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第119回 夏だ、女のキャンプだ、フェム島だ(デンマーク)


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6月は、日本人には鬱陶しい梅雨だが、北欧人には、1年で最も美しい心弾む季節だ。

このポスターは、6月から8月にかけてフェム島で開かれる女性たちのキャンプ参加を呼びかけている。デンマーク語で書かれているのは「新しい女性キャンプ」。40年前の1983年のものだ。

フェム島は、コペンハーゲンから電車で2時間ほどのローラン島の、さらに北方の海に浮かぶ総面積11・38㎢の小島だ。ローラン島からフェリーで1時間。光り輝く海、一面の花畑が広がる。

始まったのは、女性解放運動真っ盛りの1971年。今も毎夏、学生から年金生活者まで大勢が集まる。申し込みは3月8日の女性デーからだ。

この女性だけのキャンプを始めたのは、右下に書かれている、Kvindehuset(クヴィンネフーセ、女性の家)に集うレッド・ストッキングズの女たちだ。女性の家は、コペンハーゲン中心部にあるビル。ここは70年代、女性たちが占拠した建物のひとつで、現在に至るまで、ダンス、音楽会、体操、映画会、講演会などに利用されている。人気のレズビアン・バーもある。

キャンプの2カ月間、女性と子どもたち(男子は12歳以下)は、電気もガスもなくて、トイレはバケツという離島で、何をするのか。

まずはテントを張る作業週間から始まる。台所用テント、バー用テント、子ども用テント、トイレ用テント、寝室用テント(4つか5つ)。何から何まで女手で行なう。

子ども週間、スポーツ週間、体と心の週間、国際週間、創作週間、ディベート週間、全員参加週間…等々。各週間にはテーマがあって、1977年の場合、「農業」「女性と暴力」「母性神話」「労働市場と女性」「演劇と音楽」「女性のフォークハイスクール」「レズビアンであること」だった。

最終の週は、ゴミを集めて後片付けをして、テントをたたんで、名残を惜しむ。

最も重要なのは女たちの連帯と解放。男性主導社会で息苦しさを感じた女性たちが、女だけの世界で、自然と一体となって過ごす。DVや失恋で心身がどん底の女性たちも、ここに癒しを求める。

キャンプの案内広告は、かつてはポスターだったが、いまはインターネットだけ。この貴重なポスターは「日本の女性たちに役立てるのなら」と、20年ほど前、オーフス女性博物館を訪れた時、館長から寄贈された。


(三井マリ子/「i女のしんぶん」2023年6月10日号)

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