緑の夢がさめる頃
朝ゆっくり目覚めた甲府、土曜の朝。
なかよしなひとがいるので、定期的に来ることがある甲府。甲府の朝って空気が澄んでいてとてもすき。
行ってみたかったコーヒースタンドでコーヒーと焼き菓子をテイクアウトする。焼き菓子いっぱいで、ひとつひとつがおっきくて、順番にぜんぶたべてみたい、またこようっと、とチョコチップスコーンを購入し終えてもショーケースを眺めながらおもう。
秋晴れのきもちいい空の下を真っ直ぐ歩き出した。
たどり着いた武田神社の木陰のベンチに腰を下ろして、七五三でしあわせそうな家族たちを眺めた。子どもが飛ばす大量のシャボン玉の中を、行き交う人たちが笑顔で通り抜ける。
神社にお参りをして歩き出すと、一面原っぱの道に出てテンションがあがる。どんどん上に登る。あるくあるく。
「とっておきの場所につれてってあげる!」なんて言われたけどここはどこ?あるくの疲れてきちゃった。
って言っていたらポツンと現れた平家。中にはドゥクドゥクとおおきめの音楽がレコードで流れていて、おっきな窓から風がそよそよ、ひかりがいっぱい入っていてきもちいい。
おっきなお花が机に飾られた店内に腰を下ろしてカレーをたべた。こんなところよくみつけたね、やっぱりすごいなあ、ついてきてよかったや、なんて思いながらモグモグたべた。ちょっと辛い。
そのあとは駅の方にもどって商店街を歩いた。
動物が描かれたかわいいシャッターを見つけたり、いままでたべた中で1番おいしいジェラートを味わったりした。思い出すだけでもなんておいしい。
気になるカフェも見つけた。今度いこうね
夕方18:00からのカネコアヤノのライブに向かった。
桜座って会場がまたなんていいところ。渋めのバーのような場所の奥に、劇場みたいな会場が広がっていて、そこには畳の階段の上に座布団がいくつも置かれていた。みんなそれぞれ場所をとる。
わたしたちはパイプ椅子の、斜め横から見ることができる場所に座った。
そこからは彼女がおおきなくちをあけて歌う表情も、近くのお客さんをじぃっと見つめた表情もしっかり見ることができた。
サラッサラの髪を振り乱してギターをかき鳴らしながら、誰にうたうわけじゃなくひとりでうたう姿にみんな息をのんでいた。彼女がうたっているところを、みんなでひっそり覗き見してるみたい。わたしはビールが入ったカップをいつの間にか、つよくつよく握りしめていた。
わたしのいちばんすきな曲の時は、フッと照明が消えて、譜面台の上にある明かりだけを灯して歌っていた。暗闇とほんのすこしの灯りから力強い声がする。心臓がばくばくした。
みんなそれぞれのおまもりを抱きしめて、会場を出る。
くらくら、うっとりしたようなきもちに浸りながら外に出ると、ひんやりした空気が頬をすべっていく。
時折カネコと目が合った気がした。
きっとみんな同じこと思ってるけど。
それでもいいの