日本酒造りは寒さとともに始まるのはなぜ?
「日本酒を、もっと身近に」という理念をかかげながら活動している日本酒メディア・コミュニティ『酒小町』。今回は「日本酒づくりでのお米の処理方法」についてお話していきます。
ゆるゆる日本酒教室、第84回目の今回は【日本酒造りがはじまる季節】についてお話です。
ちょっと季節外れのお話になりますが…
冬になるとこんなニュースを目にする機会が増えてきます。
松江市の酒蔵で日本酒の「寒仕込み」最盛期
こちらで取り上げられているのは、ゆるゆる日本酒教室第71回目【詩仙・李白】でも触れた李白酒造さんです。
さて、みなさん。
「寒仕込み(寒造り)」という言葉、ご存知ですか?
そもそも、日本酒は冬に造ることが多い、ということは、ご存知でしょうか。
四季がある中で、なぜ寒い冬なのでしょう?
別にいつ作ってもよいはずなのに、冬が選ばれたということは、何かしら理由があるはずです。
今回はそれを紐解いていきましょう!
日本酒造りの繁忙期は冬!
実は、冬は日本酒造りの真っ盛り、酒蔵からすれば繁忙期にあたります。
理由は大きく4つになります。
①米が原料の秋に取れるため
原料である米は、秋に収穫されます。
そもそも、米がないと日本酒造りはできません。
ちなみにとれたての新米ではなく、昨年に収穫したお米(古米)を使用して造ることもありますよ!
②労働力が確保しやすい(しやすかった)
春〜秋に比べ、冬場に育つ作物は限られてしまいます。
お米もそのひとつで、春から秋にかけてお米を作った農家さんは、お米を収穫し終えた冬、手持ち無沙汰になってしまいます。
ただその間、何もしないわけにもいきません。何かしら働かないと収入が得られませんよね。
そこで、農業が行えない閑散期である冬は別の仕事をすればいい。
その際、地元にいる必要もありません。
結果、農家が冬場に出稼ぎで酒造りをする人=それを得意とする人があらわれます。
後にその人が”杜氏(とうじ)”になり、日本各地で杜氏集団ができるようになっていったのです。
かつての歴史を振り返れば、冬場にできる仕事が限られている中でも行える仕事、そのひとつが酒造りだったのです。
③雑菌が繁殖しにくい
夏場や梅雨は食べ物にカビが生えたり、食材が痛むのが早いですよね。
一方冬場は、室温で置いておいてもそこまですぐに痛みません。
その最大の理由は気温・温度・湿度の違いです。
寒いことで、日本酒造りにネガティブに影響する雑菌の活動が抑えられるのです。
④酵母の活動への影響
3つ目の内容と関わる部分ではありますが、温度が高いと、酵母が活性化します。
すると、酵母が勢いよく糖分をアルコール発酵でアルコールに変えてしまいます。その結果、デンプンを糖に変える麹の酵素の働きとバランスが悪くなり、アルコール発酵がうまくいかないのです。
発酵のコントロール=温度のコントロールともいえるでしょう。
ここまで、大きな影響を及ぼしていることは、何といっても冬特有の「寒い」ことです。酒蔵全体や、お米の保存、発酵に直結する麹や醪などの温度をコントロールできれば、冬でなくてもお酒が造れるということになります。
文明が発達した結果、エアコンでの冷房や暖房、冷蔵庫、氷による冷却、火による加熱など、近年は年間を通して狙った温度管理が出来る設備・方法を整えることができます。
そのため、酒蔵によっては、1年を通して酒造りが行われる「四季醸造」を行っている酒蔵も多く現れていますよ。
それでは今回はここまで!
日本酒コラム『ゆるゆる日本酒教室』
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今回コラムを書いてくれた社会福祉士×日本酒学講師のダイゴさんのnoteはここから読めます。日本酒以外の話題も含め、優しくてわかりやすい文章が特徴です。
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執筆:ダイゴ|社会福祉士×唎酒師・日本酒学講師=Sake Social Worker(note)
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