑問を持つ社長もいますが、現実的には三回分割。長くても半年程度の分割で納めてほしいと税務署は交渉してくるでしょう。ただし、このあたりは比較的融通の利く制度も用意されており、長期の納税が認められる場合もあります。あとは税理士とどのように上手く交渉するかを考えるかです。現実な落とし所を税理士とともに考えるのが現実的な判断となります。

気をつけたいのが、いくら分納ができるからといって、資金に余裕があるのに分納での納税スケジュールを組んでしまうと、今度は銀行などの金融機関の評価がガクンと下がり、借り入れができなくなる可能性が高くなりますので要注意です。

ですから、分納期間を長く設定すれば納税は楽になりますが、今度は資金調達が苦しくなります。このあたりのバランスを考えて、分納計画を立てるのが現実的なところでしょう。

いずれにせよ、修正申告も経費算入も分納スケジュールも、優秀な税理士の存在が重要になります。税務調査を軽傷でくぐり抜けるには、素人考えでは不可能です。

次章では、そんな最重要事項。税理士の選び方について解説していきます。

第三章 あなたのための“税金”のいのちの電話

いますぐ税務調査に強い税理士を探し出そう

さあ、ここまで来たらもう説明不要かと思います。税務調査の予告が入った段階で、優秀な税理士を探す必要があります。あなたのダメージをできるだけ軽くするためにも、優秀な税理士に相談することは急務です。

もしすでに顧問税理士との契約があるのであれば、もう相談しているかもしれませんが、顧問税理士がいるからといって安心はできません。「税務調査に強い」税理士が必要なのです。顧問税理士が税務調査に極めて強い税理士であれば、後述する「税理士への告白」のルールを守って進めて頂ければと思いますが、そう良くできている話ばかりではないと思います。

では、税務調査に強い税理士をどのように探せば良いかと言えば、まずは知り合いの経営者、税理士などの士業に「税務調査の対応実績が豊富な税理士を紹介してほしい」と紹介を募ってください。一見、遠回りに見えるかもしれませんが、あなたの近くに経験者がいるのであれば、かえって確実です。まずは声をかけるところから急いで始めましょう。

通常の税理士探しであれば、紹介が来るのを待って…という流れで良いのですが、今回は緊急時です。同時にインターネットでも税理士を探してください。これも、通常時の税理士探しであれば、SNSやブログの情報を精査したりなど、本当にあなたにとって理想の税理士を探す方法はいくつかあります。

探し方のポイントとしては、税務調査専門のウェブサイトを持っていることが最低条件。もちろん、税務調査専用のサイトがなくても、税務調査に強い税理士事務所は存在します。しかし、今回は時間がありませんから、少なくとも専門サイトを持ってPRしている事務所から選ぶのが妥当な線だと言えます。

また、検索しているのが夜間等、税理士事務所の営業時間帯でない場合は、メールフォームなどの手段で問い合わせるしかありませんが、基本的には電話で行うべきでしょう。電話で相談し、すぐに時間を取ってくれる事務所。このあたりが大前提です。

税務調査の日が迫ってくればそれだけ、できることは減っていきます。とにかく同時多発的にまずは税理士事務所に相談し、リアクションを見る。そこから今度は選んでいくことになります。

税務調査に強い税理士の見極め方とは?

税務調査に強い税理士をどう短期間で見つけるか?これは極めて重要な課題です。早速、どのような点に注目して見極めていけば良いか解説していきます。

(1)なんと言っても実績
まずはなんと言っても対応件数、つまりは実績です。細かい表現ですが「税務調査専門」と掲げた事務所が、必ずしも税務調査の実績が豊富とは限りません。あくまで専門は、その分野を専門にしているだけであって、専門としていなくても実績豊富な事務所は多数あります。

そして、単なる対応件数だけではなく、本書にあるとおり修正申告からどの程度納税額を抑えることができたのか。こうした事実ベースの実績を確認するべきです。このあたりの数字や内容を濁らせるような事務所は、ただ仕事がほしいだけの可能性もあります。あくまで結果をもとにした実績があるかどうか、確認しましょう。

(2)即対応できる事務所
メールや電話のレスポンスが早い事務所。これも緊急事態ですから重要な選択基準になります。税理士事務所との意思疎通ができなければ、税務調査を乗り越えることはできません。ですから、レスポンスの早い事務所を選ぶべきです。

(3)「税務署OB」にご注意
細かい解説は割愛しますが、税理士事務所の中には前職税務署職員だった事務所があります。そのため、「税務署OBだから、税務調査を熟知してます」とPRしていることがありますが、これも鵜呑みにすべきではありません。税務署OBでも調査担当でなければ意味がありませんし、修正申告による実績があるのかどうかも不明。確かに税務調査そのものには詳しいのかもしれませんが、修正申告でダメージを軽減できるかはまた別問題ということも頭に入れておきましょう。

このような基準が大きな基準となりますが、基本的には実績、実力重視で選ぶことが重要です。そして、決して報酬額で決めないこと。報酬額を数万円ケチって納税額が増えるのは本末転倒です。実力のある税理士に、きちんと報酬を支払ってこの困難を切り抜けましょう。

税理士には、どこまで本当のことを言えばいいのか?

脱税行為・脱法行為に心当たりがある場合、特にそれが社会的にあまり褒められた内容でない場合には、税理士とはいえ伝えにくいものです。しかし、ここまで来たらもう隠している場合ではありません。一度税理士に依頼することを決めたら、恥も外聞もなく包み隠さずすべて打ち明けましょう。いっときの恥など、再起不能に比べたら一瞬のものです。覚悟を決めましょう。

なぜ、税理士にすべてを打ち明けることが重要なのかといえば、言うまでもなく税理士はあなたから得た情報で修正申告を行うからです。ですから、税理士への情報漏れがあると、せっかく修正申告をしても重加算税の対象になってしまうことがあります。そのため、すべて情報を公開してください。

「税理士から嫌な顔をされるのではないか…」と不安になる人もいるかもしれませんが、こうした税務調査対策を行う上では、様々な偽装工作や諸事情は当たり前のことです。あなたの行為が愛人のためであっても、守銭奴的な発想から来るものであっても、あるいは怠惰な生活から来るものであっても、そこで嫌な顔をする税理士は、税理士失格だと私は考えています。誰しも、出来心はありますし、魔が差すということもあるもの。そうした器量のある税理士に依頼すれば、嫌な顔をされることもないでしょう。

そういう意味では、税務調査の経験が豊富な税理士ならば、この手の案件は日常茶飯事です。ですから、相談して顔色が変わる税理士はまだ未熟だと言えます。もちろん、違法行為等を推奨するわけではありませんし、すべきではありませんが、それでもなお人間ですから、様々な事情があります。すべて受け入れてくれる税理士に委ねましょう。

繰り返しになりますが、あなたがプライドを守るために税理士に隠し事を続ければ、最悪七年分の税務調査と重加算税となってしまう可能性が高まります。あなたのプライドを守ることと、事業とお金とあなたの将来を守ること、どちらが大事でしょうか。これはもう言うまでもないことだと思います。

いずれにせよ、大変な思いをするのはこのいっときです。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」、「人の噂も七十五日」。この苦難を乗り越えることを最優先にすべきです。

いま、緊急事態だということを自覚しよう

これが最後です。

もしあなたが税務調査を控えていたら、一刻も早く優秀な税理士を探し、相談してください。それも絶対に包み隠さずに。悲観することはありません。絶望するにはまだ早い。諦めることはないのです。

本書の中で繰り返し説明しましたが、修正申告をするかしないかでは納税額が大きく変わります。あなたに心当たりがあればあるほどです。

そして、優秀な税理士に依頼することで、逆転できる可能性は十分にあります。ですから、諦めずに急いで税理士を頼ってほしいと思います。

これまで、何度も絶望を抱えた社長の相談に乗ってきました。

中には自殺まで考えた社長もいます。でも、実際に修正申告をし税務調査初日が終わってみると絶望するほどではなかった。そんな事例も多数あります。

いま、もしあなたが緊急事態であれば、すぐに優秀な税理士に当たってください。

そのあなたのいまの一歩が、未来のあなたを救うことになるのですから。

終わりに

税務調査を乗り切ったある親方の話

最後に少し極端な例を挙げました。実際、「もうあとは首を吊るしか…」と心底思いつめて相談にいらっしゃる社長もいます。

しかし、多くの場合その状況を必要以上に悪く考え過ぎであることも多いのです。例えば、当法人が税務調査に対応した場合、初日はおよそ二時間ほどで終わらせることができます。その時点で安堵されるお客様がほとんどです。もちろん、最終的には決して少なくない額を納めることにはなるのですが、七年分の追徴課税と比較すれば、納税額が半分以下になることもありますので、もしあなたがどんな状況でも諦めずに相談してほしいと思います。

こうした苦難を乗り越えた社長がその後どうなるか。全員が全員そうだとは言えないのですが、痛い思いをした分、次はこのようなことにならないように心を入れ替えて健全な会計処理をする社長が多く、結果として大きく業績を伸ばした例も少なくありません。

何度もお伝えしてきましたが、決して絶望しないこと。諦めないこと。

そして、優秀な税理士を頼ること。

これが税務調査を乗り切るためのポイントです。ぜひ、実践してみてください。そして、本書が税務調査に頭を抱える社長の一助になることを願ってやみません。

追伸

なお、当法人では年中無休で税務調査に関する相談を受け付けております。これだけの書籍を書くわけですから、建設業の税務調査に関する実績は多数ありますし、もちろん自信もあります。もし、あなたが税務調査を控えて困っていたら、ぜひ一度ご相談ください。できる限りあなたの納税額を抑え、事業を継続できるよう、努力させていただきます。

税務調査の緊急医:https://kurotax.jp/lp/zeimuchosa/

事務所名:さきがけ税理士法人
代表者:黒川 明
本店住所:東京都多摩市落合1丁目15番2号 多摩センタートーセイビル4階
新宿支店:東京都新宿区新宿四丁目3番30号 ランザンAYビルディング 302号室
税務調査 緊急相談ダイヤル:0120-851-320(年中無休8:30-17:30)
TEL:042-313-8364(代表)/ FAX:042-313-8365


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