第133回 比例代表制の威力(ベルギー)
2024年6月9日、ベルギーで国会議員選挙があった。女性は国会(下院)150議席のうち64議席を占め、42・7%となった。
30年前の1994年、ベルギー国会の女性議員は9%だった。私は当時、EU委員会の招待を受けて加盟各国を回った。9%は、EUの首都ベルギーとしては赤面すべき事態。解決すべく、ミット・スミット雇用・平等政策大臣が、女性議員を増やす法案を議会に提出中だった。彼女の秘書ミケ・ドゥヴリガーさんは語った。
「ベルギー史上初のクオータ制を定めた法の誕生です。いいタイミングで来て下さいましたね。我が国の9%はEU加盟国の平均12%にも届きません。この法の力で女性を増やさなくては」
そして、何種類ものポスターを下さった。その1枚が今日の「投票せよ 男女数の均衡のために」だ。
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比例代表制の国では、1票は政党に入れる。政党ごとに候補者リストが作られ、上位から当選する。女性議員を増やすにはリストに女性を増やしさえすればよく、ベルギーは「同じ性は3分2から3分1」とするクオータ制を強制する法を成立させた。
1994年以来、ベルギーは男女平等の政治にまっしぐら! 後に「候補者リストの男女数の差は1を超えてはならない、リストの上位2人は同性であってはならない」と改正された。女性議員40%超えは、その成果だ。
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小選挙区中心の日本では、最も多く票を取った候補以外に入れた票は「死に票」として捨てられる。死に票が多いからミニ政党は永遠に浮かばれない。
一方、比例代表制では獲得票に比例して議席数が決まる。ベルギーはオランダ語とフランス語が公用語で、政党も別々のため、政党数は多い。今回は46政党が出た。うち12政党が議席を獲得。最大政党でも全議席の16%にすぎない。日本の自民は衆院の56%だ。
多様な民意を尊重する選挙は多党制を生む。しかも内閣は、2言語の人が半々ずつと憲法が定める。前政権は7政党による連立だった。連立交渉の長いこと。1年以上かかったこともあるという。話し合いと妥協の政治なのだ。
ベルギーは、1899年、世界で最も早く比例代表制を取り入れた。比例代表制だと政権が不安定で、物事が決まらないといわれるが、私はこの説に反対である。日本を見てほしい。「政治とカネ」の腐敗は、小選挙区制に起因する腐敗だ。小選挙区で当選するには、カネはいくらあっても足りない。巨大投資だから親族に継がせたくもなり、「世襲」は大流行。女性(世襲を除く)は立候補すら難しい。
(三井マリ子/「i女のしんぶん」2024年8月10日・25日号)
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