あの約束はどうなった



「さかざき君、本当にありがとね!落ち着いたら5人でご飯行きましょう!ご馳走します!」



2023年10月21日。キングオブコント2023。決勝本番直後のTBSの楽屋で、高橋さん(ゼンモンキーのマネージャー)は確かに僕にこう言った。


1回戦、2回戦、準々決勝、準決勝リハ、準決勝、決勝リハ、決勝、NHK新人大賞予選、もっと言えば昨年、一昨年。コントの音響を担当した僕への労いの気持ちが、確かに言葉となって、空気振動となって、僕の鼓膜を揺らしたはずだった。



あの約束、どうなってるのか。



建前上の、「いやいや全然そんな…!」的な返答をしつつ、キングオブコントファイナリストたちによるご馳走が、一体どんな豪華なものなのかと心を躍らせた。



もちろん見返りを求めて引き受けているわけではないし、むしろ決勝まで連れてきてくれたことをこちらが感謝するべき案件。

﨑山さんも僕と荻野くんに対して、「お前たちみたいな教室の隅におった奴らが、今こんな華やかな場所におるなんてなあ!」と言っていた。本当にそう。



別に僕でなくてはならない理由なんて無くて、単に同期だから頼みやすかっただけ。それでも頼まれるたび、信頼されてる喜びを少し感じ、それと同時に毎回日程を確認して毎回引き受け"られてしまう"自分の空っぽのスケジュールを見て呆れた。


そして迎えた決勝戦。なんとか1回戦から決勝本番終了まで、準決リハの大遅刻を除いて、大きなミスなく任務を遂行。次の仕事に向かうゼンモンキーと慌ただしく別れた。



その後、待てど暮らせどあの約束が果たされる気配がない。



高橋さんが僕の「いやいや全然そんな…!」発言を真に受けてしまったのか?

そもそも高橋さんの「落ち着いたらご飯行きましょう」発言こそが建前だったのか?

だとしたら僕と高橋さんの間に、建前の発言を建前の発言で返すという宇宙一無駄な時間が流れたというのか?

いや、まだ"落ち着いて"ないからか?そりゃそうかファイナリストだもんな。忙しいか…。



あの日4人と交わした約束はもう一つ。



「来年もよろしくお願いします。」



きっと優勝して、賞金で何倍にもして返してくれるのだろう。そう疑わずにスケジュールを空っぽにしてキングオブコントを待った。




あの約束はどうなった。



そう思ったが、昨年の準決リハ大遅刻事件で迷惑をかけた負目から、こちらからは強く切り出せない。


解散が"落ち着いた"という意味合いで解釈されるなら、ご馳走はそろそろということか?期待していいのか?集まってもらうからな。3人とも。ちゃんと。こっちは決勝当日に人知れず体験したマル秘楽屋おもしろトークを一年間温めてあるからな。披露させてもらうぞ。笑えよ。3人で。



あとはそちらサイドで勝手にスケジュールを合わせてもらってこちらに提示してもうだけでいい。


どうせこちらのスケジュールは空っぽなのだから。

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