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上方から江戸へ:日本酒が辿った“くだらない”道のり

「日本酒を、もっと身近に」という理念をかかげながら活動している日本酒メディア・コミュニティ『酒小町』。今回は「日本酒と関わる ”上”と”下”」についてお話していきます。 

このマガジンでは、日本酒の豆知識をわかりやすく、ちょっと飲んでみたくなるようなコラムを書いています。

日本酒が好きという人はもちろん、日本酒がはじめてな方、好きで飲んでいるけど専門用語まではちょっと…という方、これから日本酒を勉強してみたい!という方、ぜひお酒を片手に読んでいただけると嬉しいです。

ただ飲むだけでもお酒は美味しいですが、少し知識をいれるだけで普段飲む日本酒が更に美味しく、楽しくなりますよ! 

ゆるゆる日本酒教室、ついに!第100回目となりました!

これも見ていただける皆さまのお陰でございます。
本当にありがとうございます。

とはいえ、特に特別感はない内容ですので、ご了承くださいm(_ _)m


さて、「酒を飲むのは時間の無駄、飲まないのは人生の無駄」


これは僕の好きな言葉の一つです。

実は、誰が最初に言ったかははっきりしません。

酒好き特有の、あれこれと理由や屁理屈を言ってこじつけて、お酒を飲むことを正当化する言動は、お酒を飲まない人にとっては、なんとも理解しがたい、くだらない戯言でしょう。

しかし、この「くだらない」という言葉。

「またそんな、くだらないことばかり言って」というような使い方をする言葉ですが、この「くだらない」という言葉、日本酒と関係があります。


今回は「くだらない」日本酒について見ていきましょう!


諸説ある「くだらない」という言葉

時は遡り、江戸時代。

当時、将軍を中心とした政治組織である幕府の首都は、江戸でした。
徳川家康が作った江戸幕府ですね。

一方、天皇を中心とした組織である朝廷の首都は、京都でした。
(江戸時代以前から、京都は日本という国においてとても重要な場所です。)

江戸幕府ができてからは、政治の中心を江戸に移したものの、文化的には京都の方が圧倒的にレベルが高かった状況でした。

その後、徐々に人口増加や、それに伴ってのモノの消費量が多い江戸に、政治も文化もメインストリームが移っていきます。


この移り変わりがポイント!

皆さん、上方(かみがた)という言葉をご存知ですか?

日本の歴史を振り返る際に、かつて天皇が住んでいた京都を「上」とする考え方から生まれた言葉で、「上の方」で上方です。

京都を中心に、現代でいう大阪や兵庫など、近畿地方を指す言葉となっています。

前述の通り、当初の文化の中心は上方。

上方文化を彩る食材・民芸品・衣類などの品々は、その知名度や品質が評価され、良いものは上方から江戸にまで出荷されるようになっていきます。

この、上方から江戸へ出ていくものを、江戸に下る、と表し、下りものと言いました。

逆に、江戸にまで出ていかないものは、下らないもの、とされ、ここから転じて、「取るに足らない、価値のない」という意味になっていきました。
・・・そう、皆さん、もうお気づきですね。

江戸に下っていくものの一つに、日本酒が含まれています!

上方にとどまっている酒=「くだらない酒」

現代でも飲むことができる兵庫県の剣菱など、上方で作られていた評判の日本酒は、徐々に江戸に下っていくことになります。

江戸時代後期には、江戸(東京)の町で消費される日本酒の9割は、灘の酒だったと言われています。 第91回【セイシュウマサムネ】より

逆に言えば、江戸に出なかった、上方のエリアでとどまっていた日本酒も存在していたことになります。

それがまさに「くだらない酒」だったと言えます。


船でのお酒の輸送が始まったのも江戸時代

ちなみに江戸にお酒を持っていく方法として発達したのが、船での輸送です。

当初は食品や民芸品、お酒もすべて一緒の船で運ぼうとしていました。

しかし、お酒は一度の量が多く、かつ、菰樽で一律にその量を管理できるものだったため、ほかのものと一緒にすると効率が悪くなります。

その結果、酒樽だけを江戸に運び込む樽廻船というものが発達しました。いわゆる、お酒専用の運搬船です。

現代で言えば、日本酒専用のAmazonお急ぎ便のようなものですね。

上方から江戸にお酒が大量に運ばれ、その名声や味わいで一大消費地となるわけです。

現代でも、この話に似たような縮図があります。

「その地元でしか出荷されない日本酒」というのは、実は多くあります。

なぜなら、その地元で評価・消費され、酒蔵も生産量が間に合っていれば、需要と供給が成立することになり、わざわざ県外に出す必要がないからです。

現代では東京は全国各地のものが集う場所とも言われますが、裏を返せば、東京に送り出せるもの以外は出ない、ということ。

だからこそ、その地方でしか飲めない日本酒、つまり、「くだらない酒」に、いまこそ注目してみませんか?


それでは今回はここまで!

参考:
ゆるゆる日本酒教室:第40回【菰樽】
ゆるゆる日本酒教室:第91回【セイシュウマサムネ】


日本酒コラム『ゆるゆる日本酒教室』


日本酒コミュニティ「酒小町」

20代から30代の「お酒の場と、交流が好き」な人たちが集まる日本酒コミュニティ『酒小町』。

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コミュニティ内にはこのnoteのように、講義の形でない日本酒の知識を唎酒師さんがゆるゆる共有してくれるコラムがあります。

美味しく、楽しくをメインにしていますが、こんな風に日本酒の知識を身につけながら飲むお酒もまた格別ですよね。

今回コラムを書いてくれた社会福祉士×日本酒学講師のダイゴさんのnoteはここから読めます。日本酒以外の話題も含め、優しくてわかりやすい文章が特徴です。

酒小町制作メンバー

執筆:ダイゴ|社会福祉士×唎酒師・日本酒学講師=Sake Social Worker(note
ディレクション:関谷サイコ(Xnote
企画:卯月りん(XInstagramnote
編集:makio(Xnote)

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