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【全文無料公開】未経験で初めて税理士業界に就職・転職したいと考えたら読む本-あなたを成長させる税理士事務所・会計事務所の選び方-

2022年にリリースしたKindle「未経験で初めて税理士業界に就職・転職したいと考えたら読む本-あなたを成長させる税理士事務所・会計事務所の選び方-」を一人でも多くの経営者に読んでもらうため、全文無料公開することにしました。Kindleにて購入(Kindle Unlimitedなら無料)することもできますが、この記事ですべて読むことが可能です。


はじめに

税理士業界で働きたいと思ったあなたのために

本書は、税理士業界で働きたいと考えているあなたのために、現役の税理士が書き下ろした書籍です。本書を手に取ったあなたはいま、こんな疑問や悩みを抱えているのではないでしょうか?

「税理士業界で働いてみたいが、どのような業界なのか想像できない」
「税理士業界の給料や待遇などはどうなっているんだろう」
「この業界に入るためには、やはり簿記などの資格がいるのだろうか」
「私には、この仕事の適性があるのだろうか」
「働きながら税理士資格を取ることはできる?」
「どの税理士事務所に転職するのがベストなのだろうか?」
「税理士業界の将来性は?」

税理士業界は、国家資格を有する少し特殊な業界だと言えます。そのため、ほかの業界に比べ、実態としての情報がなかなか表に出てこない事情もあります。あなたが税理士業界への就職、転職を考えたときに、具体的なイメージがわかないことも多いのではないかと思います。

そこで、本書ではこれまであまり語られることのなった税理士業界の就職・転職について、現役の税理士が赤裸々に解説しました。あなたの就職や転職の指針になりましたら幸いです。

税理士業界には様々なイメージがあります。仕事内容が難しいとか、確定申告の時期は会社に泊まり込んで仕事をするいわゆる「ブラック」なイメージ。一方で、仕事をしながら高度な知識を身に付け、経営者とともに成長できるというイメージもあるでしょう。

本書では、そういった税理士業界のあまり語られたくない部分や、意外とフォーカスされないやりがいやキャリアステップなどまで解説を加えました。真剣に税理士業界への就職、転職を考えているあなたにとっては、重要な一冊になるはずです。

それでは、早速税理士業界についての解説を始めていきましょう。

さきがけ税理士法人 代表税理士 黒川明

第1章 税理士・会計士業界ってこんなところ

税理士事務所、会計事務所、税理士法人はどう違う?

まずは基本的なところから解説していきましょう。税理士事務所を経営するためには、国家資格である税理士を有するものがひとり以上必要です。細かいことを言うと、税理士を始めとする国家資格は、資格を取得し、各会に登録して始めて活動することが許されます。税理士の場合は、登録するのは税理士会です。そして、税理士に登録するためには、(1)試験に合格する、(2)一定の条件で税理士試験を免除される、(3)弁護士または公認会計士、という条件があります。

試験に合格するというのはわかりやすいですよね。一方で(2)の免除はどうでしょう。これは、税務署等に一定期間以上勤務すると試験科目が免除される制度です。例えば、税務署に長く務めてから試験を免除されて開業した税理士を「税務署OB」の税理士と呼ぶことがあります。(3)は、弁護士、公認会計士であれば、税理士登録ができるという仕組みです。税理士になる方法は、このようにいく通りかあるんですね。

一般的にどのような経路であれ、税理士が個人事業主として開業している事務所のことを「税理士事務所」と呼びます。所長先生一名に、職員が数名。こんな規模が税理士事務所の一般的な規模です(税理士などのいわゆる「士業」の世界は、その士業を「先生」と呼び、勤務している社員のことを「職員」と呼ぶのが一般的です)。

規模が大きくなり、個人の税理士事務所を法人化したのが「税理士法人」です。個人事務所よりも規模が大きく、数十名から中には職員1000名を超える税理士法人もあります。基本的には、税理士事務所と税理士法人の違いは規模の違いと考えておけば、問題ありません。

なお、「税理士事務所」という名称のほか、「会計事務所」という名称も聞いたことがあるかもしれませんが、これは俗称と言われています。これに対して、公認会計士が営業する「会計士事務所」は公認会計士特有の名称です。

実情を言うと、公認会計士で独立する場合、公認会計士の業務である監査業務だけで経営を成立させるのは現実的難しく、その多くの場合が税理士登録をして税理士事務所としても開業します。そのため、公認会計士の資格があったとしても、事実上は税理士事務所と同じと考えて問題ありません。ですから、税理士事務所、会計事務所、税理士法人とあって、名称は違いますが、多くの場合は取り扱う業務はどこも同じ。そして法人は規模が比較的大きいと考えておけば良いでしょう。

一般企業の経理部と税理士事務所勤務はどこが違う?

税理士業界への就職・転職を検討する場合に、比較としてよく検討されるのが一般企業の経理部です。同じように経理の仕事を行うなら、どちらも仕事内容は似たようなものではないかと思われがちですが、これはまったく別物だと考えてください

まず一般企業の経理部は、ひとつの業界のひとつの会社の経理しか取り扱いません。飲食業界の経理部なら、飲食業界のみの経理。あるいは建設業界の経理部であれば、同様に建設業界の経理のみとなります。これに対して、税理士事務所はあらゆる業界の経理を取り扱うことになるわけです。ですから、同じ経理といってもより幅広い知識を求められることになります。加えて、企業の経理部であれば社内処理ということになりますが、税理士はクライアント企業の経理から申告まで取り扱いますので、「経理」ではなく「税金」の取り扱いだということも大きな違いだといます。

次に大きな違いは、お客様の存在です。企業の経理部であれば、前述のとおり社内処理ですので、仮にミスがあっても最終的に社内で帳尻を合わせれば済みますが、税理士事務所の場合はお客様がいます。そのため、原則としてミスは許されなくなりますし、仮に失敗をすれば税理士事務所との契約を解消される恐れもあるわけです。別の言い方をすれば、税理士事務所での仕事は、お客様に対しても勤務する税理士事務所に対しても決して軽くない責任がある仕事だと言えます。

さらに、お客様がいるということは、そのお客様とコミュニケーションを取る必要があるというのが企業の経理部との大きな違いです。企業の経理部は社内コミュニケーションのみで済みますが、税理士事務所勤務の場合は、社外のお客様とのコミュニケーションが求められます。しかも、そのほとんどが経営者。つまり、主に中小企業の経営者と円滑にやりとりができるコミュニケーション能力が求められることになります。

加えて、税理士事務所では経理処理だけをしていればよいわけではなく、資金繰りの相談や時には経営に関する相談も受けることがあります。つまり、企業の経理部と比較すると、より深く、より広く知識やスキルが求められるのです。

これを「大変」と思うか、「成長できるステージ」と捉えるかはあなた次第ですが、経営者とコミュニケーションを取りながら、実際の資金繰りの相談に乗り、それを解決することは必ずあなたの成長につながります。そして、経営者というお客様がいることで、成果が上がったときには直接あなたが経営者から感謝されることもある。個人的には大変ではありますが、その分感謝されることもあり、とてもやりがいのある業界だと私は考えています。

税理士事務所には、タイプがある

一口に税理士事務所といっても、取り扱う業務や規模によって様々な違いがあります。ここではその違いについて解説していきましょう。

まずは規模です。税理士事務所には、個人事業主として一名で運営している事務所もあれば、1000名を超える巨大事務所もあります。傾向としては、待遇や福利厚生などについては、規模に比例すると考えて良いでしょう。給与や待遇については、後述します。

大規模事務所として有名なのが、いわゆる「BIG4」と呼ばれる事務所です。具体的には、KPMG税理士法人、EY税理士法人、デロイトトーマツ税理士法人、PwC税理士法人がBIG4と呼ばれる事務所であり、従業員規模は数百名。最大手というべき事務所で、こうした大規模事務所の特徴としては、クライアント数が多いことから様々な事例を学ぶことが可能です。一方で、企業としてもきちんと成立しているため、希望の仕事に就けるかどうかは会社の意向に従うことになり、クライアントである経営者との距離は比較的遠目だと言えます。

これに対して、前述のとおり代表税理士が1名で、職員数名の事務所も存在します。安定性についても後述しますが、こうした小規模事務所はクライアントの税務を職員が担当することも多く、クライアントである経営者とも直接コミュニケーションを取ることになります。やらなければならないことは多いですが、その分ダイレクトに経営に近い場所で税務を担当することが出来る魅力もあります。

規模のほか、取り扱う仕事の内容にも違いがあります。税理士事務所の多くは、企業顧問会計。つまり、主に中小企業をクライアントとして税務を行うのが仕事の中心です。この企業顧問会計のほか、相続税などの資産税を中心に取り扱う事務所も存在します。企業顧問会計が中心の会社でも、相続税・資産税を取り扱う事務所はありますが、こうした分野に興味がある場合は、専門的に取り扱う事務所への就職が良いでしょう。また、取り扱う数は多くありませんが、国際税務を専門とする事務所もあります。

このほか、最近では社会保険労務士法人などを併設し、総合的にワンストップサービスを提供する事務所もあれば、本格的に経営や財務のコンサルティングを行い、コンサルタント候補を募集する事務所もあります。いずれにせよ、あなたがどの分野で仕事をしたいのか考えた上で、取り扱う中心業務を確認していくのがよいでしょう。

税理士事務所の仕事内容とは?

ここでは、税理士事務所に勤務した場合の具体的な仕事内容について解説していきます。まずは、税理士の最たる業務としては、税務申告があります。クライアントから資料を集め、決算書をつくり、税務署に提出します。お客様が個人事業主の場合は、一月から十二月までの一年分を毎年三月の期限までに申告。お客様が法人の場合には、法人の決算期は自由に決められるので、お客様の決算期ごとに申告を行います。中でも法人の決算は三月に集中しており、個人の確定申告の時期と重なり、例年年明けから三月決算の終わる五月(※)までは税理士にとっての繁忙期と言えます。

※法人の申告は、決めた決算期から二ヶ月以内に申告する義務があるので、三月決算の会社の場合、五月末までの申告が必要になります

決算申告に伴う仕事としては、お客様が記帳した内容のチェック業などがあります。かつて記帳代行という業務がメイン業務と言われていました。しかしながら、マネーフォワード等に代表されるシステムやツール等によって、お客様が自社で入力し、税理士事務所はこれをチェックするという業務が多くなってきています。もちろん、記帳代行といってお客様に変わって資料の整理や会計ソフトへの入力を行う業務も変わらずありますが、現在は減少傾向にあります。あなたが税理士事務所に勤務した場合、この記帳のチェックや代行業務。それに付随した書類の作成、そして決算申告書作成の補助などがメインの仕事になる可能性が高いと言えます。こうした決算業務に伴う仕事が、お客様への報告や顧問先企業からの相談業務です。「これは経費になるのか?」のような日常的な相談もあれば、深刻な資金繰りの相談などもあります。資金繰りの相談や実務の取り扱いについては、税理士事務所によってまちまちです。積極的に提案する事務所もあれば、取り扱わない事務所もあります。個人的な意見を言わせてもらえば、やはり顧問税理士として経営者と伴走しているのですから、資金繰りの相談は受けるべきだと思いますし、そういった事務所で働く方がスキルアップにつながります。

そのほか、税理士事務所でないとできない独占業務ではありませんが、給与計算を請け負う事務所もあります(独占業務でないため、給与計算は社会保険労務士や一般企業も行っています)。これに加えて、積極的に行っている事務所は決して多くありませんが、各種のコンサルティング業務なども行う事務所があります。

基本的には、税務に関する相談を受けること。そして決算申告に向かって書類の作成やサポートをすることがあなたの仕事になると言えます。より具体的な個別の事務所の違いについては、面接時に確認するのが良いでしょう。

税理士事務所の平均的な給与や待遇について

さて、ここからは最も気になるところでしょう。まずは給料について解説していいきます。

結論から言うと、税理士業界の年収水準はほかの業界と比べて高水準です。もっとも、それだけ高度な仕事内容が求められることになりますが、おおよその水準は次のとおりです。

勤務税理士の平均年収…600万円前半(年間賞与100〜150万円)
従業員ひとりあたりの平均年収…303万円 ※パート・アルバイトを含む

※FIVE STAR MAGAZINE株式会社 事務所経営白書2020より

もちろんこれはあくまでも平均であり、事務所の規模や評価制度、賃金制度によって年収は異なりますが、年収1000万円を超えるような高収入を目指せる業界と言えます。また、業界全体的には税理士の有資格者が不足していることもあり、税理士資格を持っている場合は、転職によって年収アップが見込める業界と見ることもできます。別の見方をすれば、正しい努力をして、スキルアップをしていけば、その努力は報われやすいとも言えます。

次に給与以外の待遇や制度について。こればかりは事務所によって大きく違います。個人事務所では社会保険の加入もなく、国民健康保険のところもあります(個人事業主の場合、従業員五名未満であれば、社会保険加入は義務ではありません。ただし、従業員の1/2の同意があれば、加入すること自体は可能です)。税理士法人など、規模が大きくなればなるほど、このあたりの待遇は充実していくと考えて間違いないでしょう。

残業については、やはり確定申告時期と三月決算の重なる二月から五月くらいまでは、多くの事務所が残業を行っているのが現状です。まったく残業のない事務所は少ないのではないかというのが、私の体感になります。ただし、法律に携わる国家資格の仕事なので、残業代未払いなどの問題は起きにくいと言えます(もちろん、所長の意向や規模にもよりますが…)。一方で最近は、この残業を圧縮してできる限り短時間で成果を出すことに注力する事務所もあります。

評価制度や賃金制度など、一般の会社にあるような制度の整備、あるいは試験合格のための学費補助や家賃補助などの各種手当てなどについては、やはり規模に比例することが多いようです。個人事務所では、所長先生のさじ加減ひとつ。大手ともなれば、きちんとした制度がある。いずれにせよ、入社前にしっかり確認しておくことが重要になります。

税理士事務所で働くことの魅力ややりがいとは?

これまで解説してきたとおり、税理士業界はあなたの努力次第で、高収入を目指せる業界です。一方で、それにともなって求められる知識やスキルもあることから、ただ税理士業界に入りさえすれば高収入が約束されるということではありません。この業界に入ってからは、勉強に次ぐ勉強の日々になります。さらに、業務内容としては中小企業の税務や財務を預かる以上、決して楽な業界ではないですし、責任の重い仕事だと私は考えています。

では、税理士業界で働くことの魅力はやりがいはどんなところにあるのでしょうか。ほとんどの税理士事務所が企業顧問税務会計を取り扱うので、ここではその仕事に従事することについて、所見を述べさせていただきます。

やはり、この仕事は中小企業の経営者とダイレクトに仕事をすることになります。お客様は小さな会社といえど、経営者です。その経営者が自身の人生を賭けて経営する会社のサポートをするのが税理士の仕事。目の前の決算が良くなければ、当然経営者自身の人生に関わっていきます。これに対して、数字が良くなったとき。日々の会計業務や資金繰りの相談を受け、会社が良い数字を実現し、経営者自身の夢が叶うとき。目の前の経営者は心から喜び、感謝を伝えて下さいます。「あなたの事務所とのお付き合いがあって良かった」。このように、仕事の貢献の結果、ダイレクトに感謝されるということがひとつの醍醐味です。

また、現在経営をしている経営者だけでなく、新しく会社をつくって事業を始める起業家も私たちのお客様です。最初は小さな事業だったのが、ともに成長しながら地域を代表するような一流企業になっていく…そんな場面を何度も見てきました。ともに会社を成長させるために、共通の目的を別の角度から支援する。これも企業顧問税務会計に携わる大きな魅力で

経営者や起業家を支援するためには、もちろん税理士事務所側のスキルアップが欠かせません。ですから、成長意欲の高い人にとっては、最高にやりがいのある業界です。経営者に代わって勉強を続け、スキルアップのために研鑽し、その能力を生かしてダイレクトにお客様に貢献できる。世の中にある仕事の多くは、エンドユーザーと直接関わることが多くありません。これに対して税理士業界では、その関わりや感動をダイレクトに感じることができるわけです。

もちろん、日々の努力は必要です。しかし、その努力は資格試験の合否など結果がわかりやすく、ほかの業界に比べ報われやすいと言えます。もし、あなたが自分を磨いて成長し、仕事の喜びをダイレクトに感じたいのであれば、この業界は最適な業界かもしれません。

 AI、RPA、税理士事務所の将来性は?

一章の最後では、税理士業界の将来性について解説しておきます。どの業界でもそうですが、こういった話題になると暗い話になるものです。しかし、実態はいったいどうなのでしょうか。一般的に税理士業界の未来は厳しいと言われています。例えば、時折組まれるビジネス誌などで「将来AIなどの普及でなくなる職業」などの特集では、税理士は常にランクインしています。AIが税理士の単純な業務を奪っていく…まるで映画のような話ですが、私は税理士の未来は決して暗くないと考えています。

確かに、AIやRPA(※)などの普及により、単純作業は機械のものになっていく可能性はあります。しかしながら、実態をみればまだRPAの運用は高コストであり、人材が不要になるような領域には達していません。そしてこうした高度技術を歓迎する業界もあれば、これまでどおりのやり方を求めるお客様も、必ずいるのです。

また、機械にはできないこともまだまだあります。それは、「考える仕事」です。例えば資金繰りなら、どのタイミングでどの金融機関にどのような交渉を持っていけば、有利な融資が受けられるかなど、こうした考える仕事はまだまだ人間の方が長けています。融資については、決算申告書の内容が最も重要になりますが、金融機関という相手が存在するものなので、人間関係づくりも決しておろそかにできません。そうしたソフトの部分では、明らかに人間の方が優れているわけです。

そういう意味では、コンサルティング業務なども同じと言えます。財務コンサルティングや経営コンサルティングに積極的に取り組むことによって、事務所の強みがつくられ、ただ作業を代行するだけの事務所ではなくなります。このように、「考える仕事」が残されている以上、むしろ税理士業界はこれからも有望なのではないかと私は考えています。

確かに、人口減少に伴いお客様となる中小企業の数は減少しています。しかしながら、これは税理士業界だけの話ではなく、日本全体の話です。創業、起業がなくなることがないことを考えれば、いくらでも仕事はある。そういう意味では、この業界でスキルアップしていくことは、あなたの人生を安定させることにもつながっていくでしょう。二章では、この業界への転身を考えた人のための税理士事務所の選び方を解説します。具体的に行動に移したい場合には、ぜひじっくりお読みください。

※RPA…「Robotic Process Automation」の略。PC上で動くロボットシステム。税理士事務所では、記帳などの業務で使われ始めているテクノロジー。

第2章 未経験で就職・転職するために

未経験から税理士事務所に就職・転職できるのか?

それでは、二章からは具体的に未経験のあなたが税理士事務所で活躍するための適性や事務所の選び方などについて解説していきます。

まず、もっとも気になる点としては、「未経験から税理士事務所に就職・転職できるのか?」という疑問でしょう。結論から言うと、「可能」というのが事実なのですが、まずは知っておきたい税理士業界の人材の状況があります。

税理士業界は、慢性的に人材不足だと言われています。特に税理士の有資格者の募集をしても、期待するような募集がなく、なかなか人材を確保できていないのが現状です。そのため、過去、税理士業界は新卒採用を一部の大手以外では行っておらず、中途の経験者のみの採用というスタンスだったのですが、ここ十数年でそのスタンスは崩れてきました。現在、中規模程度の事務所でも新卒採用を行っており、また人材不足の煽りを受けて、未経験でも中途採用を開放しています。そのため、門戸は開かれていると言えます。

しかしながら、誰でも良いというわけでもないのがこの業界です。適性などについては後述しますが、「門戸は開かれているが、人材は選別されている」と考えておくと間違いありません。

新卒で就職、または未経験でこの業界へ中途採用を考えた場合、就職先の教育体制がひとつの大きなポイントになります。もちろん、あなた自身が簿記などの勉強をしていく必要はありますが、未経験の人材のための教育制度が充実しているということは、未経験者を育成するスタンスが確立しているということになります。

同じ未経験可の事務所があったとしても、教育制度がないのであれば、それは丁稚や修行と同じ。あなた自身が自ら学ばなければなりません。もちろん、教育制度に依存する(例えば、自分が仕事ができないのは教育制度が充実していないせいだ、という依存心が高い人材は嫌われる傾向にあります)のはよくありませんが、あなたが着実にスキルアップして、この業界でステップアップしていくために、税理士事務所の教育制度は重要な位置づけになってきます。

このように、新卒・未経験でも充分就業可能な業界と現状です。ただし、前述のように仕事内容としては高いレベルが求められますので、教育制度があることも重要ですが、あなた自身がステップアップする努力もまた求められることになります。

就職・転職前に簿記や税理士資格は必要?

税理士業界を目指すのであれば、簿記の存在はご存知でしょう。「税理士事務所に就職、転職するために簿記などの資格が必要かどうか」。これも、気になる点のひとつです。

これも結論から言えば、必ずしも必要ではない、というのが事実です。もちろん、最終的には日商簿記二級または全経簿記一級程度は必要となる資格(※)です。

※日商簿記は日本商工会議所が主催する日商簿記検定試験のこと。これまでは日商簿記が一般的だったが、現在は全国経理教育協会が主催する全経簿記を推奨する事務所がある。日商簿記には商業簿記に加え工業簿記も含まれるが、全経簿記は商業簿記と工業簿記を分けて受験できます。現在の会計では工業簿記を取り扱うことが少ないため、全経簿記でも可とする事務所が増えています。

もちろん、面接応募時に簿記があれば評価され、採用されやすくなるのは事実です。ですから、税理士業界への就職・転職を決めているのであれば、簿記を取得することはお勧めしたいところです。しかしながら、簿記の資格を持っていると有利になる一方で、簿記の合格を待っていると就業のチャンスを逃してしまうこともあります。

これはどういうことかというと、税理士の採用は主に税理士試験が行われる八月過ぎ。それから試験の合格発表が行われる十二月。この時期に採用市場は動き出します。一般の求人媒体も、税理士専門の求人媒体も活性化する時期です。ただ、現状はこの時期だけの募集ではなく、前掲のとおり慢性的に人材不足なのがこの業界です。そのため、採用自体は通年で行っている事務所も多くあります。

そんな中、時折「未経験中途」の募集が出ることがあります。このタイミングで、「簿記に受かってから…」と躊躇してしまうと、次にいつ未経験中の募集が出るかわかりませんし、なにより確実に簿記試験に合格できるか保証はありません。ですから、資格の有無に限らず、未経験中途の募集が出ていたら、資格取得よりも応募を優先させるのが良いと思います。

まとめると、最終的に資格は必要になります。そのため、就業前はもちろんあるに越したことはありませんが、前述のように資格の有無に強くこだわる必要なく、応募するのが良いと思います。いま、慢性的な人材不足も相まって、資格の有無よりは人材のポテンシャルを優先させて採用する事務所も多く存在します。そのため、あなたの積極性を面接で提示することが、採用されやすいひとつの基準だと私は考えています。

税理士事務所に向いている人、そうでない人

次は、税理士事務所での仕事の適性について。これも気になる人は多いでしょう。いまはコンサルティングなどを業務のひとつに据える事務所もありますが、原則としてやはり「税務」がメインの仕事になります。税理士事務所での勤務では、どのような適性が求められるのでしょうか。

まずは、簿記を軽くでも勉強してみてください。簿記を勉強して、自分に合っていると思えば、適性は充分にあります。あるいはすぐ理解できなくても、時間をかければわかりそうということであれば、やはり適性を持っています。これに対して、ある程度勉強したのにも関わらず、まったく理解できないということであれば、残念ながら税理士事務所への就業は向いていないと言えます。

これまで多数の経営者やその他人材と関わってきましたが、これは努力というより適性の話なのだと感じています。優秀な経営者であっても、簿記が理解できない人も多いものです。ですから、適材適所ではないですが、あなたが簿記を理解できそうなら適性あり。もし、まるで理解できないようであれば、この業界に入っても苦しいだけなので、別の業界を検討されるのが良いかと思います。

その上でイメージを掴んで頂きたいと思います。わかりやすい例えでいえば、税理士事務所での仕事は、「工場」と「接客」です。工場というのは、同じような作業を反復して行うということ。つまりは日々の記帳業務や試算表作成などの税理士事務所としての業務です。これは、毎月書類を作成し、年に一度申告するという流れになっている以上、必ず反復して行われる仕事です。そのため、同じような仕事を繰り返す面を持っています(厳密に言うと、同じ仕事はないのですが、同じようには見えてしまいます)。

工場勤務のような性質を持つ仕事を行う反面、それだけでないのが税理士事務所勤務の特徴です。税理士事務所には経営者を始めとするお客様がいます。そのため、お客様とのコミュニケーション能力も求められるのです。つまり、ただ作業に没頭できればよいということでもないのです。この両輪を持っている、あるいはそれに向かって努力できる人が、税理士事務所での勤務に適性がある、ということです。

ほかにも、日々学ばなければならないため、向上心がある、成長意欲が高い、スキルアップが好きなどの気質を持っている場合でも、税理士事務所での勤務は適性ありだと言えます。いずれにせよ、まずは簿記の適性。それを前提にコツコツ仕事を積み重ねられる人。そして人との関わりが好きな人にこの業界は向いていると言えるのです。 

どんな人材が、税理士業界に求められているのか

では、より具体的な求められるスキルや知識について、解説していきます。

まず知識については簿記。簿記を取って、その後税理士試験を目指す人も多く、この流れはある程度確立していると言えます。つまり、言うまでもなく税理士事務所勤務には、簿記・税法などの法律知識が求められます。これに加え、融資や資金調達など金融に関する知識も必要になります。経営者の悩みごとや相談の大多数が「お金」に関すること。ですから、このあたりの知識は求められるところであり、自然と増えていく知識でもあります。場合によっては、投資関連の知識が求められることもあります。

可能であれば、経営に関する知識も欲しいところです。経営者の話を聞くわけですから、「税務はわかるが、経営についてはからっきし」では、経営者の信頼を得ることはできません。ですから、経営に関しても学ぶことが必要です。

これらを踏まえると、知識に加え、「知識を習得し続けること」が求められます。勉強好きな人にとっては、たまらない環境とも言えますが、税法を始め、法律は変わるものです。ですから、継続して勉強し続けるスキルが求められます。

一方で、前項のようにコミュニケーション能力も強く求められます。社外での経営者とのコミュニケーションはもちろんのこと、社内では多くの場合チームを組んで仕事に向かうため、社内コミュニケーションも必要になります。学ぶことが好き、話すことも聞くことも好き。そして、コミュニケーション能力を高めていきたいという人にとっては、最適の環境だと言えます。

この二つはどの税理士事務所でも求められることで、そのほかについては各事務所によって求める文化が違います。旧来のように遅くまでの残業に耐えられる精神性を求められることもあれば、家族のようなアットホームさを求める事務所もあり、これは応募の段階で確認しておくと良いでしょう。

最後に私が考える重要なスキルとして「考える力」を加えておきます。経営とは問題の連続です。試験のように決まった質問に確実な回答があるわけではありません。経営者の資金繰りや節税対策など、一辺通りの回答だけでは満足して頂くことはできないのです。そのため、自分の頭で考えて行動し、お客様の満足度を高めるような仕事をしていくことが重要で、これができる人材は、どの事務所に行っても活躍できると私は考えています。

書類選考と面接のポイントとは?

二章の最後では、書類選考と面接のポイントについて解説しておきます。言うまでもなく、この点については税理士事務所ごとによって選考基準が異なります。ですから、ここではあくまで一般論として前事務所に共通しそうな点について解説することにします。

○書類選考について
資格の有無は必ず見られます。しかし、前述のように資格の有無だけで決まるわけではないので、あなたの意欲を見せましょう。そのほか、学歴も見られますが、これは絶対ではありません。学歴は参考程度に注視するくらいのものと考えておけば問題ないと言えます。過去、経理経験や高いコミュニケーション能力が求められる職場にいた経験があると、高評価になるといえます。

○面接について
あなたが税理士業界にどのようなイメージを持っているかわかりませんが、正直に申し上げると普段の仕事については、パソコンでの入力作業など地味な作業が多くを占めます。そのため、黙々と仕事をしているイメージがあるかもしれませんが、そういった環境だからこそ、多くの税理士事務所は「元気な人」、「意欲がある人」を求めています。ですから、まずは面接の基本ですが、「明るく元気よく」は外せません。

そのほか、基本的には自立して自ら学び、成長してほしいと考えている事務所がほとんどです。そのため、教育制度の有無を確認するのは構いませんが、事務所に依存するような姿勢はあまり好まれません(「何かあったら、全部教えてくれるんですよね?」「失敗しても許されますよね?」のような他責の人材は敬遠されます)。この点も押さえておきましょう。

ここ最近の税理士事務所では、「不適性検査適性スカウター」などのテストなどを実施する事務所も増えてきています。こればかりは実際に受けてみるしかありませんので、頑張って受けましょう。税理士事務所は全国に二万五〇〇〇件以上あります(※)。あなたがどうしてもこの業界を目指したいと考えたら、何度もチャレンジできますので、頑張っていただきたいと思います。

なお、最近は面接をZoom等を通じたオンライン面接を行う事務所も増えてきました。面接はリアル、オンラインどちらの実施でも良いと思いますが、オンライン面接を実施している事務所は、時代をきちんと見ている先見性のある事務所ではないかと個人的には思うところです。

※総務省統計局「経済センサス」「事業所・企業統計調査」より

第3章 あなたに合った税理士事務所の選び方

まずは税理士事務所のタイプ、そして社会保険の加入や残業代の支給などを確認しよう

さて、いよいよここからは具体的な税理士事務所の選び方について解説します。まず前提となるのが、税理士事務所のタイプです。一章で解説しましたが、タイプで言うと税理士事務所の過半数が企業顧問税務会計。そして相続税・資産税タイプ。ほかに国際税務専門の事務所などがあります。多くの場合、企業顧問税務会計の事務所に就職することになりますので、ここでは同タイプの税理士事務所について解説します。

選択の基準になるのが、まずは規模です。これも解説済みですが、大規模になればなるほど、待遇や福利厚生などは充実してきますし、取り扱う企業の規模も大きくなり、また触れる業界の種類も増えていきます。一方で、クライアントである経営者との距離は若干遠く、税理士事務所自体の経営も間近で感じられるとは言えません。

これに対して、規模が小さくなれば顧客との距離はダイレクトになります。税理士事務所の経営にも近くで携われる可能性が高く、より経営のダイナミズムを感じることができます。ただし、事務所によりますが、いくら税理士業界の平均年収が高くても、小さな事務所では大規模税理士法人のような高待遇は望めません。

このあたりはあなたが求めるものを明確にして選んでいきましょう。例えば、あなたがコンサルティング案件を受けてみたいと思うのであれば、コンサルティングを事業として行っている事務所でないと取り扱うことはまず不可能です。

求人の応募事項で確認すべきは、まずは社会保険など企業として最低限の準備ができているかどうか。そして応募にあたって資格を求められているかどうかを確認します。未経験可かどうかも確認しましょう。これらに加えて、給与額、昇給制度、資格手当の有無なども確認しておくと良いでしょう。

もしあなたが税理士業界で働き、いずれは税理士になりたいと考えていたら、試験に関する補助や手当なども確認しておきたいところです。資格取得のための支援制度があるか。また将来的に独立を考えているとしたら、その点は問題ないか。「就職するのに、独立することを聞いてもいいの?」と思われるかもしれませんが、この業界は資格を取れば独立することがある業界です。そのため、中には独立支援制度を掲げているところもあるくらい。事前にあなたが求めるものを明確にして、応募前とそして面接時に、必ず不明な点がなくなるまで確認してください。 

入ってはいけない税理士事務所の特徴とは?

税理士事務所の求人情報を眺めていると、あまりその募集内容に差がないように感じることがあると思います。これは税理士という国家資格を持ち、原則として同じ内容の仕事を取り扱っているため仕方のない部分ではあるのですが、あなたもできるだけ良い税理士事務所に入りたいと考えているでしょうし、いわゆる「ブラック」な事務所には入りたくないとお考えだと思います。そこで、ここでは入ってはいけない事務所の傾向について、私なりの所見をお伝えしておきます。

まず、情報が少ない事務所。これは要注意です。求人広告大手の求人媒体は、基本的にテンプレートに情報を埋め込むだけになっていますので、その情報公開には限界があります。そのため、最近は自社サイトで求人に関する情報を提供する事務所も増えてきました。求人媒体だけで判断するのではなく、応募する事務所のウェブサイトも必ず確認すべきです。

事前に情報がないということは、いわゆる「後出しジャンケン」を狙っている可能性があります。本当は残業だらけなのに、情報を出すのを控え、なし崩し的に毎日のように残業をさせる…というのは極端な例ですし、残業がまったくない業界ではありませんが、基本的には古い業界です。そのため、細部まで情報を出している事務所に応募するのが良いでしょう。

この情報公開については、面接時にも注意してください。的を射ない回答や曖昧な回答ばかりだと前述のようなことが考えられます。ほかに確認しておく点としては、離職率の高さ。離職率が高いとなれば、言うまでもなく過酷な労働状況が伺えますし、ハラスメントの類いが蔓延しているのかもしれません。ここはひとつ見極めのポイントでしょう。

それから、税理士事務所は親子や夫婦など、いわゆる家族経営の事務所も多くあります。経営としてきちんと成立していれば良いのですが、家族経営の事務所も注意が要ります。それは、経営幹部が家族である以上、ビジネス上の数字や事業のあり方だけでなく、経営に感情が持ち込まれるからです。

親子喧嘩や夫婦喧嘩を職場に持ち込まれる。想像しただけでもげんなりしますが、意外とこうした家族経営の事務所も多いのです。もちろん、親子や夫婦での経営でも大きく伸びている事務所はありますので一概には言えませんが、そういった可能性を持っていることだけは、心に留めておくと良いでしょう。

いずれにせよ、情報公開。あなたが求める情報に包み隠さず堂々と回答できる事務所であれば、入社後の大きなミスマッチは防げるのでないかと私は考えています。

長く働きたいホワイト事務所の見分け方

前述の「入ってはいけない事務所」の特徴が情報の非公開や離職率の高さであれば、ぜひとも入りたい良い事務所の特徴はどうなっているのでしょうか。前項とは逆に、ここでは良い事務所の特徴について解説していきます。

まずは入社時に「体験入社」のような制度を設けている事務所は、良い事務所である可能性が高いと言えます。これは、隠す点がないからこそ実現できるものですから、情報の透明性という点では高い評価ができます。後出しジャンケンを放棄しているわけですね。

わかりやすい「良い事務所」の例としては、企業認定などを受けている事務所はわかりやすい例です。いま、様々な企業が企業の良さを認定するサービスを提供しています。あなたも一度は「働きやすい会社ランキング」などを見たことがあるのではないでしょうか。こういった認定を受けている事務所は、外部からの認定を受けているので、良い事務所という評価が可能です(ちなみに、私が経営するさきがけ税理士法人は、2021年12月度GPTW社(※)の「働きがい認定企業」に選ばれています)。

ほかには、あなたが何か仕事をしたいと手を挙げたときに、仕事が与えられる事務所。逆に言えば、新しいことをやりたいと言ったときにそれを止められる事務所は少し考えものです。こうした社員の積極的な姿勢は評価されるべきと私は考えていますが、いかんせん古い業界です。「余計なことはしなくて良い」、「黙々と作業だけしていれば良い」と考える税理士も多いもの。しかしながら、税理士事務所としてはただ作業代行だけしていても、将来は先細りです。そのため、こうした積極的な人材を活用していくスタンスの事務所の方が、将来性も含めて良い事務所であるといえるのではないでしょうか。

将来性という点では、税理士業務以外の事業にも積極的な事務所は良い事務所だと言えます。財務コンサルティングや経営コンサルティング、M&A(企業の合併や買収)、事業承継など、税理士として関与できる事業は、税務の周りには無数にあります。こうした新しい事業に積極的な事務所も、良い事務所だと私は考えています。

ただし、これも最終的にはあなたが求めるものに合うかどうか。この前提は忘れないようにした方が良いでしょう。

※GPTW(Great Place to Work®)…働きがいに関する調査・分析を行い、一定水準以上の企業を認定する事業を提供。世界60カ国で実施。

キャリアアップ、評価制度、賃金制度を確認する

最後に、良い事務所を選ぶ基準としては、「入社後」のキャリアアップです。すでに解説したとおり、こうした制度は税理士事務所の規模が大きくなればなるほど充実し、個人事務所に近づけば近づくほど曖昧です。あなたの努力がきちんと評価されるのかどうか、入社前に確認しておきましょう。

もっとも重要な点は評価制度です。あなたの仕事がどのように評価され、そして給与にどう反映されていくのか。公平な評価制度を敷いていることは、良い税理士事務所の条件と言えますし、あなたのモチベーションを左右する重要なものです。

よく税理士事務所の求人欄には、給与例が掲載されていることがあります。例えば、下記のようなものです。

・実務未経験1年目…20万円〜25万円
・実務経験1〜3年…23万円〜28万円
・実務経験3年以上…26万円〜35万円

こうした表記があることは応募の目安になりますし、入社後のイメージが湧きやすいといえますが、こうしたキャリアアップの中に、どのような仕事振りが評価されるのか、あるいは資格手当等は含まれているのか、そのあたりを明確に説明できる税理士事務所でないと、入社後にあくまで一例として片付けられてしまう可能性があります。

評価制度の運用は、経営者の視点から見ても決して簡単なものではありません。評価制度がない事務所もありますし、評価制度を導入していても、かたちだけの導入になっていて、機能していない事務所もあります。ですから、ただ「評価制度がある」というだけでは、評価できないのが実情です。

そこで有効な質問が、「どのような評価制度があって、どのようにキャリアアップしていくのか、どなたか具体的な社員の一例を教えて頂けませんか?」というものです。この説明のときに抽象度が高いとなれば、注意が必要です。年に何度、どのような項目によって評価され、具体的にどのような昇給・昇格があったのか。こうした具体的な情報を出してくれる事務所を選びましょう。

最終的には情報公開の量。この量が少なければ少ないほど、あなたとのミスマッチに繋がりますので、応募の際は必ずこのことを思い出すようにしてください。

安定だけを求めるなら、税理士事務所は向いてない

最後に、これは税理士業界を目指すあなたへのメッセージです。

税理士の仕事は、嘘偽りなくやりがいのある仕事だと思ってます。創業から十四年。これまで1000社を超える企業と顧問契約をしてきました。企業経営というのは、経営者自身の人生であり、ドラマです。本当に税理士として関与していくと、それこそ小説や映画を超えるような内容の仕事もあります。一見単調に見える仕事も、書類の向こう側には人生があり、そうした経営者に貢献できるのは、本当にやりがいにあふれていると思います。

一方で、責任も重い仕事です。ただ記帳をしていれば、ただ決算申告をしていればいいだけの世界ではありません。資金繰りに苦しんでいる経営者の相談を受けるのは、こちらも胸が張り裂けそうになります。仕事としても極めて重い責任。八方塞がりの中、打開策を考えていくのは本当に大変なときもありますが、苦難をともに乗り越えられたときの嬉しさはひとしおです。

税理士とは、こうした責任の重く、そして誇り高い仕事だと思っています。もしあなたが「安定してそうだから」という理由だけで安易に選んでしまうと、後悔するかもしれません。もちろん、最初は誰しも知識なし、経験なしから始めるわけですから、脅すわけではありませんが、成長意欲のない人にとっては、息苦しい世界なのかもしれません。

ただ、もしあなたがいまの自分を変えたい。真面目に勉強をして、きちんと評価される世界で働きたい。顧客とダイレクトに仕事をして、直接感謝されるようなやりがいのある仕事をしたい。そういう気持ちであれば、税理士業界はその思いに応えてくれる業界です。

もちろん、本書にあるとおり、税理士事務所の選択は重要です。あなたがどんなに良い志を持っていたとしても、それが評価されなかったり、あるいは手を挙げても妨害されてしまうような事務所では、あなたが思うようなステップは歩んでいけないでしょう。ぜひ、本書を参考に、良い税理士事務所を選んでください。

最後に、本書をここまでお読みになったあなたは、真剣にこの業界への転身をお考えなのだと思います。当法人でも求人は随時行っておりますが、ほかの事務所に入ることもあるでしょう。この業界に入ったとしたら、もしかしたら私と会うこともあるかもしれません。そのときに、この本を参考に事務所を選んだとしたら、感想と成果を聞かせていただけましたら幸いです。

終わりに

税理士事務所に入って、人生が変わった話

ニート、引きこもりなどの言葉が一般的になり、給与水準は上がらず、物価が上昇する現代。いったいどんな努力をすれば報われるのか。はたまた、もうこんな世の中では、努力しても無駄なのか。このように人生を諦めてしまう人も、世の中決して少なくありません。

私は、真面目な努力は報われるべきだと考えています。その中でも、税理士という世界は、努力がきちんと認められる世界です。向き不向きはあるものの、簿記や税理士試験は努力が実を結ぶ試験です。運の要素は決して多くなく、きちんと実力が問われる試験であり、公平。ですから、あなたがいまどのような状況であっても、逆転可能な世界であるとも言えます。

実際、私の経営する税理士法人に入社したときには、資格なんてひとつも持っていないという社員も少なくありません。お世辞にも学歴もそこまで優れていない。でも、ひたむきさと真面目さ、努力を積み重ねることができれば、将来は拓けます。何も持っていなかった社員も簿記を取り、資格を取り、そして独立までしていった社員もいます。ですから、あなたがどのような状況だったとしても、この世界に入れば、変われる可能性を持っているのです。

何より、私自身が最初は何も持っていませんでした。私の実家は曽祖父の代から続く自営業で、長男の私が家業を継ぐ予定でした。しかし、三代目であった父の代で経営が厳しくなり、倒産してしまったのです。私が大学生になったばかりのことでした。学費や生活費は自分で稼がなくてはならなくなり、苦難を極めました。税理士という仕事を知ったのはその頃です。

税理士はほかの国家資格よりも経営者に近い存在だと私は感じました。そして、何より中小企業の経営者に対して、ダイレクトに支援ができる。自分の実家が大変なときに、いまの力があればと思うとやりきれない部分もありますが、二〇代は文字通り寝食を忘れて仕事に打ち込み、できるだけ中小企業の役に立ちたい、そして自分の父のような企業を一社でも減らしたいという思いでここまでやってきました。

私に特殊な才能があったとは考えていません。ただただ必死に努力した結果、いまがあると考えています。税理士という世界は、そういう意味では努力に対してきちんと報われる世界なのではないかと思います。

では、本書を最後までお読みいただき、ありがとうございました。もしいつか、この業界でお会いすることがあれば、ぜひご挨拶させてください。

さきがけ税理士法人 代表税理士 黒川明

さきがけ税理士法人に興味を持ったあなたへ

本書を最後までお読みいただき、ありがとうございました。ここからは、私が経営する税理士法人にご興味を持った方のためのご案内です。ほかの事務所ともぜひ比較して頂き、もしあなたが当法人で働きたいと考えていたら、ぜひエントリーして頂ければと思います。

・実力が試せる、劇的に成長できる
さきがけ税理士法人は、成長志向の事務所です。ほかの事務所で三年かかる経験を一年で積むことができる。そのくらいの成長意欲とスピードを持っています。つまり、求める人材は成長意欲の高い人材です。

・さきがけ税理士法人とは
ゼロベースから日本トップクラスにまで押し上げた営業力のある事務所です。東京都多摩市を拠点とし、平成二十四年には地域最大規模の税理士事務所に。現在は八〇〇社以上の顧問を持つ事務所となりました。直近は年間二〇〇社を超える顧問契約を獲得しており、この成長速度は、日本国内二万五〇〇〇件以上ある税理士事務所のうち"トップ0.1%"に入る実績です。

・仕事もプライベートも楽しむ社風
仕事には全力。そしてプライベートも楽しむ。社内では、各種イベントの実施も行っており、社員同士の仲はとても良い事務所です。

・充実した制度
入社時新人研修:一般的なビジネスマナーから心構え、業務内容まで、チームに配属されるまで研修をおこないますので、未経験の方でも安心です。

有志スタッフ勉強会:一般的なビジネスマナーから心構え、業務内容まで、チームに配属されるまで研修をおこないますので、未経験の方でも安心です。

研修補助金制度:有志でセミナーに参加する場合は、5000円の補助が出ます。参加後はレポートを提出し、そこで得た知識を社内で共有します。

外部研修:必要に応じて外部の勉強会や研修、セミナーを利用し、勉強する機会を提供。新しい知識を積極的に吸収できる取り組みを行っています。

チーム制度:五、六人のチーム単位で業務を行います。リーダー、正社員、新卒、BS・CS・GS(パートタイマー)の各キャリアで構成されているので、疑問点はいつでも解消できる環境です。

内定者フォロー研修:内定者はスタッフ全員の連絡ツールのトークルームに参加し、何でも質問が出来ます。また、内定者懇親会などで研修も実施しているので、知識がなくても安心です。

各種教材:一般的な税務の教材だけでなく、会計業界の動向が分かる専門誌や研修資料を用意しています。

代表 黒川明からのメッセージ

○本気で成長したい 本気で仕事を楽しみたい人へ

さきがけ税理士法人は、少し税理士事務所らしくない自由な気風を大切にしています。平成20年にゼロベースで開業した事務所ですが、平成24年には西東京地区で最大規模となりました。現在でも業界トップクラスのスピードで成長を続けています。税理士事務所というよりベンチャー企業のような感覚で「これが成長企業か」ということを体験できます。

採用活動では徹底的に「人」にこだわっています。ですので応募から採用決定までにかける時間は長くなっていますが、会社の雰囲気の良さには自信があります。いつもどこかで笑いが起きています。

仕事一辺倒も良いですが、人として、一緒に働くスタッフ同士、楽しく仕事ができることが何より大切だと思っています。

ですが、仕事こそ本分。何より大切です。

ですから、学びながら、成長し、さらに自分に磨きを掛けられる環境を用意しています。

○仕事を心から楽しみながら成長したい方

・息の合う仲間スタッフと、たまには仕事外でのイベントも楽しみながら、仕事に集中したい方
・人が好きな方。多摩という地域が好きな方(新宿支店勤務・リモートワークも可)
・お客様の期待に応えられるように、一生懸命になれる方
・基本を学び、仕事のスキルを上げ、社会に貢献する気持ちで働きたい方

良い環境を用意しています。一緒に成長しましょう。

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