弁護士費用は「高い」のか?

はじめに

 弁護士をめぐる話としてよく言われるのが,「弁護士費用は高い」ということである。私も相談者に対して大体の費用基準(たいていは着手金・報酬金形式,ときどきタイムチャージ方式)を示すと「そんなにかかるんですか?」と驚かれることも少なくない。
 以前は弁護士に一律に適用されていた弁護士費用基準(旧報酬基準)があり,これが廃止されて弁護士費用の自由化が実現した今でも同基準をベースに算定することが多いため,自分の抱えている事件で弁護士に依頼する場合大体いくらくらいを見込んでおけばよいかを見るための目安として使うことができる。

 また,日弁連のウェブサイトでは弁護士費用に関するページを設けているので,こちらを参照してもよいだろう。


 それでも「高い」と言われることは少なくない。しかし弁護士からすれば,それらの弁護士費用はよほどのことがない限り妥当な金額であることがほとんどである。

弁護士の仕事は完全オーダーメイド

 弁護士費用がそれなりの金額になる一番の理由は,弁護士の仕事が完全オーダーメイドであるということにある。
 弁護士の扱う事件は,一つとして同じものはない。たとえば離婚事件一つをとっても,そもそも相手方が離婚したくないケース,離婚には争いがないが子どもの親権,養育費,面会交流について争っているケース,財産分与の対象となる財産,金額,分与方法等について争っているケース,慰謝料の有無及び金額について争いがあるケース…などなどさまざまである。
 加えて,依頼者や相手方についてもそのパーソナリティは様々であり,性格的に対応困難であると多大な時間を要するだけでなく,肉体的・精神的に著しく消耗することも珍しくない。
 事件の解決までにかかる時間も,数日だったり数か月だったり,長くなれば数年に及ぶこともあってまちまちである。
 このように,一つとして同じ事件はないという意味で弁護士の仕事は完全オーダーメイドであり,弁護士は相談内容を聴いて,事件の難易度やかかるであろう時間を考え,費用基準とも照らし合わせながら個々の事件の弁護士費用を見積もるのである。そのため,ある程度まとまった金額となるのはやむを得ないといえる。

弁護士に「費用が高い」と言うことは何を意味するか

 弁護士の費用見積もりに対して相談者が「費用が高い」と言うことは,弁護士の費用算定に関する先に述べた事情に対する理解をしていない(またはしようとしていない),弁護士の仕事を安く見積もりすぎているということである。
 それに対して弁護士がおいそれと値下げに応じることはできない。「他の先生に頼んでください」と言って断るだけである。高すぎると思ったら,他の弁護士に相談すればいいだけだ。
 「金を払うことは仕事に責任を負わせること,金を受け取ることは仕事に責任を負うことだ。金の介在しない仕事は絶対に無責任なものになる。」という某ラーメン漫画の登場人物のセリフは,けだし名言。
 それにしても,結婚披露宴や葬儀には自発的に3ケタ万円出せるのに,2ケタ万円の弁護士費用を出し渋るというのは,実に不思議なものである。

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