第134回 WenDoで自分を守り闘う力をつける(ポーランド)
「なんてすばらしい! 日本語はよくわかりませんが、女性たちをとりまく問題は、一目でわかります。女性の怒りは世界共通ね」
当コラム『叫ぶ芸術—ポスターに見る世界の女たち』 をWebで見たポーランドのスワヴォーミラ・ヴァルチェフスカという女性から、メールが届いた。2018年のことだった。
スワヴォーミラは「クラクフ女性センターeFKa」の館長だった。古都クラクフは一度訪ねてみたいと思っていた。2019年3月、私はポーランドに飛んだ。
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「クラクフ女性センター」は、1991年創設で、『ザードラ(Zadra)』(「とげ」という意味)という雑誌の 編集発行が一番の活動だった。そのほか、性暴力から自分を守る護身術トレーニング、女性たちの自立心を高めるワークショップ、演劇、妊娠中絶の完全自由化を求めて議会へのロビー活動など。
「我が国は極右政党の力が強くて、事態は深刻です。私たちは、右翼政策の監視と批判で手一杯。昨日も、ブラッセルでのEU会議に行ってきました。ポーランド政府代表のEUでの発言をチェックするためです」
ポーランドは、ノーベル賞を2度も受賞した偉大な科学者マリア・スクウォドフスカ(キュリー夫人)の国だが、女性政策は遅々としている。2004年EUに加盟したので、男女平等に関するEU指針に従わなければならないのだが…。
「長年、共産党独裁で、女性団体も党の支配下にありました。1989年に自由社会入りして、多彩な政党や市民団体が生まれ、国民は、政治に期待し始めました。私も『緑の党』から立候補しました。でも、しばらくして離党しました。男たちの“椅子とりごっこ”に嫌気がさしたのです」
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スワヴォーミラは、壁の1枚のポスターを指さした。
「WenDo—WenはWomen、Doは道。直訳すると“女性道”。女性・少女が暴力や差別から自分を護り、自己主張できる力をつける護身術です。学校で女子の必須教科にと願っていますが、今は、この女性センターが中心になって訓練しています」
2000年、ドイツからトレーナー2人を招いて3年間の養成講座を開始。修了した16人は、トレーナーとなった。その後WenDoはポーランド各地で開かれていった。受講者は7歳から87歳。心身障害者にも広がった。
「ポーランドの女性たちは、今も昔も『第二の性』。男が一番で女が二番です。でも、黙っていても権利はやってこない。闘ってつかみ取るもの。その力を養うのです」
そして、壁からポスターをはがして、私に「はい。プレゼント」。
(三井 マリ子/「i女のしんぶん」2024年9月10日号)
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