「借金で死ぬ必要は絶対にない」と言い続けなければならないことについて

 先日,ある刑事事件についての判決があった。
 被害者らから承諾を得て,または嘱託を受けて,交際相手の女性(内縁の妻)と子ども3人を殺害した男性に対して懲役8年の判決が言い渡された,というものである。
 この事件の現場となったのが,私の地元である福島県いわき市にある水石山公園の駐車場である。水石山はいわき市三和町にあるそれほど高くなくて見晴らしの良い山で,私の父親の実家にもほど近いことから小さい頃は時々連れて行ってもらった場所でもある。そうした思い出があるだけに,この事件を知った時のショックは大きく,以来この事件に関するニュースは個人的に追いかけていた。
 その中で出てきた事件の背景というのが,この家族が借金に苦しんでいたということであった,ということに私はさらなるショックを受けた。いわゆる闇金が衰退しつつあり,多重債務問題における弁護士介入の重要性ということがだいぶ膾炙してきているというのにもかかわらず,いまだに借金苦で自死を選ぶ人が後を絶たないということに対して,だ。つまり,「借金で死ぬ必要は絶対にない」「一度弁護士に相談してくれ」というメッセージが,本当に必要な層にまだまだ届いていないということになる。


 個人の多重債務問題について弁護士に依頼した場合の手段は大きく分けて3つある。分割払い期間・額,利息カット等について弁護士が債権者と交渉し,和解したらその内容通りに分割で払っていく「任意整理」,裁判所に申し立てて債務を圧縮して原則3年分割で支払うようにする「個人再生」(住宅ローンのある人は,遅れがなければ住宅ローンをそのまま払い続けながらそれ以外の債務を圧縮することで,住宅を手放さなくて済む可能性があるというメリットがある。),裁判所に申し立てて一定の手元に残す金額以外を換価の上債権者に分配して残額については支払義務をなくす「自己破産」の3つである。
 弁護士費用のうち着手金についてザックリいうと,個人の任意整理は1社あたり2~3万円から,個人再生と個人の自己破産は最低30~40万円からといったところだろうか(あくまで目安なので,事件の内容によって金額は変動することとなる。)。成功報酬については,債務整理の場合は交渉で減額した額の10%とすることが多く,個人再生・個人の自己破産は終了時に着手金と同額とするか,そもそも設けないことにする場合のどちらかになることが多いと思う。弁護士費用の支払は原則として一括払いであるが,分割払いや法テラスの利用についても応相談であるから,昔よりは利用しやすくなっているはずだ。借金で悩んでいる人は,依頼しなくてもよいから是非一度弁護士への相談をおススメする。
 借金で死ぬ必要は絶対にない,一度弁護士にご相談を…どうすればこのことが本当に必要なところまで届くのだろうということを,いつも考えている。

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