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妊娠生活日記 2024年12月9日〜12月16日

12月9日(月)
日記祭に参加したメンバーの日記から現場の楽しそうな様子がたくさん伝わってきてにまにましてしている。現場には参加してなくても交換日記の本と旅日記の本の中には存在しているので私の分身がそこにいるような気分。本の中でとても楽しんでいる。この付かず離れず、だけど本の中にもGoogleドキュメントの日記を通してもそこに存在しているこの関係性と距離感を心地よく感じる。友達とはまたちょっと違うこの関係性。この場所に行けばこの人とこの人とこの人たちがいるよねというような空間が心地よい。だからいたり、いなかったり、いなくなったりしたとしても存在だけはそこに在り続けるので何かがどかーんと大きく変わるようなことはないような気がしている。今日も私はこの空間を選んで、ここで日記を書いている。ただそれだけで、ここに書いた日記をこの空間にいる誰かが読みに来たり、私が誰かの日記を読みに行く。ただその繰り返しが心地よいのだ。

「え!日記なんて読んでいいの!?いや、日記ってさ……なんたらかんたら(なんて言ってたか忘れた)」

12月2日(月)の日記より

文学フリマでちょっとだけお話ししたおじさんの言葉を改めて思い出している。日記には読まなければ知りもしなかったその人の日常や感情がどっさり詰まっている。秘密組織の極秘情報とかこっそり残されてるかもしれないし、ごくごく普通に見える夫婦のとんでもない性生活が記録されているかもしれないし、いつも笑顔の人が外には出さないドス黒い心の内を睨みをきかせながら殴りつけているかもしれない。日記はその人であって、その人とは信じがたいものが詰まっているのかもしれない。そう思うと見せるものでもないし、見るものでもないかもしれない。日記の本が流行っている今はとてもへんてこなのかもしれない。

もしかしたら日記に書いていることが真実じゃない可能性もある、書いていると自分の気持ちが誇張されていくこともあるし、思ってもいないことをつい言ってしまうように思ってもいないことをついつい書いてしまうこともある。日記は誰なんだ。ねんむ。また最後の一駅になってしまった。眠かった。私はこの日記を書きながらずっとずっとずっとずっとずっと眠かった。あ〜寝たらよかった。バイトめんどくさい。


12月10日(火)
夢の中にとうとういこちゃんが登場した。夢の中の妊婦健診では一度体内から胎児を取り出して健診をしてまた体内に戻すという夢ならではのやり方で行われていた。いこちゃんはまだまだスリムな身体だったけど、私に似た奥二重にばっさばさのまつ毛で笑ったら目が三日月になるタイプ。とびっきりの笑顔で手足をバタつかせてこちらに抱きつこうとしていた。夢から目覚めたあともあの笑顔がずっと頭の中から離れない。産まれたらこの笑顔をずっと見られるのか……。最高……笑いジワがより深くなっちゃう。

そういえば、この前まくんも笑顔を作って目を三日月にしようと頑張っていた。私も笑って目を三日月にしてみせた。「なんでさきちゃんの目はそんなに三日月みたいになるの〜俺全然ならない〜」まくんの目はどう頑張っても三日月にならなかった。鏡を見ながら顔を動かして筋肉の動きを観察してみた。目を三日月にするのは頬の筋肉なのか?昔から自分のぱんぱんのほっぺたが嫌いだったけど、このぱんぱんさが目を三日月の形にしてくれていたのかもしれない。

ふと思った。最近、顔の筋肉が動くくらい笑ってるのだろうか。毎日が楽しくないわけじゃないけど、声を出して顔の筋肉を大きく動かして笑っている時間がかなり減った気がする。いつから減ったかというと、保育園での勤務を辞めてからだ。こどもと関わって遊ぶ時間が減ってから笑う時間ががくんと減った気がする。だからといって毎日が楽しくないわけじゃない。笑わなくなったわけでもない。だけど、顔の筋肉が痛くなるほど笑う時間が減ってしまった。そのことに気づくととてもさみしい気持ちになった。人の顔の筋肉には心が刻まれているのかもしれない。私の顔どんどん下に垂れてきてないかな。急に心配になってきた。

とはいえ最近は微笑んでいることが多い。今日で妊娠中期が終わり明日からはいよいよ妊娠後期に突入するのだ。今日までいこちゃんが元気に成長してくれて本当にうれしい。まくんも初期のつわりの頃からいまもずっとずっとずっと支えてくれているので本当に頼りになる。私もあと数カ月、家族と一緒に乗り切るぞー!!!


12月11日(水)
バイトの帰り道、電車の乗り換えを待っているとまくんからLINEで写真が届いた。なんだろと思って開くと私の後ろ姿だった。ひょっ!と思って振り返るとまくんがいた。なんという偶然。それから手をつないで一緒に帰った。


12月12日(木)
前回の健診の日から毎日体重を測っているのだけど、本当に体重が増えない。妊娠中ってもっともっと自然に増えるものだと思ってた。後期に突入したのに妊娠前から5キロしか増えていない。それなりに食べてるし、吐いたりもしてない。どうして?出産までに10キロ、せめて8キロ増やすことが目標だけどこの4週間で1キロも増えてない。目標体重まで到達できるのかな……。とはいえ、いこちゃんは今日も元気に動いてる。せめて、少しでもいこちゃんが大きくなっていればいいのだけど……。明後日の妊婦健診、これまでただただ楽しみにしていた健診だけど、体重が増えない、いこちゃんが小さめ、妊娠糖尿病かもしれない、ぽつぽつと不安な要素が増えてきた今、楽しみの大きさはこれまでとは変わらないけど不安の大きさがどんどん膨らんでいる。

「妊娠中 体重 増えない」そうやって何度も検索して何度も同じような内容を読んで、解消されない不安をどうしようもできず、何も満たされず、何度も何度も繰り返し検索している。ただその間もいこちゃんは元気に動いてる。こんなに元気なら……いこちゃんを信じようと気持ちを切り替えては検索、切り替えては検索、その繰り返し。


12月13日(金)
朝まくんと一緒に電車に乗り、乗り換えまで一緒に過ごす。バイトの前にデートをしている気分になり、これから働くことを忘れてしまいそう。誰かと一緒に生活することのあったかさをこの瞬間に感じていた。


12月14日(土)
今日の健診は11時30分から。6時過ぎに目が覚めてトツキトオカアプリを眺めていたら「赤ちゃんの体が大きくなるから大豆や牛肉など良質なタンパク質が必要だよ!」と書いてあった。「そうだ!健診に行く前に牛丼を作って食べよう!」と思って早く開店するスーパーをチェックして一眠りした。そして寝すぎた。やってしまった。支度をしながら牛丼の仕込みをしたのだけれど、間に合わんよな?となってきた。腸活のためにも白菜とりんごのヨーグルトサラダも作り始めてしまって明らかに間に合わないよな?となってきた。しかも脳貧血も起きてきた。もう無理、最悪。

起きてきたまくんに手伝ってほしくて声をかけたけど眠かったらしくしばらく無反応。健診までに牛丼とサラダを食べる時間10分くらいしかないやん、おわた。おわた。おわた!イライラし始める私。まくんがしぶしぶ牛肉を買ってきてくれたので急いで鍋に投入。まくんが「あとは俺が煮込んどくよ」と言うが「あとは勝手に煮込まれるからやることないよ!」と私のイライラ爆発。「自分が早く起きれなかっただけなのに俺に当たらないでよ」とまくんに言われて余計にイライラする私。確かに寝すぎた私が悪いけど、いこちゃん分の栄養面も踏まえて献立考えて、血糖値バク上がりしないように食べ方考えて、あれこれ考えてるだけなのに。まくんは出来上がった牛丼とサラダ食べるだけじゃん。悔しくて泣けてきた。ようやくできた牛丼を食べたら味付けが美味しくなくてさらに泣けてきた。「美味しくない、美味しくない」と泣きながら15分で牛丼とサラダを食べ終え家を出た。まくんに俺に当たったこと謝ってよと言われたけど、絶対に謝らなかった。

気持ちを落ち着かせようと公園の中を通って歩いた。ごはんの献立を考えるのはいつも私だ。栄養面を考えるのもいつも私だ。私ばっかり。風で巻き上がる落ち葉を眺めても、公園で遊ぶ親子を眺めても、どうやっても気持ちは落ち着かなかった。

看護師さんに呼ばれた。いつもの看護師さんじゃなくてベテランオーラをまとった看護師さんだったもんだから、もしかして妊娠糖尿病に引っかかったのかな……と一気に不安になった。だけど、なんと!引っかかっていなかった!

一気にからだの力が抜けてここ数週間張り詰めていた緊張と不安から開放された。「クリスマスケーキ食べていいですか?」「あはは、どうぞ、食べてください!」「この数週間ごはんの食べ方に気をつけたり、おやつはタンパク質を意識して食べてたんです」「それは偉い!ぜひこれからも続けてくださいね!」「はい!頑張ります!」褒められてご機嫌になった。牛丼を食べたからか体重も増えていた。不安から開放されたら牛丼事件のことが一気に申し訳なくなってきた。たしかに私がいきなり牛丼作るとか言い出した上に寝坊したのに、そのまま作りはじめてサラダまで作ったから余計に時間がなくなって、連日仕事でお疲れでたくさん寝たかったまくんに急に無茶なお願いをしはじめて……ああ私最悪だ。待合室で待ってる間申し訳なくなってまた泣けてきた。急いでLINEで謝った。

エコーで見たいこちゃんはやっぱり小さめだったけど2週間前よりも150グラム増えていた。しかもフサフサと髪の毛が生えていた。「ここから一気に大きくなることってあるんですか?」「ないですね〜」(そっか……)先生はいこちゃんの心臓の音と私と繋がっているへその緒を流れる血液の音を聞き、同じリズムかどうかを確認していた。「同じリズムだね。このリズムが一緒なら具合が悪いわけではなくて体質的に小さめなんだろうね、理想的ではないけど」とのこと。まだ1000グラムを超えてないいこちゃんの体重は妊娠8ヶ月にしては理想的な大きさではないけれど、こうやって頑張っていこちゃんなりに成長している。それなら私もあんまり気にせず引き続きいこちゃんに必要な栄養を摂取して、運動して、元気に過ごしていくのだ。一緒にがんばろうな、いこちゃん。

不安は私の余裕をなくしていくんだな。寝坊したのなら牛丼じゃなくて朝マックでもよかったんだ。だけど、朝マックじゃよくなかったんだ。不安だったから。不安だから無理しても無謀だったとしてもなにかに必死でしがみつくんだ。その時の私の気持ちはきっと私にしか分からない。私とまくんの間に産まれるいこちゃんだけど、やっぱりいこちゃんの健康を支えてるのは私の母体なのだ。そりゃ考えすぎるくらい考えてしまう。

帰宅して改めてまくんに謝っていこちゃんの成長やバースプランの計画を立てていくことを話した。2週間前よりもはっきりしてきたエコー動画を見ながらどっちの顔に似てるかとか話した。目が離れていたのでこの目の位置は私に似ているかもしれない。定規で自分の目と目の間を測ったら4センチだった。昼寝をしているまくんの目と目の間をこっそり測ったら3センチだった。やっぱり私のほうが離れてる。離れ目さんもかわいい。というか、自分に似ている部分があること自体が愛おしいと思う。いこちゃんに会えるのが楽しみで仕方がない。

この数週間ずっとずっと我慢していたので、モンブランを食べました〜〜〜!うんまあああ!その後おやつに厚揚げを食べました。


12月15日(日)
早朝4時過ぎにいこちゃんの胎動で目が覚めてしまった。そこから6時過ぎ頃までノンストップで暴れ続けるのだ。最近はお腹の左右同時にドガッと当たる感覚があって頭と足なのか、手と足なのか、手とお尻なのか……一体どんな動きをしてるの?伸びてるのかな?胎動激しすぎて笑ってしまうよ。産まれたらいこちゃんはお腹の中と同じように細切れ睡眠だよね。まくんと協力して付き合うぜ、いこちゃん……。

そして7時にアラームが鳴った。起きるか……ってか起きてたんだけどさ……眠たすぎるよ、いこちゃん……(腹の中シーーーン)寝るんかい!いま寝るんかい!やれやれ〜と思いながら支度をしつつ、ほげ〜としながらキッチンでゆで卵を食べていたら手からツルッと滑ってシンクの中に落ちた。しかも黄身が下を向いた状態で。良質なたんぱく質が半分も。はあ、もういいや……と思ってゆで卵とはサヨナラした。

電車で爆睡しながらバイト先へ向かう。今日は長丁場になるので、おやつにシティーベーカリーでブラウニー入りのチーズケーキを購入。妊娠糖尿病じゃないと分かれば分かりやすく一気に気が緩む。間食にブラウニー入りのチーズケーキを食べ、数時間空けてサラダチキンを食べ、再び作業をしていたらオーナーがおやつにチーズケーキを買ってきた。妊娠糖尿病じゃなかったことを伝え本日2個目のチーズケーキをいただく。ああもう本当に甘いものはおいしい。これまでよく我慢してたよ。偉いよ、偉すぎるよ。だけど、このまま甘いものを毎日食べるのはやめる。2日連続ハイカロリー洋菓子を食べちゃったからクリスマスまでは甘いものお休みだよ。私ならできる。私ならまた頑張れる!押忍!

今日は今年最後の満月の日。眩しかったなあ。バイト中にいこちゃんの胎動がなくてお腹ポンポンしても反応なくて急に不安になったけど、しばらくしたらまたドコスカ動きだしたんだ。やっぱりそうやって元気に動いてくれてる方がうれしいな。夜中でも早朝でも元気な姿が分かるのはうれしいことだよ。安心する。いつまでも元気でいてほしいな。これって親の願いなんだなあ。私もとうとう親になるのか。


12月16日(月)
おやすみも言わずいつの間にか寝て、いこちゃんの胎動に起こされることなくたくさんたくさん眠ることができた。6時過ぎにトイレに行きたくて目覚めてもまだ外は暗くて冬だなあと思う。布団に戻ると、いこちゃんが待ってましたと言わんばかりにドコスカ大暴れ。元気でよろしい。私は動きの刺激を感じる度に唸りながらもいつの間にか寝た。

今日もまくんと一緒に電車に乗り込みそれぞれ仕事に向かう。週末の予定を立てながらのんびりと。電車の乗り換えのため「がんばってなあ〜また夜になあ〜」と交わして別れたが、私が乗りたい電車は運転見合わせ。出勤時間ははっきり決まってないし、しばらく動かない電車に座ってのんびりしてみた。保育士を退職し、いまの仕事が始まるまでの空白の期間、何もかもから解放された今年の4月を思い出した。とはいえ振替の電車を探さなくては……と思い、ここから一番近い場所に止まっていた電車に乗り込むと調べた電車とは違う電車で浅草に向かうことになった。は〜のんびりしよう。このままバイトを辞めて浅草散歩をしたくなった。ガラガラの電車で聞いたことのない駅名を聞きながら目の前に座っている老夫婦を眺める。そうしてたら本来乗ろうと思っていた電車が隣に止まっているとアナウンスが聞こえてきた。身体が勝手に動いて急いで乗り換えた。こうやって今日もバイトに向かうのか。つまんない。

私は本当はもっともっと色んなところに行きたいのだと思う。色んなことをしてみたいのだと思う。


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