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異動・代謝はどうあるべきか? -壺中人事塾での学びシリーズ

もう壺中人事塾の活動も一旦の区切りが近づいてきてしまいました・・・!
11月のはじめに私はフリー人事から転身、社員として(株)へラルボニーのHRチームにジョインし、塾の活動がひとつの大きなターニングポイントになりました。聞けばこの塾をきっかけに転職・独立などのキャリアチェンジが起こる方は多いそうです。学びが深まると視座が上がり選択肢が広がるものですね。ちなみに次の6期生の募集も始まっているそうです!

さて今回のテーマは「異動・代謝」です。異動に関しては一定規模の会社ならどこでもあるけれどもその思想には大きな違いがあるテーマ。代謝に関してはあまりこだわってやれてない会社の方が多いかもしれないという印象です。

異動によって成長した経験があるか?

これが今回の講義の最初の問でした。
「異動」と「成長」が結びつかない人もいるかもしれないので、この問いを扱う前に、そもそも異動は何のためにすることなのか?という点を補足します。
テキスト「図解 人材マネジメント入門」では、異動は3つの目的のもとに行うものであるとの解説があります。

1. 適材適所
中長期:経営戦略を実現する組織体制の変更のため
短期:特定業務の人員不足や人員過剰の調整のため

2. 人材開発
能力向上・キャリアの実現・周囲との良いつながりを持つなど個人がより成長するため

3. 幹部育成
企業内の様々な現場で経験を積み、各所に協力者のいる幹部を育成するため

坪谷邦生「図解 人材マネジメント入門」p165

適材適所を実現するために配置転換を行うという企業は多いと思いますが、人材開発、幹部育成までが射程に入っている企業はもしかしたらそれと同じには多くないかもしれません。でも私自身の原体験としても、異動によって成長したことはたくさんあるし、講義中のチャットでもたくさんの「異動からの成長」経験談がありました。

私自身の原体験でいえば、総務部と人事を行き来した異動が大きかったかなと思います。私はリクルートに在籍していた14年のうち、9年人事、3年総務、2年産育休、みたいなキャリアです。なのでほぼ人事なんだけど3年間だけ、総務部という、人事とは全く関係ない部署にいたことがありました。

新卒で人事に配属され、その後社会人2年目の時に総務に異動。最初はとても地味なことが多い総務の仕事に対して自分なりの意味づけができなくて、デスクに座ってぼんやりと、「私このままでいいのかなあ、なんか資格でもとった方がいいのかなあ・・・」なんて業務時間内に資格のことを検索してるみたいな、お恥ずかしすぎるひどい給料泥棒なありさまでした。。。

でも1年くらい経った時にある転機が訪れて、突然総務の仕事が楽しくなる瞬間があったのです。

ちょっと話が逸れそうだけど大事なエピソードなのでこの小さな転機の話をさせてください。当時私は総務の中でも「オフィス美化」というテーマを担当していて、例えばゴミの分別をどうしたら正しくやってもらえるかとか、シュレッダーのカスを従業員が自発的に掃除してくれるにはどうしたらいいかとか、オフィス内にある電子レンジをどうしたらみんなが綺麗に使ってくれるかとか、そんなことを考えていました。ある日、電子レンジをきれいに使ってもらうために、レンジの横にウェットティッシュを置いておいて、汚した人に掃除してもらおうと思いつき、当時の上司に、「ウェットティッシュ、アスクルで買っていいですか?ピジョンとかウェッティとかいろいろありますけど、何でもいいですよね?てか細かい相談ですいません!」と話しかけましたw

でもその相談に対する、上司の回答にめちゃくちゃハッとしました。
「確かに細かいわね(笑)でもね、そういうお掃除って、善意の人がやってくれることなんだから、ちゃんと厚手で破れにくくて、お掃除しやすいものにしてあげてね」
この言葉を聞いて私が学んだのは、ああ、どんな仕事も必ず相手があって、その先に思いを馳せるべきヒトがいるんだなあ、ということでした。正直なところ、総務の仕事は地味で瑣末なもの、と馬鹿にしていた自分が本当に心の底から恥ずかしかったです。

そこからは、どんなに地味で小さいことのように思える仕事も楽しかったです。だってどんな仕事も誠実にやれば必ず誰かのためになるということを私はもう知っている。そして小さな仕事を真っ当に果たせない人に、大きな仕事なんか来るわけがない。こういう認知に変わった後から、数億円規模の総務コストの予実管理、会社統合のプロジェクト推進などなど任される仕事の範囲がどんどん大きくなりました。今の私のプロジェクトマネジメントの基礎、仕事を進める上での段取り力、キーマンをおさえる根回し、そして何より全ての仕事の先にいる人への愛。こういうものは総務の時代に身についたものです。

この総務での3年間を経た後にまた人事に戻り、社会人5年目くらいからはずっと人事領域の仕事をしてきました。当時の人事ではこういうプロジェクトマネジメントの力を持った人が少なくて(特に私が長く在籍した新卒採用の部門は入社3年目以内くらいの若手を配属して数年で配置転換するのが常だったせいもあります)、総務で磨かせてもらったそういう力が自分の糧になってこの時の仕事を助けてくれました。元々ベースにあった人に向き合う力に、総務にいったことでコトに向き合う力が加わったようなイメージです。

こうして振り返ってみてもやっぱり異動で違う仕事をすることで当然違う筋肉を使うのであって、異動には人材開発の要素を多分に含みます。この人材開発としての異動を意図的にできるかどうか、そこは人事や経営者の力量が試されるところかもしれません。

異動の希望を通すべきなのか?

さて、今回の講義で私がクリアにしたかった問いがこれです。従業員の異動の希望をどのように扱うのか、ということ。
個人的には、予期しない異動によって成長した経験もたくさんあるし、そもそも私は「人は自分のやりたいことを自分ではよくわかっていない」という立場です。そんなよくわからない、本人の「やりたいこと」「will」のようなものだけを起点に配置を決めるのは危険なのではないかと思っていて、ここについては皆さんどんな意見があるのだろうというのが講義前から気になっていました。

ここに関連して講義の中で坪谷さんからお話くださったのが「管理職やりたくないです問題」。ある会社のエンジニアリングマネージャーと話していた時に、管理職に任用する際、やってみたいですと息巻いてる人に任せるとあんまり上手くいかず、逆に、絶対やりたくないですという人に任せると上手くいく、という話があって、というストーリーをシェアしてくださいました。つまり、食わず嫌いだけど本当は適性のある人を見抜いてアサインした方が上手くいくことがある、ということだろうと思います。

さらに放課後(講義後の雑談タイム)に、異動希望を叶えるべきかどうか、についてストレートに坪谷さんの意見を聞いてみました。
すると坪谷さんは
「その人の魂に反することを押し付けるな、というのが持論です」
ということをお話くださいました。

その時なんだかその言葉だけで妙に腹落ちしてしまって、「魂に反することって何?」というのをそれ以上具体的に深く掘ることをしなかったのですが(もっと根掘り葉掘り聞けばよかった・・・w)、いま私なりに言語化すると、その人自身が意識的に自覚していて言語化できているかいないかにかかわらず、人には1人1人果たすべき仕事があって、人事や経営層はそれを見抜いてアサインしなければならない、というような意味合いではないかと感じました(私の一方的な解釈かもしれません・・・間違っていたらごめんなさい坪さん・・・)。それを本人が言語化できている場合は本人の希望の通りに配置すればよく、逆に本人もわかっていない場合は希望を通すことが必ずしも良い結果を生まない、ということではないかと今は理解しています。

あなたの会社は代謝の設計をしていますか?

そしてもう一つ講義で印象深かった問いがこちら。ちなみに代謝とは、社員が会社を辞める「労働契約の終了」こと。そして代謝の設計をするというのは、人が辞めるということを意図的に引き起こすコントロールをするということです。この「代謝の設計」ができているか、に関しては講義中のチャットでも、そこまで設計できていないという声が大半でした。

代謝の設計については、「うちの会社は退職率をコントロールしています」などとオープンにしてしまうことは従業員からの不安を呼びかねない話でもあり、なかなか実例が出てこないテーマでもあり、少し着手が難しいかもしれません。

改めて、代謝の設計は何のために必要なのでしょうか?ここに関してはテキスト内にも記載がありますが、その他には以下の曽和利光さんの記事が分かりやすかったです。要は、自然に一定の退職が毎年発生して組織の年齢構成のピラミッドが保たれるなら何も問題はないが、そうではなく一度入社したら退職しない風土が形成されている場合には、将来的に活躍しない層のリストラを断行しなければならなくなることです。退職率をモニタリングしてコントロールするって、なんだか社員に優しくない会社のようにも聞こえますが、ある時点で突然いっせいにリストラをすることと、定期的に計画的に去るべき人に去っていただく手を打ち続けること、どちらが痛みが大きいのか?と考えると腹落ちするものがあるように思いますね。

最後に、曽和さんも記事や書籍で触れていらっしゃいますが、リクルートの代謝マネジメントは、ポジティブに去っていく人を応援する仕組みと、居続けるべきでない人に去っていただくための仕組みの両輪が上手く設計され運用されていました。と言いつつ、ここで私が具体的に書くのは憚られる気がするので・・・・直接こっそり聞いてください・・・・w w w

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