見出し画像

韓国での政治騒動について

私は韓国が好きだ。
韓国と日本の間に色々な歴史や問題点があることも、お互いをよく思っていない人たちがいることも知ってる。それでもなお、韓国が好きだと言い切れる。

1つだけ注文をつけるなら「あんめっけへじゅせよ(辛くしないでください)」と言ったらちゃんとマイルドにして欲しい。辛いんだもん。それだけ。
グルメも美容もドラマも観光も楽しい韓国が大好きだ。

だから今回の騒動を知って心底悲しくなったし、尊敬したし、怒ったし、心配したし、色んな気持ちが溢れてきた。そして色々考えた。だからちょっとその事について書いてみようと思う。

騒動を知った瞬間

前の晩19時頃から、私は新しく始める仕事について勉強していてアドレナリンがドバドバ出ていた。私は過集中な気があるので、一度集中してしまうと寝るのも食べるのも忘れて16時間くらい齧り付いてしまうクセがある。これが始まるとアドレナリンが切れるまでに40時間くらい必要で、やるべき事が終わっても眠れず家中がピカピカになることが多い。

そんなこんなで23時にサイゼリヤを出て、帰宅してからも続いた集中が弱まったのが朝の7時だった。いつもはTwitter(Xとは認めていないので)に齧り付き時間を過ごしている私にとって、19時から朝7時までのゴールデンタイムにTwitterを1ミリも見ていないことは珍しかった。

「すごい集中できたな〜」と思って開いたおすすめ欄に最初に飛び込んできたのは次の文字だった。

「韓国で戒厳令とかww」

一瞬で流れてしまったので正確な文面ではないのだけれど、多くの情報がない文字列と生えた「ww」にあまり深刻な印象は受けなかった。
むしろ学のない私は「マスコミ系のゴシップかな〜?恋愛?お金?」なんて思っていた。
詳しくない私ですら、数日前に韓国アイドルが事務所と揉めて記者会見を開いているのを見ていたので、その続報辺りかと思ったのだ。

ところが次に目に入ったのは一枚の写真だった。

この写真と一緒に投稿された文章は
「戒厳令解除のために国会に入ろうとする議員。
そしてそれを助ける市民」

といった内容だった。

国会?議員?自分の想像と違った文章に、検索して情報を得ようとすると、当然のように「戒厳令」がトレンド1位に上っていた。
私が徹夜で集中している間に、何やら大変なことが起こって、そして終わったらしい。

流れてくるTLを追うと、もう既に沢山の人がわかりやすくまとめたツイートを放流していて、大体の簡単な事情は飲み込めた(気がする)。

日本での報道

Twitterでなんとなく事情が飲み込めた頃、時刻は7時30分だった。この時間に起きてる事が珍しいので朝の情報番組については詳しくないが、キリのいい時間だしトップニュースを扱っている局もあるだろうとTVをつけた。
朝はみんな出勤時間が違うので天気予報とトップニュースとホッコリ話を永遠に繰り返してる印象だった。(これは勘違いなの?だれか教えて欲しい)

ところが、流れてくるのは犬の動画・秋の紅葉・美味しいものランキング…
NHKですらほんわか映像が流れていてびっくりした。
TLを掘りながら定期的にチャンネルを回し、やっと詳しい報道にありつけたのは8時15分頃だった。

その間にもTLでは女性が銃を掴む映像や、軍が銃の種類で真意を示していたこと、市民の奮闘などが嵐のように流れてくる。頭のいい人が状況をまとめてくれて、問題点を出してくれて、日本語ができる韓国人が辿々しく温かいメッセージを書いてくれたりもしている。

SNSを神格化したいわけでも、マスコミを貶したいわけでもない。だけどあまりの情報濃度の差に、今の日本では受け身でいることの危うさを感じざるを得なかった。

日本だったら…

情報を受けての一番最初の感情は
「尊敬」だった。

大統領の一存で事態が勃発することも。
それに対抗するルールがあることも。
市民が協力してルール通り逆転することも。

市民が考えて、団結して、迅速に行動できるパワーは尊敬しかない。そしてそれが間に合って「おめでとう」の気持ち。

韓国の方が「民主主義を守れた」「過去を繰り返さない」などとツイートしているのを見た。
あなたたち一人一人が強い意識を持ってるからできたんだよ。正しきが正しきに収まったんだよ。隣人として誇らしい。平和の正解を見た気がする。ありがとう。

それと同時に怖くなった。
もしも日本で似たような事態が起こったらどうなる?
私は正確に予言できる。
「みんなTwitterで文句を言う」
かなり自信のある予言。なぜなら私もそうするから。

日和見主義な日本人には勇敢な隣人のようなバイタリティを持つ人間はそう多くない。政治への意識も低い。自信もない。この辺りの自論については次に書くが、このようなスピード解決は望めないだろう。(そもそもトップも日和見主義なので暴走もそうないと思うが)

日本と韓国の違い

ここからは過去の韓国旅行で体験したこと・聞いたことを踏まえて自論を展開していきたい。

立地的にも比較的近く、言葉や料理、顔立ちだってそれほど遠くない私たちが、なぜこれほどまでに差があるのか。
それはやはり「戦争への危機感」だと思う。

コロナ禍の前なのでもうかなり昔だが、私がまだ大学生だった時、韓国旅行は2,3万で行けた。
その上美味しいものがたくさんあり、コスメやドラマも魅力的で、そしてほんの少しだけ日本より物価(レート?学がなくて申し訳ない)が安かった。

これは行かない理由がない。
私は韓国へ5,6回渡っている。毎回同じもつまらないので、最初は市内観光のガイドをつけた。そしてそのうち1回は韓国と北朝鮮の国境である北緯38度線も越えた。

どちらのガイドがどのタイミングで教えてくれたのか覚えていないし、身内からも記憶力が壊滅で有名なのであまり鵜呑みにしてほしくはないが書きたい。
興味がある人は自分で調べて裏付けをとって、私が間違えていたら指摘して欲しい。

・兵役という名の教育

まず韓国といえばだが、兵役がある。免れるには厳しい条件がある上に、条件を満たしていても周囲の目によって実際はほとんど免れないあの兵役。
韓流アイドルが入隊・除隊することが日本のニュースでも流れるあの、兵役。

これについて深く考えたことがなかった当時の私は「韓国の男の人は大変だなー。日本みたいに職業(自衛隊)としてじゃ成り立たないの?全員必要?兵役制度のない日本の方が平和的には先進国??」
なんてフワッフワした、全方面にすこぶる失礼な考えを持っていた。

これを改めさせてくれたのは市内観光のガイドのおばちゃんだった。細かい所や言い回しは確かじゃないけれど、こんなことを言っていた。

「日本には兵役がないネ。
だから日本人は韓国が戦争のために兵役してると思ってる。
でも、私たちあんまりそんなつもりないヨ。
韓国はまだまだ男女の役割がハッキリしてる。
男は家族、恋人、友達、そして自分のこと何かあったら自分で守れるように鍛えにいく。
私も息子2人兵役行った。最初は心配。でも、行かせて良かった。
体もしっかりするし、心も強くなる。顔つきが全然違う!ちゃんと帰ってきてホッとした。

国の制度としては有事に備えてということなんだろう。
でも実際に暮らしている国民としては成人儀礼の1つであり、自身の修行であり、義務であり、教育の一環であるようなニュアンスがあった。

このオバチャンは他にも兵役中の恋愛や休暇の様子、息子さんのエピソードなど話してくれた。期間が長いとか、時期によってはキャリアに響くとかの、国民が持つ不満も教えてくれた。そこに「兵役をなくして欲しい」の言葉がないのも興味深かった。
まるで日常の紹介をするような語り口だったからこそ、「戦争」としてではなく「生活」としての兵役を感じることができたのだと思う。

そして今回のように国が横暴を働いて軍が出動した時、対峙する市民がほぼ元軍人なのだ。
自分たちに軍での経験があれば、それでできること・できないことの判断もしやすいだろう。
立場と装備は違っても戦いに対する心構えや自信は、除隊したからといって脱げる物ではないからだ。

当たり前のようにほぼ全ての男性に軍経験があるというのは、今の日本では絶対にあり得ない。(どちらが良い悪いという話ではない。あくまで「違い」の話)

・日常に見える緊張

男性のほぼ全てが兵役に行くとなると、数字の上では国民の半分程度への影響にも感じる。しかし実際はそうではない。
兵役に行く人間を待つ家族、友達、恋人。規則で連絡が取れない日々を待ち、次に会える日を数える生活は「兵役に支配」されているといってもいいのでは?
そして待ち侘びた日、文字通り「立派になって」帰ってくるのだ。たくましく自信をつけて帰ってくる姿は、毎日どこかで仰天チェンジ、みたいなものではないかと想像してしまう。

そして現地の人と関わりのない観光客でも感じられるものがある。駅の設備だ。
本当は写真も載せたかったのだが、いかんせん大昔なので探せなかった。
大きな自動販売機のような透明ガラス、
あるいはベンチの下が透明ガラスになっており中には防災グッズが入っている。

日本の地下鉄にも防災グッズはあるが、ガラスケースに入っていることは基本的に無いと思う。
それが韓国では透明なガラスケースに入っていて有事に蹴破って使用できるようになっているのだ。

この時点で誰もが防災グッズの所在を探せるデザインが素晴らしいし、危機意識の高さを感じる。
そしてその中に、もっと見慣れないものがある。

ガスマスクだ。
日本ではフィクションなどでしかお見かけしないその物が、まるで展示物かのようにガラスケースの中に並んでいるのだ。私はこの時初めて本物を見たし、日本に帰ってからは見たことがない。
実物がすぐ手の届くところにあることを認識した時、背筋がゾワっとしたのを覚えている。

そして駅そのものがシェルターになっているらしい。だから韓国は地下鉄メインだとか…。
地上を走る道路にも工夫がある。戦車が通ることを想定して道幅が決められているというのだ。
日常の中にまだまだ危機意識が根強い事が感じられる。

・北朝鮮の存在

韓国旅行の際に、北朝鮮との38度線も訪れた事がある。ソウルの中心部からバスに揺られてどんどんと田舎の景色が過ぎていく。

途中で見えた山は不自然に半分だけハゲていた。
韓国は物資があるため冬の寒さを乗り切る設備が充実している。
このハゲた部分は北朝鮮領で、冬の寒さを凌ぐため薪として伐採された跡なのだと聞いた。

バスガイドから韓国と北朝鮮の歴史や出来事を聞いた中でも、印象に残っている事がある。

北朝鮮との戦争はまだ終わってない。
あくまでも停戦しているだけ。

だから向こうの気分が変わったら明日にでもまた戦争が始まるかもしれない。
そのために韓国は常に備えているし警戒している。

恥ずかしくもこの辺りの知識に乏しかった私には言葉だけではこの緊張感は伝わらなかった。
しかし、目的地に近づくと少しずつ肌で感じるのだ。

いくつかの検問やパスポートの提示などを求められ、その度にバスが止まる。
銃を持った男がミラーでバスの下を探索する。
このエリアには韓国籍のある人間は立ち入れないらしく、外国籍のパスポートを持っている事が必須条件だった。

日本では感じたことのない物々しい雰囲気に、バスの中はシンと静まり返っていた。

そうしてたどり着いたのが、韓国旗と米国旗が並ぶ建物だった。

スクリーンのある部屋で映像を見ながらの説明を受け、
「中止と言われたら従う」
「死んでも文句は言わない」
そんな事が書いてある文章にサインした。

そうしてあの、よく目にする境界線や調印室を拝む事が許されるのだ。

右手前にある縁石から向こうは北朝鮮
停戦を結んだ調印室

知っていることと、実際に経験することは違う。
この線と壁を超えた先に寒さに耐え、現代社会と隔絶された生活を送る人がいるのだと実感した。

北朝鮮の軍事力は実際はそんなに警戒していない。
何より怖いことは、北朝鮮が無くなると韓国は中国と地続きになってしまう。

あの国が怖いことは皆さんもよく知っているはず。韓国と北朝鮮の問題だけでなく、世界中の情勢が変わってしまう。
だからこそ米軍も身を置き国際的に協力している。本来なら隣人である日本も、ここに加わるべきではないのか?

ガイドにそう説明された。
私自身も、その話には一理あると感じた。
日本は少し、平和ボケが過ぎるのかもしれない。


大統領の心情は?

韓国の大統領がなぜいきなり戒厳令なんてものを出したのかわからない。
コレを政治的な意見を述べつつまとめるほど、私はお隣の政治事情に詳しくない。

だけど、数日前に回ってきたツイートを思い出してしまったのだ。
「トロピコ」というゲームについてのそのスレッドは文章もとても読みやすく、まるでプレイしているかのように思わせてくれた。
そして世の独裁者について考えさせられたのだ。

私ではうまく説明できないので、丸々こちらを読んで欲しい。

韓国の大統領だってどんなに支持率が低くても馬鹿ではないだろう。それがなぜ、一夜にして世界中を驚かされる凶行に走ったのか。彼が何を思って、周りのことがどう見えていたのか。
今後明かされるのだろうか…?


これから

日本では現在、戒厳令に等しい「緊急事態条項」を憲法に盛り込むか議論が続けられている。

テレビのコメンテーターが
「コレが憲法に入ったら日本でもこんな騒動が起こり得るってことの証左じゃないですか!」
と反対派としての意見を述べていた。

でも私は
「トップのみの凶行なら止める事ができる証左」
でもあると思うのだ。

もちろん、先に述べたように日本人にコレを止められるほどのバイタリティがあるとは思えないが、世界中の民主主義国家に希望として語られる出来事なのではないかと思う。

私はただの一般人なので、これについてどうしていこう!とかこれをしよう!なんて啓蒙することはない。

日本人が平和に過ごしている中で、明らかに世界中が少しずつ変化していることは確かだ。
このままでは気づいた時には遅い状況になりかねないとも思う。

だけど私は、沈みゆくタイタニックの中で、静かにベッドで目を閉じるあの家族みたいになるのだ。

願わくば、最後に美味しいものを食べて……。

つい2皿も食べた韓国の豚足


初めての記事らしいものが、とんでもない長さになってしまったけれど。
飽きてきたのでコレで終わる。

ありがとう韓国!
また今度遊びに行くね!!

いいなと思ったら応援しよう!