見出し画像

酒米を作る農家と酒蔵のコラボイベントに参加したら最高に有意義だった 日本酒ライフ 2024【10月】

10月は地元・埼玉で「川越の日本酒体験」というイベントに行ってきたのでその模様をお伝えします。
一言でとても貴重で充実したイベントでした。
1年に1度開催されるイベントなので来年も開催される可能性があります。
開催される場合は、主催の「川越グリーンツーリズム」はもちろん、SakeDoko の日本酒イベントマップにも登録されるので、チェック&通知設定しておくことをおすすめします。


イベントの内容

酒造好適米(以下、酒米とします※)「さけ武蔵」の収穫(稲刈り)体験と、川越の酒蔵「小江戸鏡山酒造」が醸す銘柄「鏡山」の利き酒体験ができます。
さらに、ブランドの小江戸黒豚の炭火焼きと鏡山を一緒に楽しめます。

日時:2024年10月5日(土) 13:30~16:00
場所:川越市グリーンツーリズム拠点施設(川越市伊佐沼887)
参加料:1人5,500円

川越グリーンツーリズム

※ 酒造好適米と酒米の違い
日本酒造りに使用される米は総称して「酒米」と呼ばれ、その中でも日本酒造りを目的に生産される米が「酒造好適米」と呼ばれます。
この記事では厳密に区別せず「酒米」で統一します。

埼玉県のオリジナル酒米「さけ武蔵」

「さけ武蔵」とは埼玉県独自に開発された酒米で、「若水」という愛知県の品種と「改良八反流(かいりょうはったんながれ)」という島根県の品種を掛け合わせて改良し、2004年にデビューしました。

さけ武蔵の収穫体験の予定が…

さけ武蔵の収穫体験を1時間ほど行う予定…だったのですがこの日はあいにくの雨。
残念ではありますが、圃場に行って少しだけ収穫しているところを見学しました。
現代ではコンバインなどの機械で刈り取りと脱穀をしてしまいますが、機械がなかった時代は手で刈り取りしていたことを考えると、重労働だったんだなと感じます。

圃場で稲刈りの説明中

今年の「さけ武蔵」の出来は異常!?

圃場から戻ったあとは、まず「さけ武蔵」の農家Yさんの講義。
今年の出来具合についてですが、今年は異常。猛暑・酷暑の影響で収量が例年の7割までに減ってしまったとのこと。稲穂の軽さまで感じるほどだそう。

さけ武蔵の玄米

年々夏の気候が荒々しくなっているのは私自身も実感しており、特に今年は暑さはもちろんなのですが、8月は豪雨・雷雨がおかしいくらい頻繁にありました。「こうなったのはお前ら人間のせいだからな」と言っているかのよう。地球…どうなっちゃうんだろうって思うくらいです。

栽培方法は飯米と違うのか

さけ武蔵と普段私たちが食べている一般米の栽培方法は何か違いがあるのか尋ねてみたところ、同じとおっしゃっていました。
あくまで、お話を聞いたYさんからのお話で、さけ武蔵の範疇を越えていませんので、他の酒米はどうかわかりません。
調べてみると、お話の通りさほど栽培方法が変わらないと書いてあるサイトもあれば、酒米の方が寒暖差や土壌による影響を受けやすく、また稲穂の背丈が飯米より高いので倒伏しやすため栽培が難しいと書いてあるサイトもありました。

「酒米」とひとくくりに言ってもさまざまな品種があるので、栽培方法も品種によって異なることはありそうですね。
そういう意味では、飯米と同じ栽培方法が可能なさけ武蔵は優秀なのかもしれません。

酒米って食べるとまずいの?

酒米はその名のとおり酒造りに使われるわけで、スーパーに売っていないので普段口にする機会がなかなかありません。私も食べたことはありません。
やはり炊いて食べるには向かないのでしょうか?

Yさんはさけ武蔵の他にコシヒカリも栽培しており、食べ比べをしてみたそうです。そうしたら、むしろコシヒカリと同じくらいに美味しかったとおっしゃっていました。

今や飯米で日本酒を造っている酒蔵もあるくらいで、醸造技術の向上もあってか酒米で造るのと遜色ないほどの品質の高い日本酒があります。そうなると、酒米と飯米の区分けって意味あるんでしょうかね?って思いませんか。

川越の酒蔵「小江戸鏡山酒造」

続いて、「小江戸鏡山酒造」の杜氏Oさんからお話いただきました。
小江戸鏡山酒造は1875年に鏡山酒造として創業しましたが、2000年に廃業。その後、地域の再興を望む声が高まり、2007年に新たに小江戸鏡山酒造株式会社として復活しました。
小さい蔵で少量仕込み、品質には大変こだわりを持っている酒蔵です。
私は今年の6月に、上槽(お酒を絞る)と瓶詰めの体験をさせていただきました。

鏡山とさけ武蔵の関わり

鏡山の酒造りにさけ武蔵が使用されていることは言うまでもなくですが、生産量のおおよそ7割さけ武蔵が使用されているそうです。けっこう使われているんですね!
そして令和元年の全国新酒鑑評会において、業界で初めてさけ武蔵を使ったお酒で金賞を受賞したのが小江戸鏡山酒造です。
その金賞を受賞した「さけ武蔵大吟醸」が今回の利き酒のラインナップに入っています!

利き酒5種のラインナップ

綺麗に並べられた本日の利き酒5種
いい眺めだ

写真左から
⚫︎ 鏡山 斗瓶取り雫酒
⚫︎ 鏡山 純米大吟醸
⚫︎ 鏡山 さけ武蔵大吟醸
⚫︎ 鏡山 純米酒
⚫︎ 鏡山 ワイン酵母仕込み純米

ちなみに、全種類さけ武蔵が使用されています…と説明を受けた気がしましたが、ワイン酵母仕込み純米は調べてみると「彩のみのり」。
ちょっと変わり種なのが「ワイン酵母仕込み純米」。こちらはその名のとおりワイン酵母で造られたお酒で、れっきとした日本酒なのですが甘口なワインテイストです。デザート感覚で楽しめますよ。

小江戸黒豚と鏡山を実食

杜氏Oさんの講義のあとは、バーベキュー会場で小江戸黒豚の炭火焼きと鏡山5種を楽しみます。
黒豚と楽しむのであれば「鏡山 純米酒」が一番合うかな。
お酒単体での味わいとしてはやはり「斗瓶取り雫酒」は本当に美味しくて人気No.1でした。

小江戸黒豚と鏡山を生産された川越の地でいただく
めっちゃ煙

杜氏Oさんと小江戸黒豚を食べつつ直接お話した中で、
「蔵が狭いので瓶詰めに関しては五十嵐酒造さんにお願いしており、どうしても輸送中に振動の影響でガスが抜けてしまい、フレッシュさが損なわれてしまう」とお悩みの声がありました。

裏側のラベルをよく見ると、製造者は「小江戸鏡山酒造株式会社」となっていますが、それとは別に加工所として「五十嵐酒造株式会社」と記載されていますね。

鏡山 純米大吟醸の裏ラベル
「酒を小江戸鏡山酒造株式会社が製造し
瓶詰めを五十嵐酒造へ委託しております」

もっと設備が整っていたらより美味しいお酒を造れるのに…というもどかしさが伝わってきました。
制約がある中で、品質にこだわった酒造りは苦労が多いでしょうが、それでも新しいことに挑戦していく小江戸鏡山酒造は今後も応援したくなる酒蔵です。

終わり

今回は天候に恵まれず、さけ武蔵の収穫体験はできなかった分、米農家さんと杜氏さんにお話をじっくり伺えたことがとても良かったです。
川越にお越しの際はぜひ鏡山をお土産に買って、この記事のことを思い出しながら飲んでいただけると嬉しいです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


いいなと思ったら応援しよう!

日本酒マップ SakeDoko | 小田川 雅俊
いただいたサポートはSakeDoko開発・運営費に使わせていただき、サービスの質向上に貢献します!