『もしすべてのことに意味があるなら』を読んだ本当の理由
「私、乳癌になりたい。」
あの日、私は本気で思ってた。半分頭がおかしくなってたから。
癌になったら、一旦すべてがリセットできると思ってた
全てがどん底で、これでもかって勢いで色々なことが重なっていた時期だった。景色が全て黒く見えた。そんな中、たまたま受けたマンモグラフィーだった。
検診車に乗るとき、「もしも乳癌になれたら、闘病のために一旦すべてが中断できる。全てリセットできる。それなら乳癌になった方が幸せかな?だって、また白紙からスタートできるもんね。私、乳癌になりたい。でもなれる訳ない。」と、本気で思った。
中身を見ないで捨てようとした検診結果だったのに
届いた検診結果は全然興味が無くて、中身を見ないで捨てようとした。どうせ結果なんて問題なくて、見るだけ無駄と思って封筒を持った瞬間…
「あれ?封筒が厚い…。どうして中身がこんなに?」
まさかと思って、封筒を急いで開けた。そこですぐに目に入ってきた文字。
『要再検査』
だった。何が写ったかが、画像まで付いていた。
私は全身凍り付くような思いがしたけど、もう重なりすぎる過酷な運命を前に、今はこういう時期なんだなと客観的に見る自分もいた。さすがに「やったー!人生リセットのチャンス!」とガッツポーズまではしなかったけど。
でも神様が教えてくれたのだとも思った。「検診車に乗るとき貴方が望んだことは、こういうことですよ。」と。
すぐに受けた再検査、結果は良性の腫瘍だった。嬉しくもない、モヤっとする、でも私に教訓をくれたような出来事だった。本当に乳癌になりたかったなら、結果を見てガッツポーズをしても良かった訳で。それがなくても、腫瘍はあったんだ、、、って、健康を望むなら無い方がいいんだろうし。
元日本テレビキャスター鈴木美穂さんの生き様を知る
Yahoo!newsで知った鈴木美穂さんの生き様だった。本当に要点しか書かれていないのに、読んだ瞬間に号泣した。24歳で乳癌を発症して、激しい闘病を超えて仕事復帰、恋愛もして結婚もした。癌になった人達のために、自分の経験を活かそうと奔走し続け、マギーズ東京(癌に悩む方々が無料相談できる施設)を設立。そんな内容だった。
どうして、そこまで強い生きられるの?そう思った。
私は乳癌になりたかったのではない、挫折の言い訳が欲しかった。
鈴木美穂さんの生き様を知り、私は気づけたことがあった。マンモグラフィーを受けたとき、「乳癌になりたい。」と心から思ったつもりでいた。でも本当は違った。私は乳癌になりたかったのではない。当時、これでもかと襲ってくる逆境を挫折する言い訳が欲しかったのだ。
乳癌になったから仕方がない。
そう言いいたかったのだ。挫折しても、自分のせいじゃない。癌のせい。癌になったから仕方ないじゃんって。
でも、そんな言い訳をしたとしても通用するのは自分だけ。だって、癌になっても仕事復帰して、恋愛もして、結婚もして、自分の経験を活かすために奔走して、しっかり形にできた人もいるよ。
100%ストイックに生きなくても良いし、自分に言い訳して満足して幸せになれるなら、まあそれもそれだけどさ。癌になったなんて言い訳しんどいよ。誰も幸せじゃないって。
鈴木美穂さん、気付かせてくれて有り難う。
彼女は私に、生きる指針を見せてくれた気がした。
憧れの人にサインまでしてもらった本なのに
マギーズ東京で開催されたイベントに参加して、マギーズのことを詳しく聞いた。そして何より、鈴木美穂さんに会って、お話ししたかった。その目標が達成できたことが、たまらなく嬉しかった。マギーズ東京の寄付もして、迷わずに鈴木美穂さん著『もしすべてのことに意味があるなら』を購入した。本の印税は全てマギーズ東京への寄付になるということもあり、参加者の殆どの方が購入していた。
さっそく読み始めた本。一気に読破するつもりだった。でもそんな気合いは、すぐに覆ってしまった。こんなはずじゃなかったのに…
24歳で乳癌という過酷な運命を背負いながらも、あまりにも温かく優しい家族に支えから始まるストリー展開が苦しくて、読んでいて目眩がして吐き気がした。
「これの何が人生真っ暗よ。私にこんな優しい家族いないわよ。」
そう思った。包み隠さない本音はこれだ。美穂さんにサインまでしてもらった本なのに読み始めてすぐに投げ捨てたくなった。
でも、すぐに自分に問いかけた。「じゃー、お前は全ての要素において自分より不幸な人を探し出して、その人が自分より頑張っていれば満足か?さすがにそれは違うだろ!」
それでも今はこの本が読めない。でも私は必ずこの本を読む。読める日が必ず来る。そこまで遠くない将来、読める日が必ず来る。その時に必ず読む。
そう思って本を置いた。
読み終えることができたのは本を購入した1年後
なぜなのか理由は説明できない。でも今ならこの本を読めると思えたのが購入して1年後の今だった。この1年も本当に色々あった。全力で生きた。泣いて笑って、自分らしく生きた。心のどこかで早く『もしすべてのことに意味があるなら』を読める自分になりたいと思っていた気がする。
読み終えるまで何度も泣いた。でも温かい家族の話も全く辛くなかった。読めるようになれた自分の成長も嬉しかった。
有り難う、鈴木美穂さん。
私も美穂さんのように、この世に生まれてきた自分の使命を果たしたい。
『もしすべてのことに意味があるなら』を読んでください
明日、「あなたは癌になりました。ステージⅢです。」と言われたら、まず何をしますか。優先順を付けて、理路整然と答えられたら凄い。この本を読んだ私ですら、まだ整理できていない。普通の方であれば必ずぶつかるであろう壁や困難、葛藤がすべて書かれています。でも、もちろん医学の専門書ではない。若さ故に起こる苦しさ、女の子らしさもあり、医療関係者にとっても患者側にとっても参考になります。
誰しもいつ癌になってもおかしくないのに、未経験者はどこかで他人ごとのように考える。それは仕方がないのかもしれない。今は他人事でもいい。それでもこの本は、必ず役に立つ日が来ます。私はそう思います。
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