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持続可能なリゾートホテル

バリ島の高原地帯に位置するムンドゥックにMunduk Moding Plantation (MMP)という名前の4つ星のリゾートホテルがある。

「リゾートホテル」と聞くと、世界のお金持ちが休暇を楽しむために、現地の自然や文化を消費するようなイメージがあって好きではなかった。

バリ島で私は知人の家に泊めてもらっていたのだが、彼女の知り合いがホテルの副会長であるとのことで、特別にホテル内のガイドをしてもらう機会に恵まれた。

彼は、ムンドゥック出身でオーストラリアで勉強したのちに故郷に戻りこのホテルを建設した。

村の人々が、どんどん都市や海外に出て過疎化が進んでいる。
この状況に危機感を覚えた彼はホテルを建設し、現地に雇用を生み出した。海外に留学して帰国した人を重役に採用し、決してホテルの重要なポジションを外国人には渡さない。

ホテルの建物は全てバリの伝統的な建築技術を活用し、労働者は村の人々。
近年、モダンな建物が好まれ、失われつつあるバリの伝統的な建築技術の継承を狙っている。

ホテルで使っている家具は全てホテルの敷地内にある家具工場で作られている。作り手は村の人々、材料は近くの森の木や、廃材を集めて作っている。
もちろんクオリティに妥協は見られない。現地の人を雇用しながら、同時にハイクオリティの家具作りの指導を行なっている。

ホテルの敷地内はジャングルのように緑がいっぱいでたくさんの花々が咲いている。バリで絶滅しかかっている植物の種を集め、スタッフのケアによって大切に育てられている。リゾート開発がエコシステムに悪影響を与えずに、むしろエコシステムを守る役割を担っている。

スタッフはみんな素敵な笑顔でバリ語の挨拶をする。英語でもインドネシア語でもなく”バリ語”にこだわるのはバリ語が話されなくなってきているから。村の人々同士が挨拶するように、どの国の人にもバリ語で挨拶をするのがここのルール。

竹で作られたコミュニティスペースでは、地元の子どもたちと宿泊者の子どもが一緒になってバリのダンスの練習をしていた。子どもたちにとっては文化交流の機会にもなる。毎日、バリの文化的なイベントを企画して地域の人も観光客も一緒になって楽しむ時間を設けている。

ホテルは同時に100%オーガニックのコーヒー栽培も行なっており、そこでも現地の人々を雇用している。さらに、村のオーガニック化を進めるために、ホテルででた生ゴミは全てコンポストにして現地の人々に安い価格で売っている。

お部屋の綺麗さや屋外プール、スパ、サービスどこを切り取っても文句なしの正真正銘のリゾートホテルだ。リピーターが多く、いつも部屋はほぼ満室だという。

とにかくスタッフの雰囲気が非常に良い。考えてみれば当然のこと。彼らは同じ村の出身者で海外のオーナーに”雇われている”のではないのだ。重役も労働者もみんな同じコミュニティに属する仲間であり時には家族。平和な雰囲気がバリの一昔前の雰囲気を想像させる。

こうした信念のあるリゾートホテルがあるなんて。
観光客が、バリの文化を”消費”するのではなく、”守る”ことができる環境。

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