突っ張り棒

僕が探しているのは幅115㎝のクローゼットに設置するための突っ張り棒。


ちょうど120㎝まで伸縮可能な突っ張り棒を見つけたので買い物カートに入れる。



…いや待てよ?



115㎝のクローゼットに120㎝までの突っ張り棒は果たして最適か…?



もし僕が突っ張り棒だったとして、クローゼットに突っ張る際、最大値−5㎝の幅が自分の力を一番発揮できる幅か?



両手両足を広げた最大幅161㎝の僕と
156㎝のクローゼットのイメージ図



ダメだ…!



SASUKEの2ndステージみたいになる。



手が届くには届くが、幅が広過ぎて上手く力が入らない感じが容易に想像できる。なるほど。もっと余裕を持たせてあげなくては…。


僕は買い物カートを空にする。



仕方ない。多少値は張るが110㎝〜200㎝対応の突っ張り棒を新たに買い物カートに入れる。




…いや待てよ?





もし僕が突っ張り棒だったとして、これはこれで窮屈で力が入らない気がする。



格闘技でも相手との距離が近過ぎるとパンチの威力は軽減するらしいし、「腕が伸びるところが一番力が伝わるんだ。」と中日時代の落合監督も言っていた気がする。


それに突っ張り棒側の立場から言わせて貰えば、自分の力を最大限まで発揮出来ずに設置されることほど悔しいことはない。


「自分の才能を存分に発揮できない環境に身を置くことが人間にとって最大の苦である。」的なニュアンスのことが三島由紀夫の本にも書いてあった。


それならまだ1つ目の突っ張り棒のように、突っ張り棒として自分の限界を超えて燃え尽きることができた方が、突っ張り棒冥利に尽きるというところだ。



僕は買い物カートを空にする。



115㎝付近が可動域の真ん中になるような突っ張り棒はないのか。




それが意外と無いのである。




70㎝〜110㎝、110㎝〜200㎝の商品が多く、ウチの115㎝のクローゼットで力を存分に発揮できる突っ張り棒が売られていない。


ウチのクローゼットの規格がおかしいのかと諦めかけていたその時。


ついに見つけた。自らの力を思う存分に発揮してくれそうな、ちょうど良い規格の突っ張り棒。



買い物カートに入れる。



…ん?…いや待てよ?



この突っ張り棒、耐荷重が記載されていない…!




おかしい。僕が突っ張り棒だったとしたら耐荷重は一番にアピールしたいポイントであるはず。


そもそも僕たち突っ張り棒にとって、本来サイズの次に重要な情報である。




…さてはコイツ…自分の耐荷重に自信がないな…?




突っ張り棒 80㎝〜166㎝ 強力 
つっぱり棒(2回目)  長い(?)


僕は買い物カートを空にする。




結局突っ張り棒のことで1時間近く悩んだ挙句、一つ目の突っ張り棒を再度買い物カートに入れた。



限界を超えた突っ張り棒が、SASUKEの2ndステージの如く落水しないことを祈る。

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