【毎週ショートショートnote】トロンボーンの口調
お題:トロンボーンの口調
「お前さ、神っぽくねぇよな」
「いえいえ。わたくしも神としての矜持はきちんと持っておりますので」
きゅっきゅっと乾いた柔らかな布で金ぴかに輝くトロンボーンを拭く。拭かれながらトロンボーンは、「毎日恐縮です」と呟いた。
家族が代々楽器を扱う仕事をしてきたからか、俺には楽器の声が聞こえる。自宅にたくさんある楽器の声はもちろん、誕生日プレゼントにもらった思い出深いこのトロンボーンの声もだ。
その昔、トロンボーンは神の楽器と呼ばれていた。聖歌隊の伴奏が主戦場だった為だ。俺自身、一番好きな楽器がそう呼ばれていたのは嬉しいが、俺の相棒であるこいつはどうにも口調が神っぽくない。もしかしたら作り手によって口調もとい性格が異なるのかもしれない。そもそも楽器の声を聞ける人間は自分以外に出会った事はないが。
自分の中で疑問への答えを出し、磨き終えた相棒を眺める。きらりと反射する金色が相も変わらず美しい。
「本日も綺麗にしていただき、誠に恐縮です」
「なんか口調が下っ端なんだよなあ」
喋らせると言う安直な発想しか出なかった。
悔しい……!
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