12/24(日) 坂﨑…○

普段バイトの希望シフトは2週間前にLINEで提出することになっているのだが、年末年始は繁忙期の為、休憩室に貼られたシフト表に事前に記入するシステム。


12/15〜1/8までの日付と従業員の名前がプリントされた表に○か×を記入する。


12月24日の欄に、これ見よがしに×が並んでいる。12月15日から1月8日までの期間中、なんとなく等間隔で×を記入しながらその中に24日を紛れさせている従業員もいれば、あからさまに24日だけ×を付けている従業員も見受けられる。


「(まあ、Kさんはそうだろうな…。普段の立ち居振る舞いからして24日×っぽいもんな。大学生だし…。N君もわかる。新人で入ってきた頃から24日×っぽい顔だなと思っていたんだ…!あれ!?A君も!?ウソだ!そんな馬鹿な!?A君は○だろ!A君はパワプロなら『24日○』の青特能が付いていてもおかしくないくらいに24日○の雰囲気を漂わせているじゃないか…!)」


休憩室で、既に『24日◎』の金特能を所持している僕がシフト表を眺めながら考える。


A君の書いた×の筆圧から自信が漲っていることがわかる。ハッタリではない、24日に対する圧倒的自信がそこには感じられた。
となると僕がこの表に○を記入した時点で出勤はほぼ確定じゃないか。いや、この際出勤するしないはどうだっていい。僕だけが24日○の表が休憩室にずっと貼られるなんてあまりに露骨じゃないか。虚勢を張って×と書いてしまおうか?いや、そうした場合、その表を見た他の従業員から「ウソだ!坂﨑はパワプロなら『24日◎』の金特能ついてるだろ!」なんて思われる。



がんじがらめに陥った僕が思い付いた作戦はこうだ。



12月15日から1月8日までの欄全てにとりあえず○を記入し、「直前で予定が入る可能性があるので分かり次第連絡します。」と添える。


日付に関係なく全てに○することによって、見る側に余計な情報を与えず、希望シフトを記入したにもかかわらず、何も記入していないのと同じ状態を生み出すことができる。
これで特別感が溢れていたはずの24日は単なる一日でしかなくなる。


それと同時に、芸人という仕事柄、基本的にはいつどんな仕事が入ってもいいようにスケジュールはギリギリまで開けているスタイルだということを示すことで、「24日に予定がないことも当然ですけど何か?」感を出せる。



完璧な作戦。




「直前で予定が入る可能性があるので分かり次第連絡します。」と記入した後、改めて表を見て思った。



「(24日までになんとしても予定を入れようと必死な奴みたいになってないか…?)」



「直前で予定が入る可能性があるので分かり次第連絡します。」=「24日までにどうしても彼女を作りたいです。もう少し待ってください。」ととられかねない…!



慌てて修正テープで「直前で予定が入る可能性があるので分かり次第連絡します。」の部分消した。



これで僕はただの、繁忙期にめちゃくちゃシフトに入ろうとする献身的なアルバイトになった。



24日はM-1を観た後、出勤することになる。

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