ハンマーヘッドシャーク(芸能界)

常々、「いやハンマーヘッドシャークて笑」とは思っていた。


コイツら全員、この弱肉強食の世界を生き抜くための進化の過程で、「よし!俺は目の辺りを出っ張らせる方向でいこう!」と決めた奴の子孫なんだ。


研究によるとハンマーヘッドシャークのハンマーの横幅は、時代とともにだんだん短くなっているらしい。
進化してみたものの、さすがにやり過ぎたと本人たち自ら気付き始めている。


ハンマーヘッドシャークの他にも、頭にノコギリを付けたノコギリザメ、尻尾を長くしたオナガザメ、トラ柄のトラフザメ、口がデカいメガマウスなど…


せっかく海の猛者サメとして産まれたのだから、全員がジョーズのホホジロザメのように、堂々と、ただ強く、ただ大きく進化していけば良かっただけじゃないのか。わざわざ奇をてらう必要がどこにあったのか。



サメに限らず言えば亀や貝。なぜ防御力に全振りし、「俺たちはディフェンスタイプでいくんだ」という結論に至ったのか。経緯を知りたい。


絶対にシャチとかライオンみたいな、ある程度の速さと強さを兼ね備えた、スピード+アタックタイプの生物が主人公になる世の中なのに。


デンキウナギ、チョウチンアンコウ、トビウオ、コバンザメ…


もうここまで来ると、どういう発想で自ら脇役になりにいっているのかさっぱりわからなかった。一体彼らは何を考えているのか。









「なんで漫才じゃないの?」


「なんでコンビ組まないの?」


「お笑い芸人なんだから、明るく元気な漫才師になればいいじゃん。」


「最初からピンなの?意味わかんない笑」


「なぜピンのコントでいくんだという結論に至ったのか。経緯を知りたい。」



大ブーメラン。


バカにしてすまなかった、ハンマーヘッドシャークよ。


今なら気持ちがわかる。


お前に言っていたことは、「お笑い芸人は全員、明るい正統派しゃべくり漫才師になればいい」と言っているくらいの暴論だった。


ハンマーヘッドシャークよ。お前も養成所時代、自分がホホジロザメになれるような圧倒的な才能が無いことを受け止め、それでもサメとして成功するという夢を諦めず、決して主人公になれずとも、誰にも無い発想で生き残ろうとしたんだな。


ハンマーヘッドシャークは自然界で生き残るために、一生懸命キャラを工夫して歴史に爪痕を残そうとした。


そして今、世界中のほとんどの人々に認知されている。


彼は売れたのだ。
ホホジロザメほどの圧倒的な才能を持たずして。


それは僕に勇気を与えてくれる。


ノコギリザメ、オナガザメ、トラフザメ、メガマウス、亀、貝、デンキウナギ、チョウチンアンコウ、トビウオ、コバンザメ…


みんなそれぞれ工夫して、この厳しい芸能界で生き残ろうとしているんだ。


「頭にノコギリ付けるのはあの先輩がやってたから俺は尻尾を伸ばしてみるのはどうだろう?」

「攻撃力じゃあの先輩たちに敵わない。じゃあ俺は防御力を磨いて、俺にしかできないディフェンスをするんだ!」

「魚だからといって、空を飛んではいけないルールはないはずだ!」

「電気を流そう!」

そうして切磋琢磨しているうちに、ウニやハリセンボンのような、攻撃は最大の防御だという信念に基づいた新たな発想や、ナマコのようにぬめりで身を守る、コアなファンに刺さるセンス系の若手が育ったのだろう。


ちなみにホホジロザメは絶滅の危機に瀕している。


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