僕のこれまでの健康なんて所詮は才能に過ぎなかったということ

何も考えずに才能だけでここまでやれてこれてしまったがために、いざ壁にぶつかった時に乗り越えることができない。努力の仕方を知らないからだ。



野菜なんて食べなくていいし、あんまり寝なくていいし、痩せなくていいし太らなくていい。だって健康なのだから。ワッハッハ。



毎年オールAの健康診断表を片手に意気揚々と過ごしていた日々の結果が招いたこのザマ。


体調が良くないのはわかる。ライブを休んだ。バイトも休んだ。時間はたくさんある。でも治し方がわからない。才能一本で健康をやってきた。一度狂った歯車は制御不能。


逆に今までなぜ体調が良かったのかわからない。生活習慣は変わっていない。1回の発熱が引き金となり、堰を切ったようにあちこち崩れた。



これは徹底的に改善しなければならない。



早寝。早起き。バランス良い食事。適度な運動。質の良い睡眠。規則正しい生活。



生活習慣を改善するのだ。



『壁にぶつかった時は、良かった時の昔の自分を取り戻そうとするのではない。これまでとは全く違う新しい自分に生まれ変わるのだ。そうすれば、良かった時の昔の自分も超えていける。』



この名言はどこかで誰かが何かしらの流れで言っていそうではあるが、今僕が適当に0→1で考えた。


その割にはなぜか説得力があったため、頭の中でイチローが言っているのを想像したら益々信憑性が高まった。どんなに薄っぺらい言葉でも、頭の中でイチローに喋らせてみると深みが出る。おすすめ。



とにかく僕は生活習慣を完全に見直して、努力で健康化を図った。



野菜はほぼ全て嫌いなのだが食べた。気分が悪くなり、次第にご飯の時間が億劫になり、食事の量が減り、痩せ、体調を崩した。


起きる時間、寝る時間を固定した。慣れていないので寝たいのに眠れない。「眠れない時、目を閉じているだけで睡眠と同じ効果があるらしい」という優しい説を信じて8時間ひたすら目を瞑り、目の下のクマが濃くなった。


適度な運動はいつもしているランニングを継続するだけで大丈夫。「君は毎日走っているなんて偉いね!」と僕の頭の中のイチローが言ってくれている。「いえいえ、イチローさんほどでは笑」僕の頭の中の僕が謙る。
十分な食事を摂れていないために貧血を悪化させ、走るたびに熱が出るようになってしまった。



やることなすこと全て裏目。体調不良を長引かせてしまった。




平日の朝にがんこちゃんを観ている時ようなテンションで2ヶ月過ごした。
「今頃クラスのみんなは3限目の算数か…」と思うテンションで、今行われているはずの事務所ライブのことを思う。


僕が休んでいる今この瞬間、何かすごく面白い出来事が起き、そのエピソードがこの先何年も何年も擦り倒され、磨きが掛かり、仕上がり始め、いつか飲み会での鉄板ネタになった時、みんなと同じように笑うことが出来るだろうか…



そもそもその飲み会に誘われるのだろうか…



ああ、今日もまた誰にも笑ってもらえることなく一日が終わっていく。自ら芸人を名乗っておきながら。



何人かが、放課後に連絡帳を届けてくれるクラスメイトみたいな雰囲気の連絡をくれた。




早寝。早起き。バランス良い食事。適度な運動。質の良い睡眠。規則正しい生活。


『健康になるための理屈は充分通っている。何事もすぐに結果は出ない。生活を変えたのだから当然多少のリスクはある。しかし長い目でみたらプラスに働く。継続するんだ。』


僕は頭の中のイチローにそう言わせる。


『嫌いな野菜を食べるのが辛いので野菜ジュースにしてもいいでしょうか…?』


僕の頭の中の僕が、僕の頭の中のイチローに問う。


僕の頭の中のイチローは、少し悩んだ後、『いいだろう。しかし、砂糖不使用のやつな。』と優しく笑った。



野菜を野菜ジュースに、ランニングをウォーキングにし、眠りにつく時間を無理に固定しなくしたことで健康化への手応えを感じた。


2月上旬。自分の体が健康化していくのを感じた。健康な体ってこんなに楽なのか。


1ヶ月半ぶりに走った。
1キロ5'30"のペースがキツくなって5キロでやめた。つい2ヶ月前、このペースで42キロ走ったのに。


錆びつくのはあっという間なんだよな。


もう2ヶ月も舞台に上がっていないな…




『よし、この調子なら3月からはまたライブに出られる。ただ無理するな。急に生活リズムを乱したらまた不健康に元通りだ。ライブに出られるありがたみを感じながら慎重に滑り出せ。あ、滑り出すって違う!そっちの意味じゃない、そっちのスベるではない!舞台ではスベるな!スベるなよ絶対!いいか?大仕事が待ってるんだろう。』



イチローが言っている。



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