胎盤スムージーってなんや
さて、前回のつづき。
家で産みたい!ビバ・自宅出産!なんて思っていた私。
結論から言うと、自宅出産はできなかった。
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と言うか、できないことが決定した(まだ産んでない。)私の気持ちを汲んで、夫も自宅出産に賛同してくれたのにも関わらずだ。
妊娠高血圧でも妊娠糖尿病もないしまぁ大丈夫だろうと、根拠のない自信で自宅のベッドで産む様を呑気にイメトレをなんかしていたのに、なんと27週に受けた3Dエコーで「あれ、赤ちゃん小さい?」と言われてしまった。そのまま光のスピードで助産院→病院と連絡が行き、気付いたら病院でエコーを受け、そのまま上記のことが(知らぬ間に)決定していた。
その日のうちに助産院からさらっとメールが送られてきた。
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赤ちゃんが平均より小さいと言うことで、今後は総合病院○○がアナタのケアをすることになったわ。今後の連絡や検診は病院でお願いね。残念だけど私たちが次にアナタに会うのは、ベイビーが生まれた後ね。
Good Luck!
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軽い、軽いよ。
「え、じゃあまさかもう自宅出産の可能性なくなっちゃった?」と返事したら『小さい赤ちゃんの場合、分娩中常に心音をチェックしておかないといけないから病院での出産になるわ。アイムソーリー。』と言われてしまった。
ガーン。
この瞬間、あのキラキラ眩しい運河沿いをのんびり歩いて助産院に行くことが永遠になくなったのと、代わりに毎回電車に乗って病院へ行くことが決定した。
ただまぁ少しでも懸念があれば否応なく病院にバトンタッチする姿勢は有り難くもある。安全第一だもんね。いやはや、自宅出産に挑めるスーパー健康ベスト状態の妊婦になるのも大変なんだと良い勉強になりました。
と、それが2ヶ月前の話。
今これを書いている時点で、実は予定日まで一週間を切っている。
ちなみに赤ちゃんが平均より小さい(大丈夫なラインの下限ギリギリな)原因はよく分かっていない。胎盤もへその緒もちゃんと機能しているし、遺伝を疑われたが夫も私も母子手帳によれば普通に標準体重で産まれている。
このことを毎週行ってるマタニティーヨガのクラスで話すと
「赤ちゃんの個性よ!」
と言ってくれた。個性か、そうなのか。なんて便利な言葉なんだ。
そんなマタニティーヨガは私にとって唯一の”他の妊婦と触れ合える”社交場だ。オランダ 人はもちろん、アメリカ人やイタリア人なんかもいるのでいろいろな情報交換ができて楽しい。ヨガを始める前にハーブティーを飲みながらその日いるメンバーでおしゃべりをするのだが、この間などは
「知り合いの子が、6200gの赤ちゃんを産んだ。しかも多分下から....」
と、本当にあった怖い話を聞いた。お尻(骨格)がガシッとしてるオランダ人女性だからこそなのか...いやいや、それでもおかしいだろ。いやほんと赤ちゃん小さくて良かった。
他には一度「女の子です。」って言われて、女の子用品を意気揚々と買いあさり名前まで決めた後に「あ、やっぱり男の子でした。」って言われて未だ立ち直れない人や、35週になるまで我が子が逆子だと誰にも教えてもらえず(ていうかチェックされず)「今更かよ!泣」と必死で逆子体操やハリ治療に勤しんでる可哀想な人まで。
面白いのは半数が「性別は生まれる時のサプライズ!」選択をしているところ。オランダ人の友達に聞いたら、最近の流行りらしい。それは良いのだけど、この国では産まれて2日以内に名前を決めて出生届を役所に出さなくちゃいけないことを考えると産む前に二通りの名前を考えるのも大変だと思う。私たちなんて性別が分かっていても、未だに名前が決められないと言うのに...。(ちなみによく聞かれるが、親が両方外国籍ならばオランダで生まれてもオランダ国籍にはならない。)
そしてオランダでの出産といえば胎盤食だが、病院の先生や家に来てくれるクラームゾルフ(産褥看護師)に聞くと案外反応は薄く「あ〜....まぁ食べる人はいるよね...うん...」と言ったテンションだった。何なら顔には ”私は絶対無理だわ〜" と書いてある。しかしせっかくなのでどんな摂取方法があるのか調べてみたらそれはもうビックリした。
まず伝統的な食べ方一位は
『フルーツスムージー』
え?
....え?
"Placenta Smoothie" (=胎盤スムージー)という日本語では確実に誰も検索しないであろうワード....恐る恐るググってみると出るわ出るわスムージー画像とレシピ。
ここに一つを紹介(*気を使って画像は載せない)
【免疫力アップ!ベリー胎盤スムージー】
*材料*
・生の胎盤3cm(卵膜は入れないように!)
・オーガニックバナナ / オーガニックりんご
・オーガニックベリー(ラズベリー、ブラックベリー、ストロベリーなど)
〈作り方〉全部をミキサーにかける。終わり。
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なんで全部オーガニック指定やねんというツッコミはさておき、まぁとにかくこんな感じで食べる人は食べる。卵膜は入れないように!という一文がジワジワくる。おそらくバナナやベリーと混ぜれば、ほぼレバーみたいな生臭い胎盤も食べやすくなるんだろうが、しかし見た目はレバーなわけで私にはこれをミキサーにかける勇気はない。バナナとリンゴはそのままくれ。
ただ一部の妊婦の間では(医学的根拠はさておき)まことしやかに信じられている胎盤を食べるメリット。母乳の出が良くなる、産後うつの予防、栄養満点....などがそれだ。本当かもしれないし、プラシーボかもしれない。しかし当たり前だが全員「スムージー!よっしゃ!」というわけではなく、それはちょっと嫌だ...でも胎盤は摂取したい...という人も多く、そんな人たちのために最近は胎盤のカプセル化サービスもあるらしい。一番安く済ますならば YouTubeで "Placenta Encapsulation" と調べてDIYする方法だが、安全度はだいぶ疑わしい。そんなわけですでに専門業者がいくつかあり、そこに外注でカプセル化をお願いする人たちが出てくる。それはごく自然なことだが、その値段設定が中々馬鹿げているのだ。わたしリサーチの結果、安くても€125、なんと高いところでは€425もした(15000~52000円)マイナーすぎるビジネスなのでやりたい放題だ。
(*アムスの胎盤食サポート会社。おしゃれか。http://theplacenta.nl/)
病院の先生のテンション的には「どうしても食べたいならそれは尊重するけど、まぁマジでオススメしないわ。」という感じだったので、私は今回食べるのは見送ろうと思う。胎盤とへその緒に、丁寧にお礼だけしよう。
そして先月は夫と二人で日曜日をフルに使って【出産準備コース】に参加してきた。そこで教わったのは、”陣痛/出産中は気張らず、怖がらず、リラックスしましょう”ということだった。というか基本ほぼそれだけだった。
脳の断面図を見せられて言われた。
「これから痛い注射をします、と言われた人の[注射前]と[注射後]の脳の画像よ。実は全く痛くない注射をされているのに、このように脳では実際に痛みを感じていたの。不思議ね。まぁ要は、気の持ちようで痛みはある程度コントロールできるってこと!」
なるほど。確かにヨガのクラスでもいつも『陣痛中は痛みに精神を持ってかれないようにね。呼吸に意識を持っていって、なるべくリラックスしてね。』と言われる。
そして同じように流れで見せられたビデオがかなり面白く、クラスの中ひとりでケラケラ笑ってしまった。
(*英語の字幕付き。映像だけでも面白い。)
オランダの某テレビ番組で司会をしてる男性2人組が、器具を着けて陣痛の痛みを体感してみるという試み。あまりの痛みにマッチョで強そうな男性が涙を流しているのは相当インパクト強いが、この動画は別に妊婦を怖がらせる為ではなく、やはり”気の持ちようで痛みにも耐えられる”ってことを教える為。向かって右の男性は器具装着前からビクビクしてて痛みにのたうち回った挙句途中でギブアップするが、左の男性は「陣痛体験楽しみだな〜Hahaha」というテンションで挑んだからか、痛くても無事に二時間耐え抜いていた。
そんなわけで「やっぱりリラックスするのが一番!」ということを学んだ出産準備コース。その後はアップルタルトとサンドイッチを食べて、一緒に参加してたイタリア人とアルゼンチン人のラブラブ夫婦の日本旅行話を聞いて和やかに過ごした。
そして先週末は夫婦で病院に持っていく入院セットを作った。日本の病院事情は分からないが、オランダの病院はとにかく赤ちゃんの服から母の入院服まで全部自分で用意しなくてはならない。スリッパもだ。車椅子を使うための€1コインも忘れちゃならない。金とるなよ。まぁしかし良いところもあり、とにかく何を持ち込んでも良いのだ。物でも人でも。というわけでBOSEスピーカーに無印のアロマディフューザーもつっこむ。ごはんは特に出ないので、当日はおにぎりでも持って行きたい。
さっき ”物でも人でも” と書いたが、オランダでは両親はもちろん兄弟でも友人でも知り合いでも何なら赤の他人でも何人でも呼びたい放題だ。最近は出産フォト専門フォトグラファーを現場に呼ぶカップルも多いらしい。おお。そんなわけでカメラ機材は持ち込み放題だということが判明した。入院セットの中に選び抜いたカメラ達もいれる。
(*どこに撮影行くねん、という感じ。三脚は動画据え置き用。)
出産そのものよりむしろ撮影のことを心配している私は、前もって分娩室を見せてもらったが、それがまぁめちゃくちゃ広くてビックリした。漫画のコウノドリで描かれている分娩室とえらい違う。備え付けのシャワールームでは陣痛逃しの熱いシャワーをいつでも浴びれるし、寝たり転がったり歩き回ったりもう何でもできそうだ(陣痛中は常に体勢を変えることを推奨されている。)一番嬉しいのは窓が大きくて早朝と夜でなければそこそこ自然光が望める点。今の時期は一年で最も日が短いというのは痛いが、そこは仕方ない。想像よりも大分いい環境でホッとした。
夫に至っては陣痛中に私が聴く専用プレイリストを張り切って作っていた。結果「I'm in Labor!」(わたし出産中!)と「I'm in Labor -calm-」(わたし出産中 -落ち着きver.-)の2つが出来ていた。サムネはどうかと思う。
(*私の好きな曲を中心に、合いそうなやつをミックス。)
しかしながら助産師さんや産科医の人たちが出たり入ったりする部屋でガンガンに銀杏BOYZが流れてるのは少し恥ずかしいので、大人しくAirpodsで聴こうと思う。いい曲だけど。
”あの娘を愛する為だけに 僕は生まれてきたの”
プレイリストを作り終えた時、夫は大分疲労していたがものすごく満足そうだった。ありがとうね。
そんなわけでここ数週間は二人であーだーこーだ決まらない名前を考え、梅ちゃん(=腹の中の子のあだ名)の歌を作って歌ったりして平和に過ごしていたが、つい昨日出産が急に現実味を帯びる出来事があった。
誘発分娩で入院することになってしまったのだ。
小さいながらもとりあえず成長していた我が子だが、羊水が減ってきているのが心配とのことで、昨日エコー検査した時に「予定日まではギリギリ待てるけど、それ以降待つのはダメね。というわけで誘発分娩するけど、いつがいい?^^」と聞かれ(誘発分娩の可能性はすでに分かっていたものの)いきなり日にち決めて!と言われて焦った。
誘発分娩をしたら早くて次の日、遅くとも3日以内には生まれる。帝王切開のように確実に出産日を決めるのとも少し違う。迷った挙句、土日があけた月曜である12/23(予定日の前日 )にした。娘よ、かなり高い確率で君はクリスマスイブかクリスマスが誕生日になってしまうが、将来どうか恨まないでくれ。ケーキは二個買ってあげるから。あと将来の彼氏、ごめん。
ちなみに美人でフレンドリーな先生が誘発分娩の手順をイラストで描いてくれたが、それがやたら可愛いかった。逆さまで笑っているのはハッピーベイビーらしい。
子宮口を広げために水風船みたいなバルーンを入れて(左図)2-3cmくらいまで広がったらその後卵膜を破って人工破水させるらしい(右図)ここまでの所要時間は長くて24時間。痛みも全然ないらしく、どう考えても暇なので、この日はkindleマンガを読んで時間を潰すことになりそうだ。しかもなんとコウノドリの最新刊がこの日に発売予定だった。最高か。予約。
びっくりしたのは、このバルーン誘発は日本では保険適用外でプラスで数万~20万かかるものらしい。オランダでも自分で病院での出産を選んだらそれだけでお金がかかり、誘発分娩やその他ももちろん上乗せされる。それなのに私ときたら ”赤ちゃんが小さい" というだけで自動的に医療案件にしてもらい、知らぬ間に金のかかる手堅いケアを無料で色々と受けていた。普通産んで数時間で家に帰らされるところを、24時間は万全サポートで見てもらえるみたいだし。
2ヶ月前に自宅出産が出来ないと分かった時はいじけたけど、結果的になんか得したような気がするので(←現金)ラッキーということにしとこう。
そんなわけで、家族ふたりの時間も残り3日。
少しの寂しさと今までの感謝を胸に、今週末は二人でクリスマスケーキを作ってプレゼント交換会をして過ごそうと思う。
一回目の結婚記念日(12/28)よりも先に子供が産まれるとは思ってなかったけれど(そして確実にそのファーストアニバーサリーはスルーされそうだけど)なんたって人生はunpredictable。きっとそっちの方が飽きないね。
これを書いている間もずっとお腹の中で動いている君。
一体どんな子だろう。
会えるのがすごく楽しみだよ。