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【連載OL小説】 ④水曜日/公転女と自転女

書き溜めてた小説貼るので
暇な方だけ覗いてくださいな

目次は、
①プロローグ
②月曜日
③火曜日
④水曜日
⑤木曜日
⑥金曜日
「金曜日」でおわり☺️

登場人物は
主人公(女,独身)
恋愛大好きな後輩の南(女,新婚さん)
皆に慕われている道重先輩(女,既婚)
南と不倫中?橘先輩(男,既婚)
初登場、山田先輩(男,既婚)
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公転女と自転女
④水曜日


 水曜日、寝起きは最悪。今まで意識していなかったのに、金曜日の事がどんどん自分の中で大きな問題に思えた。金曜日、私は違う部署の山田先輩と飲みに行く。
 山田先輩は営業部にいる先輩で海外の出張旅費の清算を間違える度に私の部署に顔を出してはだらだら雑談をしていくのだが、最近別の場所でよく会うので一緒に今度飲みに行こうと話をしていた。
 いつも飲みに行く日を決めず軽い口約束で流れるのだが、今週ついに決行されることになった。ただただノリで決まった飲み会だが、昨日の南の発言が頭をかけめぐる。そう、山田先輩は既婚者なのだ。

 うじうじ考えながら全身鏡の前で自分の服装をチェックする。袖がふわっとした姫トップス、タイトなスカート、今日は髪をハーフアップにして女性らしいスタイルに。靴擦れしたくるぶしに透明な絆創膏を貼って今日も少し早く出社する。
 会社の最寄駅に着いた後、コーヒーは買わずに昨日に引き続き隣のビルの秘密の喫煙所へ行った。細いタバコを取り出し左の階段を見ると、山田先輩が降りてきた。「おはよう」とにっこり笑う先輩。いつも言うおはようの言葉に何故か下心を感じてしまうほど私の頭は不倫のことでいっぱいだった。
 山田先輩は黒い電子タバコをくわえながら「金曜日のお店、前話していた焼き鳥の店を予約したよ」と言った。金曜日飲みに行く事が決まったのは、先週山田先輩と喫煙所で話をしていた時に南が絶賛していた焼き鳥屋を私が紹介したのがきっかけだった。
 山田先輩とはここ半年くらい前からこの喫煙所で月に3〜4回ばったり会うのだ。最初は会社の人にタバコを吸っていることがばれて戸惑ったが、人にばらされる事もないしあまり気にしなくなった。焼き鳥屋に行く事になったのも偶然で私は下心なんて一つもないのだが、昨日から私は山田先輩の事ばかり考えていた。
 タバコを吸い終わってビルの出口に向かう階段を一緒にのぼる。山田先輩は「そんなに高いヒールで階段怖くないの?」と私に毎回お決まりの質問をする。このおなじみのセリフを聞くたびに私はいつも面白くて嬉しくて何だか笑ってしまう。
 海外や日本中を飛び回るガツガツした営業部の中で、山田先輩は特に営業成績も良く、女性にも人気が高い。もちろんあの南も山田先輩がかっこいいと言っていたし、既婚者とは感じにくい雰囲気で、女性と遊んでいる噂はよく聞くが私には誠実に接してくれる。
 私だけにみせる喫煙所での山田先輩の顔は気取らなくて、たまに天然で、皆はかっこいいと言うけれど、そんな先輩を私は可愛いなと思ってしまう。私は山田先輩に大丈夫ですよと少し照れた声で答えて、他愛もない会話をしながらお互い仕事に向かった。

 デスクに着くと南が少し早く出社していて、「おはようございます!昨日はありがとうございました〜」とにっこり私に笑いかけた。その時南のいつもと違う少し大人っぽい赤めのリップが気になり、どこのリップか聞こうとしたけど話が長くなりそうなのでやめて、また行こうねとだけ言ってパソコンを開いた。
 パソコンのキーボードで文字を打とうと手を置いた時、昨日まで全く気にならなかった自分の爪がこれでいいのかと自分に問いかける。ラメ多めの派手目なネイル、ネイルのパーツが1つとれているし、ちょっと伸びてきた爪も気になるし、いつもならこの状態であと1週間は粘るのだが、何故か落ち着かないこの気持ちをおさえるためネイルの当日予約をすぐ入れた。髪を染めたのはいつだっけ、むだ毛の処理もしないと、気になる部分がどんどん増えるのはやっぱり山田先輩の事が気になるからだ。

 金曜日の飲み会の後、もし、万が一山田先輩にホテルに誘われたらしっかり断れるのかな。そもそもラブホテルに二人で入るところを誰かに見られたら一発でアウト、私の人生は終わってしまう。せめてビジネスホテルに時間差で入るならばれないのだろうか。
 その時は、ラブホテルに行こうとする彼に、ビジネスホテルにしませんか?と誘うのだろうか。いやビジネスホテルに行くなら事前に予約しないといけないから、飲んでいる時に私はビジネスホテルがいいと思いますと申告しないといけないのか。それでいいのか、それであっているのか、皆どうやってスマートに不倫をするのだろうか。疑問を解こうとするとまた違う疑問がでる。
 しかし一つでもミスをすれば一発で人生が終わるハイリスクな不倫になぜ皆涼しい顔で過ごせるのだろうか。南なんか涼しい顔どころか堂々と不倫を推奨するような発言までしている。南なんて新婚ホヤホヤなのに不倫なんかしてばれたら、旦那さんにも不倫相手の奥さんにも慰謝料を請求されるのに大丈夫なのだろうか。慰謝料分の貯金を持っているからこそ遊べるのだろうか。
 考えれば考えるほど気になり、私は仕事中にも関わらず不倫がばれた時の慰謝料をこっそり検索してみた。もし私が不倫してばれた場合、私は独身なので不倫相手の奥さんから慰謝料を請求されるだろう。不倫相手の奥さんがこの不倫によって離婚するかしないかで慰謝料の額が大きく変わる。相手の奥さんが離婚を考えるなら高い探偵代もきっと払うだろう。探偵をつけられたら素人の私はきっと逃げられない。
 ・・・・・・・・・・。
 不倫はやっぱりやめよう。気持ちも切り替わり仕事に打ち込んだ。

 ネイルの時間に合わせて少し残業をしてから会社を出たら、風が昨日より涼しくなって気持ちいいくらいだった。もう少し寒くなったらトレンチコートを出さないとなあと思い、スマホを取り出し来週の土日のスケジュールに衣替えの予定をいれた。
 予定を入れた後今日のネイルのデザインを検索した。検索していると男性は派手なネイルが嫌い、シンプルの方が男ウケがいいと書いていて、思わずその部分を詳しく見て納得していた。ネイルの店に着くと、私が好きそうなキラキラのパーツがいっぱいついたデザインを見せてくれたが、思わず今日はベージュの落ち着いたデザインを選んだ。
 ネイル中喋る雑談は最近涼しくなったとか、化粧品が高くなった話とか、本当にどうでもいいような内容ばかり。今本当に話したい事ではないのだけど、自分から話を盛り上げる元気もなくて何だかいつもよりデザインが寂しい爪先を見つめながら、金曜日何着て行こうかなと家のクローゼットを思い浮かべて妄想ファッションショーしたり、最近遊びに行った時に着て行った服装を思い出したりしていた。

 ネイルで遅くなったのでごはんはコンビニでサラダとチキンを買って家に帰った。帰宅してすぐにお風呂に入り髪の毛を乾かしながら週に1度のパックをした。だいたい水曜日はパックの日。だらだら過ごしながらご飯を食べてすぐに寝てしまった。

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